

監修医師:
西野 枝里菜(医師)
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医
生理痛の概要
生理痛、または月経痛は、女性が経験することのある症状です。
生理の直前、または生理中に下腹部や腰に痛みを感じることが特徴です。痛みの原因としては、子宮内膜が剥がれる際にプロスタグランジンというホルモンが分泌され、子宮の筋肉を収縮させることが挙げられます。この収縮が血流を制限し、痛みを引き起こします。また、子宮の形態異常や子宮内膜症、子宮筋腫などの病状が痛みを悪化させることもあります。
生理痛は主に2つのタイプに分類されます。第一に、原発性月経困難症は、病気が原因ではなく、若い女性や思春期の女性に多く見られる生理痛です。第二に、続発性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因で発生する生理痛です。これらの病気がある場合、痛みは年齢とともに悪化する傾向があります。
治療方法としては、鎮痛剤が用いられます。プロスタグランジンの生成を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効です。また、低用量ピルが処方されることもあります。低用量ピルの使用によって排卵が抑制され、子宮内膜が厚くならなくなるため経血量が減り、痛みの改善が期待できます。これらの薬物療法に加え、温熱療法や適度な運動も痛みの軽減に役立ちます。なかでも温熱療法は血流の改善や筋肉の緊張の緩和に寄与します。
重度の生理痛やほかの症状が伴う場合は、専門医の診察を受けましょう。生理痛は女性にとって避けられない問題ですが、適切な対処法を知ることで痛みの軽減につながります。
生理痛の原因
生理痛の原因は、主にプロスタグランジンと呼ばれる物質の働きに関連しています。月経周期のなかで、子宮内膜が剥がれ落ちる際にプロスタグランジンが分泌され、これが子宮を収縮させることで生理痛が引き起こされます。この収縮は血流を一時的に減少させ、子宮内膜組織が酸欠状態になるため、痛みが生じます。
生理痛は個々の体質やホルモンバランスにより異なりますが、特に若い女性や初経後数年間はプロスタグランジンの分泌量が多いため、痛みが強く出る傾向があります。また、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が原因で生理痛が悪化することもあります。これらの疾患では、子宮内膜が子宮以外の場所に存在したり、異常に増殖したりすることで、強い痛みを引き起こす場合があります。
また、ストレスや生活習慣の乱れも生理痛に影響を与える要因です。例えば、睡眠不足や不規則な食生活はホルモンバランスを崩し、生理痛を悪化させる可能性があります。適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけることが生理痛の軽減に役立ちます。
生理痛が日常生活に支障をきたす程ひどい場合や、痛みが急激に強くなった場合は、医師の診察が推奨されます。子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因となっている可能性もあるため、早期発見と適切な治療が重要です。
生理痛
生理痛の前兆や初期症状は、個々の女性によって異なりますが、月経前症候群(PMS)の一部として現れる傾向があります。PMSとは、月経の数日前から始まり、月経開始後数日で収まる一連の症状を指します。代表的な症状には、腹部の張りや痛み、腰痛、頭痛、乳房の痛みや腫れ、情緒不安定、疲労感、集中力の低下、イライラ、不安感などがあります。
生理前は体温が上昇し、眠気が増す場合もあります。また、食欲が変化し、特別な食べ物を強く欲しがることも見受けられます。これらの症状はホルモンバランスの変動によって引き起こされるもので、特にエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が影響します。
PMSや生理痛の管理には、ライフスタイルの改善や薬物療法が有効とされています。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠は、症状の軽減が期待できます。また、市販薬や処方薬、ホルモン療法なども、痛みや不快感を和らげる可能性があります。
生理痛が日常生活に支障をきたす場合や、症状が重篤な場合は、婦人科や産婦人科を受診しましょう。医師と相談しながら自身に合った対処法を見つけることで、月経周期の管理や症状の緩和に繋がります。
生理痛の検査・診断
生理痛にはさまざまな原因が考えられ、そのなかには子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が含まれるため、適切な検査と診断が必要です。
まず、医師によって患者さんの症状や病歴を詳しく聞き取る問診が行われます。この段階では痛みの強さや頻度、痛みが発生するタイミングなどの把握が目的となります。
次に、内診が行われます。この診察は、医師が膣や子宮の状態を直接把握するための重要な検査です。内診により、異常な腫れやしこりの有無を確認します。
場合によっては超音波検査も行われます。超音波検査では、子宮や卵巣の状態を視覚的に確認できるため、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの異常を見つける助けになります。
さらに、血液検査が行われることもあります。血液検査では、炎症の有無やホルモンバランスを確認し、内分泌の異常を検出できるとされています。
ほかにも、必要に応じてMRIやCTスキャンなどの画像診断が追加される場合があります。
生理痛の治療
生理痛の治療方法としては、まず生活習慣の改善が挙げられます。適度な運動、バランスの取れた食事、ストレス管理などが症状の軽減に役立ちます。痛みが続く際は市販の鎮痛薬が用いられる傾向がありますが、症状が重い場合は医師の診断を受けることが重要です。
産婦人科やレディースクリニックでは、ホルモン療法や鎮痛剤の処方など、個々の症状に合わせた治療法が提案されます。なかでも低用量ピルの服用は排卵が抑制され、子宮内膜が厚くならなくなるため経血量が減って痛みが改善する効果が期待できます。
また、月経困難症には二次性と呼ばれる、ほかの病気が原因となっているケースもあります。子宮内膜症や子宮筋腫などが該当し、これらの病気が疑われる場合には、超音波検査やMRIなどの詳細な検査が必要です。適切な治療が行われると、症状の緩和だけでなく、将来的な健康リスクの軽減にもつながります。
月経困難症の治療は、患者さん一人ひとりに合った方法を見つけることが成功の鍵です。医師とのコミュニケーションを密に行い、自身に合った治療法を実施しましょう。
生理痛を感じやすい人・予防の方法
生理痛の主な原因の一つは、プロスタグランジンという痛み物質の分泌です。この物質は子宮を収縮させ痛みを引き起こします。10-20代前半の女性に多い原因です。
また、若い女性や出産経験なく子宮口が狭い状態の女性も生理痛を起こしやすいとされています。これは生理中の経血がうまく排出されないことが原因です。
さらに、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因のこともあるため、注意が必要です。
生理痛の感じ方には個人差があり、痛みを感じやすい方とそうでない方がいます。この差は、痛みに対する感受性の違いや、体質、ホルモンバランス、ストレスの有無などが関係しているとされています。例えば、ストレスが多いとホルモンバランスが崩れ、生理痛が悪化する場合があります。
生理痛を予防するためには、いくつかの方法があります。まず、規則正しい生活習慣を保つことが重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠は、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。また、ストレッチや軽い運動を日常に取り入れると、血行がよくなり、痛みの緩和につながります。
ツボ押しやセルフケアも有効とされています。足の三陰交というツボを押すことで、血流がよくなり、生理痛が軽減される場合があります。ほかにも温かい飲み物を飲む、腹部を温めるなどの行為は、痛みを緩和させる効果が期待できます。
症状が重い生理痛は専門的なアドバイスを受けるため、医師に相談しましょう。生理痛に悩む女性は少なくないため、適切な知識やケア方法を知ることが重要です。
参考文献




