監修医師:
柳 靖雄(医師)
点状表層角膜症の概要
点状表層角膜症は、角膜(眼球の黒目の部分)の表面に多数の小さな点状の傷がつく状態を指します。
さまざまな原因で引き起こされますが、主な要因としてコンタクトレンズの不適切な使用や長時間の装着、ドライアイ、逆まつ毛などが挙げられます。
これらの要因により、角膜の酸素不足や機械的な刺激が生じ、角膜表面の損傷につながります。
症状として、眼の違和感や異物感、充血、痛み、視界のぼやけ、軽度の視力低下などが起こり、生活の質を下げる可能性があります。
診断は主に細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査とフルオレセイン染色検査によっておこなわれます。
治療には人工涙液やヒアルロン酸を含む点眼薬が用いられることが多いです。
重症度や原因によっては、抗菌薬や抗炎症薬の点眼薬が必要になる場合もあります。
点状表層角膜症は適切な治療を受ければ通常は数日から数週間で回復します。
しかし、再発を繰り返さないためには原因となる要因を特定し、生活習慣の改善や適切なコンタクトレンズの使用が重要です。
点状表層角膜症の原因
点状表層角膜症の原因は多岐にわたります。
主な原因として、コンタクトレンズの不適切な使用や長時間の装着が挙げられます。
特に、清潔に保たれていない汚れたレンズやサイズが合わないレンズを使用することで、角膜に負担がかかり傷がつきやすくなります。
また、ドライアイや逆まつ毛も角膜を傷つける要因になります。
流行性角結膜炎や細菌性結膜炎など、ウイルスや細菌の感染症の合併症として発症するケースもあります。
その他、化学物質や紫外線の曝露、点眼薬のアレルギー反応、眼瞼炎、ベル麻痺などもリスク要因です。
これらの要因が角膜表面に影響を与え、点状表層角膜症を引き起こすことがあります。
点状表層角膜症の前兆や初期症状について
点状表層角膜症の初期症状はさまざまで、患者によって異なる場合があります。
一般的な症状は眼の違和感や異物感で、眼にゴロゴロとした感覚や、何かが引っかかっているような違和感が生じます。
充血も頻繁に見られ、眼が赤くなることがあり、涙の量が増加する「流涙」も特徴的な症状です。
点状表層角膜症による眼の痛みは軽度から中程度までさまざまで、チクチクしたり灼熱感を感じたりすることがあります。
乾燥感やまぶしさを感じる患者も多く、特に光に対して過敏になる羞明(しゅうめい)症状が現れることがあります。
視力の低下も報告されており、物がかすんで見えたり、ぼやけたりすることがあります。
しかし、無症状もしくは軽度の症状しか示さないケースもあるため、点状表層角膜症の発症を見落とさないために定期的な眼科検診が重要です。
点状表層角膜症の検査・診断
点状表層角膜症の診断は、主に細隙灯顕微鏡検査とフルオレセイン染色検査によっておこなわれます。
細隙灯顕微鏡検査では、専用の拡大鏡を使用し、細い光線を眼に当てて角膜などの眼の器官を詳細に観察します。
この検査により、角膜表面の微細な変化や異常を確認できます。
より正確な診断をおこなうために、フルオレセイン染色検査が併用されることもあります。
フルオレセインは蛍光色を発する色素で、点眼すると角膜の傷や異常部位が鮮明に浮かび上がります。
フルオレセインを点眼したうえで細隙灯顕微鏡の光を当てると、損傷部位が黄緑色に光って見えるため、点状の傷を正確に把握できます。
フルオレセイン染色検査は、角膜障害の診断だけでなく、ドライアイの評価にも用いられます。
眼の表面に蓄積した涙の状態を評価するBUT(Break Up Time)検査や涙液メニスカス検査では、フルオレセインで涙を染色しながらおこなうことで、よりドライアイの状態を詳細に評価できます。
また、疑われる原因によっては、涙の分泌量を調べるシルマー試験、角膜知覚検査、ウイルスや細菌の検査などがおこなわれることもあります。
コンタクトの形状が眼に合わない可能性がある場合は、角膜のカーブを調べる角膜形状解析検査などが実施されます。
これらの検査を総合的に評価することで、点状表層角膜症の正確な診断と適切な治療方針が決定されます。
点状表層角膜症の治療
点状表層角膜症の治療は主に点眼薬が使用されます。
多くの場合、人工涙液やヒアルロン酸を含む点眼薬が使用され、角膜表面を保護し、潤いを与えることで症状の改善を促します。
コンタクトレンズの使用が原因と考えられる場合は、一時的に使用を中止することが推奨されます。
ウイルスや細菌の感染が疑われる場合は抗菌薬などの点眼薬が処方され、炎症が強い場合にはステロイド剤が使用されることもあります。
アレルギーが関与している場合は、抗アレルギー薬が効果的です。
紫外線の曝露によって発症している場合は、散瞳剤を用いて瞳孔を拡張し、眼内の炎症を抑える治療がおこなわれることがあります。
逆まつ毛が原因の場合は、外科的な処置が必要になることもあります。
点状表層角膜症は、個々の患者の状態に合わせた治療をすることで完治が可能です。
点状表層角膜症になりやすい人・予防の方法
点状表層角膜症は特定の条件によって発症リスクが高まります。
特にリスクが高いのはコンタクトレンズの使用者で、常用している人や適切なケアを怠っている人、サイズの合わないものを使用している人が該当します。
コンタクトレンズを装着したまま就寝することも危険因子になります。
ドライアイの人や逆さまつげを持つ人も、点状表層角膜症のリスクが高くなります。
さらに、紫外線に頻繁に曝露される人も注意が必要です。
予防方法としては、コンタクトレンズの適切な使用が重要です。
長時間の装着は避け、使用後は必ず洗浄してください。
また、コンタクトレンズを扱うときは必ず清潔な手でおこなうことが大切です。
ドライアイ対策として、眼科医が事前に指定した点眼薬を適切に使用することも効果的です。
夏の海辺や冬のスキー場など紫外線の強い環境では、サングラスや保護メガネの着用を心がけましょう。
さらに、定期的な眼科検診を受けることで、点状表層角膜症の早期発見と早期治療につながります。