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食中毒
吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

食中毒の概要

食中毒は、主に食品に含まれる有害な細菌、ウイルス、寄生虫、またはその毒素によって引き起こされます。食中毒は日常生活で誰もが遭遇する可能性があり、代表的な原因としては以下が挙げられます。

  • サルモネラ
  • ノロウイルス
  • カンピロバクター
食中毒の症状には、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などがあります。これらの症状は、摂取後数時間から数日で現れることが多く、症状の重さは摂取した食品の種類や量、個人の健康状態によって異なります。食中毒は適切な食品の取り扱いや十分な加熱調理、そして食品の保存方法を遵守することで予防できると言われています。

食中毒の原因

  • 細菌性食中毒 細菌が最も一般的な原因です。特にサルモネラエシェリキア・コリ(大腸菌)リステリアなどが知られています。例えば、サルモネラは特に生の肉や卵、未加熱の乳製品に存在しやすく、適切な調理や取り扱いがされない場合に食中毒を引き起こす可能性があります。
  • ウイルス性食中毒 ウイルスによる食中毒もあります。特にノロウイルスロタウイルス が代表的で、汚染された食品や水、または感染者との直接的な接触から感染します。ノロウイルスは特に集団発生が報告されることが多く、冬季に流行することが知られています。
  • 寄生虫による食中毒 寄生虫も食中毒の原因となることがあります。アニサキスがその一例で、生の魚介類を食べることで感染することがあります。感染すると、腹痛や吐き気を引き起こすことがあります。

食中毒の前兆や初期症状について

食中毒の前兆

食中毒の前兆は、摂取した食品や原因となる病原体によって異なりますが、一般的に以下のような症状が現れることが多いようです。

  • 軽度の胃の不快感 汚染された食品を摂取した後、数時間で胃がムカムカとする感じや、軽度の胃痛を感じることがあります。
  • 食欲不振 身体が異常を感じ取るため、食べ物への興味が減少することがあります。

初期症状

食中毒の初期症状は、感染後数時間から数日で急激に現れることが特徴です。具体的な症状には以下のものがあります。

  • 激しい腹痛と下痢 腹部に強い痛みを感じ、水のような下痢が頻繁に起こる場合があります。特に、サルモネラノロウイルスによる食中毒が原因の場合、この症状が顕著です。
  • 嘔吐 消化器官が異物(毒素)を排除しようとする反応として、嘔吐が起こります。
  • 発熱と全身の倦怠感 身体が感染に対抗するために発熱することがあります。また、疲れやすくなるなどの全身に倦怠感があることも一般的です。

これらの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。食中毒は、早期に適切な治療を受けることで症状を軽減し、回復を早めることができます。食中毒の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、消化器内科です。食中毒は細菌やウイルスによる胃腸の感染症であり、消化器内科で診断と治療が行われています。

食中毒の検査・診断

食中毒の検査

  • 便の検査 食中毒を引き起こす可能性のある細菌やウイルスを特定するために、便サンプルが最も一般的に用いられます。例えば、サルモネラやカンピロバクターなどの細菌性食中毒の場合、特有の病原体が便中に検出されることがあります。
  • 血液検査 身体の反応や感染の程度を把握するために、血液検査が行われることもあります。白血球の数が増加している場合、身体が感染と戦っている可能性が示されます。
  • 嘔吐物の分析 場合によっては、嘔吐物のサンプルからも病原体を検出することができます。これにより、特定のウイルスや細菌が原因であることが明らかになることがあります。

診断プロセス

医師は患者さんの症状と検査結果を総合して診断を行います。例えば、患者さんが下痢、嘔吐、発熱などの症状を報告した場合、これらの情報を基にしてどの病原体が原因であるかを推測します。検査結果が返ってくると、それに基づいて最終的な診断が下され、適切な治療が開始されます。医療機関を訪れる際は、最近摂取した食品や症状の始まりについての情報を正確に伝えることが、診断を助けるために非常に重要です。食中毒の診断は時に複雑であるため、的確な情報を簡潔に伝えると良いでしょう。

食中毒の治療

食中毒の治療は、基本的には自宅でのケアで十分な場合が多い傾向ですが、症状が重い場合や改善が見られない場合には、迅速に医療機関を受診することが重要です。特に高齢者、小さな子ども、基礎疾患を持つ方は、脱水やその他の合併症のリスクが高まるため、注意が必要です。

一般的な治療法

食中毒の治療は、主に症状の管理と体力の回復になります。以下の方法が一般的に推奨されます。

  • 水分補給 食中毒による下痢や嘔吐は脱水を引き起こすため、適切な水分補給が必要です。スポーツドリンクや経口補水液を利用することで、電解質のバランスを保ちながら水分を補給することができます。例えば、ナトリウムやカリウムが含まれた補水液は、身体の水分バランスを効果的に回復させます。
  • 安静にする 体力を回復させるためには、十分な休息が必要です。食中毒の影響で身体が弱っているときは、無理をせず、ゆっくりと身体を休めましょう。
  • 適切な食事 回復期には、消化の良い食事を心がけることが重要です。バナナ、リンゴなど、胃に優しい食べ物を少しずつ摂取することが推奨されます。

特定の症状に対する治療

  • 抗生物質の使用 特定の細菌性食中毒(例えば、重症のサルモネラやカンピロバクターによるもの)の場合、医師は症状を緩和し、感染の拡大を防ぐために抗生物質を処方することがあります。ただし一般的には抗生物質は推奨されません、理由として症状の回復を遅くしたり、細菌の抗生物質に対する耐性化といった問題もあるためです。血液中に菌が入り込んだり、腸以外に菌が移行してしまっている場合には抗生物質を使用します。
  • 解熱剤の使用 カロナールなどの熱を冷ます薬が出る場合があります。対症療法として使用されることがあります。
  • 抗吐剤の使用 強い嘔吐が続く場合、嘔吐を抑制するために抗吐剤が処方されることがあります。これにより、脱水のリスクを減らし、患者さんの生活の質を向上させることができます。

食中毒になりやすい人・予防の方法

食中毒になりやすい人の特徴

  • 免疫力の低い人 高齢者、幼児、妊婦、または免疫系の疾患を持つ人々は、食中毒になりやすいとされています。
  • 慢性疾患を持つ人 糖尿病や心血管疾患などの慢性的な健康問題を抱えている人々も、感染しやすいとされています。

食中毒の予防方法

食中毒を予防する最も効果的な方法は、食品の取り扱いと調理に関する基本的な衛生習慣を守ることです。以下の5つの予防方法をお伝えします。

  • 手洗い 食事の準備前後、食事を摂る前、トイレの使用後には必ず手を洗うことが重要です。せっけんと水を使い、少なくとも30秒間は手をこすり洗いしましょう。
  • 生と調理済みの食品の分離 生の肉や魚、野菜を調理済みの食品や食べる準備ができた食品と分けて扱うことで、交差汚染を防ぎます。異なる食品を切る際には、それぞれに異なるまな板とナイフを使用しましょう。
  • 十分な加熱 食品は中心部まで適切に加熱することが必要です。特に肉や卵は、十分に火を通すことで、食中毒の原因となる細菌を殺すことができます。肉の内部温度が安全な温度に達しているかを確認するために、食品温度計の使用を検討してください。
  • 食品の正しい保存 食品を適切な温度で保存することが重要です。冷蔵庫は5℃以下、冷凍庫は-18℃以下に設定し、食品が適切な状態で保管されるようにしてください。
  • 賞味期限と消費期限の確認 購入した食品の賞味期限や消費期限を常に確認し、期限が切れた食品は摂取を避けるようにしましょう。

関連する病気

  • 細菌性食中毒
  • サルモネラ感染症
  • 大腸菌感染症
  • リステリア感染症
  • カンピロバクター感染症
  • アニサキス感染症
  • ジアルジア症
  • アフラトキシン中毒
  • ボツリヌス中毒

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