監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
早産の概要
早産とは、妊娠22週0日から37週0日未満で出産することを指します。世界保健機関(WHO)によると、早産は全出産の約11%を占め、年間約1500万人の早産児が生まれています。早産は、新生児死亡と罹患の主要な原因であり、長期的な健康問題のリスクを高める可能性があります。
早産は、妊娠週数に応じて以下のように分類されます。
- 極早産:28週未満
- 超早産:28週以上32週未満
- 中等度早産:32週以上34週未満
- 後期早産:34週以上37週未満
早産児は、肺や脳などの臓器が十分に発達していないため、様々な合併症のリスクがあります。これには、呼吸窮迫症候群、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症などが含まれます。また、早産児は長期的に発達遅延や学習障害のリスクが高くなる可能性があります。
早産の原因
早産の原因は多岐にわたり、単一の要因だけでなく、複数の要因が複雑に関連しておりまだ原因のわかっていない事もたくさんあります。主な原因としては、子宮内感染、多胎妊娠、子宮頸管無力症、胎盤異常、母体の全身疾患などが挙げられます。
子宮内感染は、早産の重要な原因の一つです。特に、細菌性膣症や尿路感染症が関連していることが知られています。多胎妊娠では、子宮の過度な伸展や胎盤機能不全のリスクが高まり、早産のリスクが単胎妊娠の5-10倍になるとされています。子宮頸管無力症は、子宮頸部が妊娠中期から後期にかけて徐々に開大していく状態で、早産の原因となることがあります。また、前置胎盤や胎盤早期剥離などの胎盤異常も早産のリスクを高めます。母体の全身疾患、特に妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は、早産のリスクを増加させます。さらに、ストレスや過度の身体活動、喫煙、アルコール摂取、薬物使用なども早産のリスク因子となります。
早産の前兆や初期症状について
早産の前兆や初期症状を認識することは、適切な医療介入を受けるために重要です。以下のような症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
- 規則的な子宮収縮:10分以内に1回以上の頻度で起こる
- 腰痛や下腹部痛:周期的に繰り返される痛み
- 腟からの出血や粘液の増加
- 破水:腟からの水様の液体の流出
- 腹部の緊張や圧迫感
これらの症状は必ずしも早産を意味するわけではありませんが、早期に医療機関を受診することで、適切な評価と必要に応じた治療を受けることができます。
早産の検査・診断
早産のリスクがある場合や前兆症状がある場合、医療機関では以下のような検査や診断が行われます。
問診と身体診察
症状の詳細や既往歴、妊娠経過などを確認します。
内診
子宮頸管の開大や展退の程度を評価します。
経腟超音波検査
子宮頸管長を測定し、早産リスクを評価します。子宮頸管長が25mm未満の場合、早産リスクが高いとされています。
胎児心拍数モニタリング
子宮収縮の頻度や強さ、胎児の状態を評価します。
腟分泌物検査
細菌性膣症や他の感染症の有無を確認します。
フィブロネクチン検査
子宮頸管分泌物中のフェタルフィブロネクチンを測定し、早産リスクを評価します。
血液検査
炎症マーカーや母体の全身状態を評価します。
これらの検査結果を総合的に評価し、早産のリスクや進行状況を診断します。
早産の治療
早産の治療は、妊娠週数や原因、母体と胎児の状態によって異なります。主な治療方法には以下のようなものがあります。
安静
軽度の症状の場合、安静にすることで症状が改善することがあります。
子宮収縮抑制薬
リトドリン、硫酸マグネシウムやニフェジピンなどの薬剤を用いて子宮収縮を抑制します。
抗生物質投与
感染が原因の場合や予防的に使用されます。
ステロイド投与
妊娠34週未満の場合、胎児の肺成熟を促進するためにベタメタゾンなどが投与されます。
子宮頸管縫縮術
子宮頸管無力症が疑われる場合に行われます。
硫酸マグネシウム投与
胎児の神経保護のために投与されることがあります。
分娩管理
早産が避けられない場合、適切な分娩方法の選択と新生児集中治療の準備を行います。
治療の目標は、可能な限り妊娠期間を延長し、胎児の成熟を待つことですが、母体や胎児の状態によっては早期の分娩が必要となる場合もあります。
早産になりやすい人・予防の方法
早産のリスクが高い人
早産のリスクが高い人には、過去に早産の経験がある人、多胎妊娠の人、子宮や子宮頸部に異常や手術歴がある人、慢性疾患を持つ人などが含まれます。また、喫煙者、アルコールや薬物を使用する人、極度のストレスにさらされている人も早産のリスクが高くなります。
予防の方法
早産の予防には、健康的なライフスタイルの維持が重要です。これには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理が含まれます。
また、妊娠前や妊娠初期からの葉酸摂取、定期的な妊婦健診の受診、感染症の予防と早期治療も重要です。多胎妊娠や子宮頸管無力症など、高リスクの妊婦に対しては、より頻繁な検診や早期からの介入が行われることがあります。例えば、子宮頸管長が短い場合、プロゲステロン製剤の腟内投与が早産予防に効果的であることが示されています。
早産の予防には、個々の妊婦のリスク因子を評価し、それに応じた適切な管理を行うことが重要です。医療機関と密接に連携し、異常の早期発見と適切な対応を心がけることで、早産のリスクを低減することができます。
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