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月経不順
中里 泉

監修医師
中里 泉(医師)

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2008年宮崎大学卒業後、東京都立大久保病院にて初期研修。東京大学医学部付属病院産婦人科に入局。東京大学医学部付属病院、東京北医療センター、JR東京総合病院などの勤務を経て、現在は生殖医療クリニックに勤務。日本産科婦人科学会専門医。

月経不順の概要

正常な月経周期は「25~38日の間で、その変動が6日以内」と定義されており、そこから外れると月経不順と診断されます。 持続期間は3~7日間(平均5日間)、正常な量は20-140mlです。一番多い日(1,2日目)に2~3時間に1回ナプキンを変える程度が目安です。 一般的な産婦人科のサイトや刊行物、基礎体温表などでは、わかりやすくするために正常な生理周期を28日周期として表記することが多いですが、上記の期間内であれば、数日程度のズレは正常と考えてよいでしょう。 月経不順が起きている場合、排卵していなかったり、子宮や卵巣に病気が隠れていることがあります。不順が続くようなら産婦人科を受診しましょう。

月経不順の原因として、最も多いのはホルモンバランスの乱れです。ホルモンバランスは、体質ももちろんですが、生活習慣によっても大きく変化します。規則正しい生活、適度な運動、適切な体重コントロールを意識しましょう。 また、月経不順は、放置すると子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクとなります。不妊の原因ともなるため、月経不順が続いている人は病院に相談しましょう。 治療法は、まずは生活習慣や体重のコントロールを行いつつ、妊娠を考えるかどうかで治療は大きく変わります。妊娠希望がない時期であればホルモン剤を使用して周期を整えます。妊娠したいという希望がある場合は、排卵誘発剤を使用するなど、不妊治療を開始します。

月経不順の原因

1.無排卵周期症

通常の月経周期は、月経期から開始し、卵胞を育てる「卵胞期」を経て、育った卵胞が排卵し、形成された黄体からホルモンが分泌される「黄体期」となり、2週間程度で黄体が消失して月経がはじまるというサイクルです。 この排卵がうまく起きないと、月経周期が長くなりすぎたり、破綻出血を起こして不正出血が頻繁に起きたりします。初潮からしばらくの間や、閉経前の数年は起こりやすいですが、ほかにホルモンバランスの異常で起きることがあります。

2.機能性子宮出血

器質的疾患(子宮筋腫やポリープ、子宮頸がん、子宮体がんなど)がなく出血が起きることを機能性子宮出血と呼びます。ホルモンバランスの乱れが主な原因ですが、稀に血液凝固異常が隠れていることがあります。排卵前後にはホルモンが大きく増減するため、不正出血をきたすことがしばしばあり、排卵期出血とも呼ばれ、これも機能性出血に含まれます。下着に付着する程度のごくわずかな量から、普通の生理と変わらない位出血することもあり、「1か月に生理が2回来た」と思われることもあります。

上記のように、主にホルモンバランスの乱れが原因となります。 ホルモンを乱す原因としては、多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、甲状腺疾患、一部の薬の副作用、過剰な運動やダイエット、太りすぎや痩せすぎなどがあります。

月経不順の前兆や初期症状について

どんなに健康な方でも一時的に生理周期が崩れることは珍しくありません。ただし、3ヶ月程度周期が異常である場合は産婦人科を受診しましょう。 頻発月経 24日以内 希発月経 39日以上3か月未満 続発性無月経 3か月以上の停止 これらに加え、生理が1週間以上ダラダラ続いたり、量が明らかに少ない(1番多い日でも、ナプキンを取り換える必要がない程度)は正常とは言えません。 上記の場合は、排卵が起きていなかったり、子宮筋腫やポリープなどの良性腫瘍や、がんなどの子宮の病気が隠れていることがあります。

月経不順の検査・診断

基礎体温

基礎体温とは、運動や食事の影響を受けていない、安静な状態で計測した体温のことです。毎朝、ベッドから離れる前に、寝たまま口の中で計ります。正常な基礎体温では、二相性と呼ばれる形となり、卵胞が育つ時期の「低温期」と排卵後の「高温期」に分かれ、その差が0.3℃以上の二相に分かれていると排卵している可能性が高いと言えます。体温の変化が大きく見られず、基礎体温がガタガタしている一相性や、高温期が9日以内の場合はきちんと排卵が起きていない可能性があります。

経腟超音波検査

経腟超音波検査では、子宮や卵巣に異常がないかを調べます。子宮内膜に厚みがあるか、卵巣内の卵胞が適正に見られるか、その他子宮筋腫やポリープ、卵巣嚢腫などの器質的疾患がないかを確認します。

ホルモン検査

排卵に関わるホルモンが正常に分泌されているかを調べます。卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール(E2)、プロラクチン、甲状腺、テストステロンなどです。一部のホルモンは月経周期によって大きく変動するため、測定する時期によって正常値が変わり、評価が難しくなることがあります。医師の指示に従って受けるようにしましょう。

月経不順の治療

日常生活を改善する

日常生活が乱れている方の場合、まずはそれを見直すことで、薬を使用しなくても月経周期が安定することがあります。規則正しい生活や禁煙、適正な食事や運動、良質な睡眠、適正体重を保つことなどを心がけましょう。

妊娠希望がない場合は、ホルモン剤を使用する

現時点で妊娠希望がない場合は、黄体ホルモン製剤単独、または卵胞ホルモン製剤と黄体ホルモン製剤併用の内服薬で治療します。長期間排卵がない状態が続くと、子宮内膜増殖症や子宮体がんの原因となる可能性があります。また、骨粗しょう症のリスクも上昇するため、無月経の程度に応じて適切な薬を選択します。

妊娠希望がある場合は、排卵誘発を始めとする不妊治療を行う

月経不順がある方の場合、排卵が起きていない、あるいは排卵していても毎月ではないことがあり、自然な妊娠の可能性が低いことがあります。妊娠希望の場合は早めに専門病院に受診し、排卵誘発剤を使用して積極的な排卵を促します

月経不順になりやすい人・予防の方法

ストレスが多い人

日常生活でストレスを全くなくすというのは難しいですが、強すぎるストレスにさらされると排卵が止まってしまうことがあります。大事な試験があったり、職場が変わるなど明らかな原因がなくなると元に戻る方も多いですが、なかなか周期が戻らない方は受診しましょう。ストレスを0にすることは難しいですが、趣味などうまくストレスと付き合える方法を見つけましょう。

生活習慣が乱れている人

睡眠時間が極端に短かったり、食事の栄養が偏りすぎるとホルモンバランスが乱れ、月経周期が乱れることがあります。ダイエットを意識しすぎて「〇〇は絶対に食べない」「〇〇しか食べない」という食生活は好ましくありません。ビタミンやタンパク質、適度な脂質を意識して、バランスよく食事をとりましょう。睡眠不足も月経不順の原因となるため、良質な睡眠をとるよう心がけましょう。

やせすぎ、太りすぎ

痩せすぎや太りすぎは無排卵となり月経周期を乱す原因となります。BMI(body mass index:体重(kg)÷身長(m)の2乗)18.5以上25未満が適正体重で、22が理想的という報告があります。ただし、急激な体重変化は負担がかかりますので、徐々に目標体重に近づけるようにしましょう。

過度な運動は控える

過度な無酸素運動や著しい体脂肪率の低下は無排卵の原因となり、月経周期を乱すことがあります。一方で、健康のためには軽く息が上がる程度の適度な有酸素運動は有効とされていますので、運動習慣がない方は週に2-3日程度のウォーキングやヨガなどを始めてみましょう。

関連する病気

  • 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)
  • 甲状腺機能異常

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