監修医師:
柿崎 寛子(医師)
目次 -INDEX-
マイボーム腺機能不全の概要
マイボーム腺機能不全とは、まぶたの裏側にあるマイボーム腺という器官の働きが低下する病気です。
通常、マイボーム腺は油分を分泌することによって目の乾きを防ぐ役割を果たしていますが、この機能が低下すると目の乾燥感や異物感、疲労感などさまざまな症状を引き起こします。
国内の調査では、50歳以上の日本人の10〜30%の人がマイボーム腺機能不全を発症しているといわれています。
出典:マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」
最近では、パソコンやスマートフォンを長時間使用する場面が増えたことで、広い世代で増加傾向にある目の病気です。
マイボーム腺機能不全の主な症状には、目の乾燥や疲れ、不快感や異物感などがあります。
治療法は眼瞼縁(がんけんえん)の清拭や温罨法(おんあんぽう)を中心におこないます。
場合によっては点眼薬や内服薬による薬物療法を選択することもあります。
マイボーム腺機能不全は他の眼疾患のような特異点な症状がないため、少しでも異変を感じたら早めに眼科を受診しましょう。
マイボーム腺機能不全の原因
マイボーム腺機能不全は、細菌感染などによってマイボーム腺の機能が低下することが原因の一つとして挙げられます。
目の中に入った細菌がマイボーム腺の働きに影響を及ぼし、腺の出口を塞ぐためです。
また、加齢とともにマイボーム腺の機能が低下しやすくなることも知られています。長時間にわたるパソコンやスマートフォンの使用が続くと、まばたきの回数が減少し、目の乾燥によってマイボーム腺機能不全を悪化させるともいわれています。
コンタクトレンズの長時間の使用も目の潤いが損なわれ、マイボーム腺の働きに悪影響を及ぼします。
その他には、アイメイクの落とし方が不十分なことによってマイボーム腺の開口部を塞いでしまうことも原因のひとつです。
マイボーム腺機能不全の前兆や初期症状について
マイボーム腺機能不全の初期症状は、目の異物感や乾燥、痛みや疲労感などさまざまで、まぶたが熱く感じたり、涙が出たりする場合もあります。
とくにパソコンやスマートフォンを使用している時はまばたきの回数が減少し、症状が悪化しやすくなります。
これらの症状はマイボーム腺機能不全に限った症状ではないため、ドライアイなどの症状と判別しにくいこともあるでしょう。
これらの症状を感じたら、できるだけ早く眼科を受診することが大切です。
マイボーム腺機能不全の検査・診断
マイボーム腺機能不全の検査は細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)検査やマイボグラフィー、BUT検査、シルマー試験などをおこないます。
細隙灯顕微鏡検査では、マイボーム腺開口部や周辺の状態や、まぶたの裏側の炎症、ドライアイの状態などをくわしく観察します。
細隙灯顕微鏡は眼科でよく使用されている検査機器で、患部に細い光を当てて拡大し、詳細な状態を観察することが可能です。
マイボグラフィーは赤外線カメラでマイボーム腺を透過させることができる装置で、まぶたの内側にあるマイボーム腺の構造や状態の観察ができます。
BUT検査では、10秒間まばたきを我慢したときの目の表面に現れる涙の安定性を測定します。
目を開き始めてから、涙の層が壊れるまでの時間が短いと、目の乾燥が進んでいることが疑われます。
シルマー試験は涙の量を測定したり成分を分析したりする検査で、上まぶたと下まぶたで細長い濾紙(ろし)を挟んで調べます。
その他、問診によって症状の内容や経過、生活習慣、コンタクトレンズの使用状況についてなどを確認します。
複数の検査結果と問診内容を総合的に判断し、マイボーム腺機能不全の確定診断をおこないます。
マイボーム腺機能不全の治療
マイボーム腺機能不全の治療の基本となるのはまぶたのケアで、眼瞼縁の清潔を保つための清拭(せいしき)や温罨法(おんあんぽう)をおこないます。
温罨法はまぶたを温めてマイボーム腺の分泌物を柔らかくし、マッサージによって分泌物を押し出す治療法です。
原因や症状の程度によっては、点眼薬や内服薬による治療をおこなうこともあります。
とくに抗生物質の点眼薬や内服薬は、まぶたの炎症を改善するのに効果的です。
マイボーム腺機能不全になりやすい人・予防の方法
マイボーム腺機能不全になりやすい人には、パソコンやスマートフォンを長時間使用する人が挙げられます。
また、マイボーム腺は加齢によって機能が低下するため、高齢者も発症のリスクが高くなります。
長時間コンタクトレンズを使用している人や、クレンジングの際にアイメイクを十分に落とさない人も、マイボーム腺機能不全になりやすい傾向があります。
マイボーム腺機能不全に対する日常的なケアとして、まぶたの縁の清潔を保ちましょう。
また、ホットアイマスクやホットタオルでまぶたを温めたり、軽くマッサージしたりすることで、分泌物によってマイボーム腺が閉塞するのを予防できます。
他にも、アイメイクをした際は、まぶたの縁までしっかりと洗浄することが大切です。
コンタクトレンズを装着する人は、長時間にわたる装着は避け、専用の洗浄液や保存液で取り扱うようにしましょう。
定期的な眼科検診を受けることも重要です。
とくにドライアイなどのマイボーム腺機能不全になるリスクがある方は、年に1回程度の検査を受け、目の状態を観察してもらいましょう。
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参考文献