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前駆陣痛
阿部 一也

監修医師
阿部 一也(医師)

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医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

前駆陣痛の概要

前駆陣痛とは、妊娠後期におこる出産につながらない不規則な子宮収縮をいいます。症状にはお腹の張りや陣痛のようなお腹の痛みがあります。人によっては痛みを伴わない場合もあります。前駆陣痛が始まる時期には個人差がありますが、夜間になる度に感じることが多いです。

前駆陣痛は、痛みの持続時間や間隔に規則性がなく、痛みが弱まったり強まったりを繰り返し次第に痛みが遠のきます。

前駆陣痛は出産に向け準備が始まったサインであり、分娩に伴って起こる正常な経過です。痛みがどんどん強くなる場合は陣痛の可能性があるため、痛みの間隔を測るようにしましょう。

出産が近づくにつれお腹が張ることで、赤ちゃんの出口である子宮口が開き、赤ちゃんが通ってくる子宮頸管(しきゅうけいかん)もやわらかくなります。前駆陣痛は出産に向けた体の準備の一つです。そのため前駆陣痛があっても、陣痛の間隔が規則的になるまでは自宅で待機することがほとんどです。

出産につながる陣痛は、10分間隔で規則的に痛みがあることが一つの目安です。時間が経つにつれて陣痛の間隔が短くなり痛みは強くなります。また胎児が降りてくることで、痛みの場所は腰からお尻に近い場所に変化していきます。

前駆陣痛の痛みや強さ、頻度、持続時間には個人差があり、前駆陣痛なのか陣痛なのかを見分けることは難しいのが実際です。判断に迷う場合は分娩予定の病院に連絡し、受診が必要かどうか相談してみましょう。

前駆陣痛

前駆陣痛の原因

前駆陣痛は子宮の筋肉が収縮することが原因でおこります。子宮収縮につながる明らかな原因は不明ですが、日中動きすぎた場合などに起きやすいといわれています。

前駆陣痛による子宮の収縮は、赤ちゃんの出口である子宮口を広げたり、赤ちゃんの通り道である子宮頸管(しきゅうけいかん)をやわらかくしたりするなど、赤ちゃんがお母さんの骨盤内に下がりやすいように助けたりします。前駆陣痛は妊娠後期に入っておこる出産に向けた体の準備の一つであると捉えてよいでしょう。

前駆陣痛の前兆や初期症状について

前駆陣痛では、不規則なお腹の張りや痛みが起こります。痛みの間隔や強さに波があり、徐々に痛みが引いていくのが特徴です。お腹の痛みの感じ方は人それぞれで、重い生理痛のような痛み、下痢のようなお腹の痛みを感じるなど個人差があります。
なかには痛みがなく、前駆陣痛に気づかないこともあります。お腹の張りや痛みがある最中は、可能であれば体を横にし落ち着いて様子をみましょう。安静にすると痛みが弱まる、または消える場合は前駆陣痛だと考えられます。

前駆陣痛か陣痛かどうかを見極めるのは難しいため、不安であれば出産予定の産院に連絡しましょう。出産が近づいた兆候としては前駆陣痛のほかに、「おしるし」とよばれる少量の血が混じったおりものがみられることもあります。おしるしのほかにも、おりもの増加、恥骨の痛みや頻尿、子宮口の開大や子宮底の下降などの前兆があげられます。これらを陣痛がくる1つの目安にするとよいでしょう。本格的に陣痛がくるまでは、普段通りの生活を送って問題ありません。

妊娠後期に気をつけなければいけないことの一つに、「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)」があります。通常は出産後に子宮から胎盤がはがれますが、常位胎盤早期剥離では赤ちゃんがお腹にいるにもかかわらず胎盤がはがれてしまいます。
前駆陣痛は次第に痛みが遠のきますが、お腹がずっと痛くて板のようにカチカチになっている、出血している場合には注意が必要です。突然発症し急激に進行し、母子ともに命の危険に関わります。持続するお腹の痛みや出血、お腹が板のように硬いという症状がみられたら、すぐに受診しましょう。

前駆陣痛の検査・診断

前駆陣痛の検査は特にありません。お腹の張りが10分を切る場合でも、痛みが遠のけば前駆陣痛といえます。陣痛と前駆陣痛の区別は難しく、お産につながれば陣痛、つながらなければ前駆陣痛と結果をみなければわかりません。前駆陣痛の場合は、子宮の出口は開き始めていないことが多く、開いていても1〜2cmほどです。

10分間隔のお腹の張りがあり、痛みがどんどん強くなる場合は陣痛の可能性があります。前駆陣痛なのか陣痛なのか判断できない場合は、出産予定の病院に連絡してみましょう。お産につながる陣痛であると判断され入院した後は、胎児心拍モニタリングを行い、規則的な陣痛がきているか確認します。

前駆陣痛の治療

前駆陣痛は出産の経過の1つであるため治療は特に必要ありませんが、前駆陣痛なのか陣痛なのか見分けることが重要です。いつ陣痛がきてもいいように病院受診のタイミングを把握しておきましょう。

分娩が近づいたサイン

おしるし、おりものの増加、子宮口の開き、恥骨の痛み、おしっこが近い、子宮底が下がるなどの症状が見られたら、もうすぐ分娩が近づいているととらえてよいでしょう。

受診のタイミング

出産につながる陣痛は、規則的で10分以内の間隔または1時間に6回以上であるといわれています。初産婦は10分間隔の陣痛、経産婦は15分間隔の陣痛になったら産院に連絡するタイミングです。受診の目安は産院によって異なる場合があるので、主治医の指示を優先してください。
また陣痛は個人差があるので受診するか迷う場合は、自分で判断せずに産院に相談することをおすすめします。

前駆陣痛になりやすい人・予防の方法

前駆陣痛は妊娠後期になると誰でもみられます。胎児が生まれてくる準備をしている証拠であり、予防する必要はなく普段通りの生活を送っても問題ありません。
ただし切迫早産などの診断がある場合は、安静が必要なため主治医の指示に従いましょう。妊娠37週以降であれば陣痛につながるように、下記を意識して過ごすことをおすすめします。

陣痛がくるまでの過ごし方

①適度に運動する
前駆陣痛があっても、特別安静にする必要はありません。出産にむけた体力づくりのために、無理のない範囲でストレッチやウォーキングなどをおこないましょう。外出時には必ず母子手帳を持参し、すぐに病院にいけるように遠出は避けましょう。

②リラックスして過ごす
緊張や不安は子宮の出口を硬くし、分娩を長引かせることがあります。リラックスを意識し、好きなことをして過ごしましょう。

③休めるときに睡眠をとる
睡眠不足で体力がなくなると、陣痛が弱くなりお産が長引くことがあります。休めるときに寝て、体力や気力を温存しておきましょう。

④体を冷やさない
足首まである靴下を履いたり温かい湯船につかったりして、温かくして過ごしましょう。

⑤入院の最終確認をする
いつでも入院できるように、入院バッグの最終準備や入院時の交通手段の再確認をおこないましょう。

⑥産後の育児支援の準備をする
産後の生活を見据えてパートナーや家族と話し合い、新生児の世話や家事の分担などの計画を立てましょう。パートナーや家族の協力を得ることが難しい場合は、住んでいる市町村の産後ケアを調べてすぐに利用できるように手配しておくことをおすすめします。


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