

監修医師:
柳 靖雄(医師)
目次 -INDEX-
新生血管黄斑症の概要
新生血管黄斑症は、目の網膜の中心部にある「黄斑(おうはん)」という部分に、異常な血管が発生する眼の病気です。放置すると重度の視力障害につながる可能性もあるといわれています。
新生血管黄斑症は強度の近視などが要因となり発症するといわれていますが、現在のところ明確な原因は解明されていません。
主な症状は視力低下や視界のゆがみなどで、進行すると中心部分の視野が失われ、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
現在は抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法と呼ばれる治療法をはじめ、さまざまな治療の選択肢があり、早期発見や早期治療によって視力低下を防いだり、症状の進行を遅らせたりすることができます。
定期的に眼科検診を受けることや、視力や視界に異変を感じたらすぐに眼科を受診することが重要です。
新生血管黄斑症の原因
新生血管黄斑症は、網膜の中心部である黄斑に異常な血管が発生することで起こります。この異常な血管発生には加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)や強度近視などが関連しています。
なかでも関連が深いのは「加齢黄斑変性」です。加齢黄斑変性は加齢とともに黄斑部の組織が劣化し、異常な血管が発生しやすくなる特徴があります。
加齢黄斑変性は50歳以上の人に多くみられる病気です。加齢にともない目の黄斑部が障害され、網膜の細胞へ十分な栄養や酸素が行き届かなくなることで異常な血管が形成されます。
「強度近視」も原因の一つです。強度近視により眼球が引き伸ばされ、異常な血管が形成されることで発症します。
新生血管黄斑症で発生する異常な血管は壁がもろいため、血液や液体が網膜に漏れ出し、視力低下や視界のゆがみといった症状につながります。
新生血管黄斑症の前兆や初期症状について
新生血管黄斑症の一般的な症状は、視力低下や視界のゆがみです。まっすぐな線が波打って見えたり、ドアや窓枠などの直線が歪んで見えたりすることがあります。
他にも、視野の中心部分が見えないことも、よくみられる症状の一つです。症状の進行程度によっては、文字や物の認識が困難になることもあります。
目の中で形成された異常な血管が出血すると、視力低下が急激に進むケースもあります。
新生血管黄斑症の検査・診断
新生血管黄斑症は、視力検査や眼底検査などによって診断します。視力検査では、視力低下や視界のゆがみの程度を調べます。
眼底検査では散瞳薬で瞳孔を開き、眼底を直接観察して黄斑部の異常血管や出血の有無を確認します。
より詳しく調べるため、光干渉断層血管撮影(OCTA)という検査をおこなうことがあります。これは網膜の断層画像を撮影することで、高い精度で血管内の血流を調べられる検査です。
造影剤を用いないため、身体的な負担が少なくおこなえる、有用な検査方法として普及しています。
新生血管黄斑症の治療
新生血管黄斑症の一般的な治療法は「抗VEGF療法」です。新生血管の発生と成長を促進するVEGF(血管内皮増殖因子)という物質の働きを抑制する薬剤を、目の中に直接注射する治療法です。
「光線力学療法(PDT)」も治療の一つです。これは光感受性物質を静脈注射し、その後に特殊なレーザーを病変部に照射することで、新生血管を閉塞させる治療法です。
これらの治療法は新生血管の発生や成長を抑制し、症状の進行を遅らせることを目的としています。
現時点では、新生血管黄斑症を完治させる治療法は確立されていないため、多くの場合、治療を継続しながら長期的な経過観察が必要です。
新生血管黄斑症は早期発見や早期治療によって、良好な視力を長く維持できる可能性が高まるため、症状に気づいたら速やかに眼科を受診することが重要です。
新生血管黄斑症になりやすい人・予防の方法
新生血管黄斑症になりやすいのは50歳以上の人や強度近視の人です。また、喫煙者も新生血管黄斑症になりやすいとのデータがあります。
加齢は避けられない要因ですが、近視の予防や禁煙は意識して取り組むことで新生血管黄斑症の予防につなげられます。
近視の予防
近視の進行を抑えるためには、子どもの頃から適切な目の使い方を心がけることが重要です。
長時間の近距離作業を避け、定期的に目を休ませるようにしましょう。屋外で過ごす時間を増やし、自然光を浴びることも近視の予防に役立ちます。
読書や文字を書くときは正しい姿勢と適切な距離を保ち、照明も適切に調整しましょう。スマートフォンなどの機器の使用時間も制限することも近視の予防につながります。
禁煙
喫煙者は非喫煙者に比べて新生血管黄斑症のリスクが高い傾向があるとされています。禁煙することでリスクを減らすことができます。
他にも、定期的な眼科検診が重要です。とくに新生血管黄斑症になるリスクがある人は、症状がなくても年に一度は眼科検診を受けることをおすすめします。
これらの予防策は新生血管黄斑症を完全に防ぐものではありませんが、リスクを減らし発症を遅らせる効果が期待できます。
目の症状を少しでも感じた場合は、できるだけ早期に眼科へ受診しましょう。
関連する病気
- 加齢性黄斑変性症
- 脈絡膜新生血管
- 近視性黄斑部新生血管
- 高度近視
参考文献