

監修医師:
大坂 貴史(医師)
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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
乳腺症の概要
乳腺症は、乳房の痛みやしこりを伴う良性の病変であり、特に30代から50代の女性に多くみられる疾患です。乳がんと異なり、悪性ではなく、命に関わる病気ではありませんが、乳房の違和感や痛みが強くなることがあり、不安を感じる人も少なくありません。 この疾患の特徴は、月経周期に関連して症状が変化することです。特に月経前になると、乳房が張ったり、痛みを感じたりすることが多く、しこりの大きさや硬さが変わることもあります。これは、ホルモンの影響を受けるためです。乳腺症は女性ホルモンのバランスが変動しやすい年齢層に多くみられるため、閉経後には自然に症状が軽減することがほとんどです。 症状が乳がんと似ていることから、不安を抱える人も多いですが、乳腺症はあくまで良性の病変であり、適切なケアを行えば大きな問題にはなりません。ただし、自己判断せずに医療機関を受診し、正しい診断を受けることが大切です。乳腺症の原因
乳腺症の主な原因は、女性ホルモンのバランスの変化によるものと考えられています。特に、エストロゲンとプロゲステロンという2種類のホルモンの影響が大きく、これらのホルモンが周期的に変動することで乳腺の組織が刺激され、乳腺症の症状が引き起こされます。 エストロゲンは乳腺を発達させる作用があり、プロゲステロンは乳腺の細胞を増殖させる働きを持っています。月経前にはこれらのホルモンが活発に分泌されるため、乳腺が腫れ、痛みを感じることがあります。このホルモンの影響が長期間続くことで、乳腺の組織が硬くなったり、しこりができたりするのが乳腺症の特徴です。 また、ストレスや生活習慣の影響も無視できません。過度なストレスや睡眠不足、食生活の乱れはホルモンバランスに影響を与え、乳腺症の症状を悪化させることがあります。特に、カフェインやアルコールの摂取が多い人は、乳腺の腫れや痛みが強くなることがあるため、日常的な生活習慣の見直しも重要です。乳腺症の前兆や初期症状について
乳腺症の最も一般的な症状は、乳房の痛みとしこりです。痛みは鈍いものから鋭いものまでさまざまで、月経周期に合わせて変化することが特徴です。特に月経前になると症状が悪化し、月経が始まると自然に軽減することが多くみられます。 しこりは乳房の中に複数できることがあり、指で触るとゴツゴツした感触があることもあります。ただし、乳がんのしこりと違って、乳腺症のしこりは柔らかく、境界がはっきりしていることが多いのが特徴です。また、しこりの大きさが月経に伴って変動することも、乳腺症の大きな特徴の一つです。 乳頭からの分泌物がみられることもあります。通常、分泌物は透明や白っぽいものが多いですが、まれに茶色や黄色の分泌物が出ることもあります。ただし、血が混じる場合は別の疾患の可能性があるため、医療機関での診察が必要です。 症状が左右両方の乳房にみられることが多いのも乳腺症の特徴です。乳がんの場合は片側の乳房にのみ異常が現れることが多いため、左右両方に違和感がある場合は、乳腺症の可能性が高いと考えられます。乳腺症の検査・診断
乳腺症の診断は、まず問診と視診・触診によって行われます。医師は患者の月経周期や痛みの程度、しこりの変化などを詳しく聞き、乳房の状態を確認します。 次に、画像検査が行われます。マンモグラフィー(乳房X線撮影)では、乳腺の構造を確認し、がんなどの異常がないかを調べます。乳腺症の場合、乳腺が濃く映ることがあり、がんとの区別が難しいこともあります。そのため、より詳細な検査として超音波検査(エコー)が行われることが一般的です。超音波検査では、しこりの形や大きさ、内部の構造を詳しく観察できるため、乳腺症かどうかをより正確に判断することができます。 さらに、乳頭分泌物がみられる場合は、分泌液の細胞検査を行い、異常な細胞が含まれていないかを確認します。必要に応じて、細胞診や組織生検を行い、悪性の病変がないかを調べることもあります。乳腺症の治療
乳腺症は良性の病気であるため、基本的には特別な治療は必要ありません。しかし、痛みが強い場合やしこりが気になる場合は、症状を和らげるための治療が行われることがあります。 痛みが強い場合には、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)が処方されることがあります。また、ホルモンバランスの乱れが原因であるため、低用量ピルやホルモン療法が行われることもあります。これによってホルモンの変動を抑え、症状を軽減することが可能です。 生活習慣の見直しも重要です。カフェインやアルコールの摂取を控え、バランスの良い食生活を心がけることで、症状の改善が期待できます。適度な運動やストレス管理も、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。乳腺症になりやすい人・予防の方法
乳腺症になりやすいのは、30代から50代の女性で、特に月経周期が不安定な人やホルモンバランスが乱れがちな人です。また、ストレスが多い人や、カフェインやアルコールを多く摂取する人もリスクが高いとされています。 予防のためには、規則正しい生活を送り、ホルモンバランスを整えることが大切です。十分な睡眠をとり、適度な運動をすることで、自律神経が安定し、ホルモンの変動が少なくなります。また、ストレスをため込まないようにリラックスする時間を持つことも重要です。関連する病気
- 線維腺腫
- 嚢胞性乳腺疾患
- 乳がん




