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色覚異常
柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

色覚異常の概要

色覚異常とは、大多数の人が認識している色と異なった色に見える状態を指します。

色覚異常は「先天性色覚異常」と「後天性色覚異常」に大別され、先天性色覚異常によるものが多いです。

先天性色覚異常の主な原因は遺伝によるもので、日本人男性では約5%、女性では約0.2%の人にみられるます。
(出典:公益社団法人 日本眼科学会「先天色覚異常」

人間の目には、赤や緑、青の3種類の色を感じる錐体細胞(すいたいさいぼう)があります。

色覚異常の場合、錐体細胞のいずれか、あるいは全てが欠損していたり​​、正常に機能しなかったりするため、他の人とは異なる色として認識します。

赤の感覚が弱いタイプや緑の感覚が弱いタイプ、青の感覚が弱いタイプなど、機能が障害されている錐体細胞によって色の見え方が異なります。

そのなかでも多いのは、赤と緑の区別が難しいタイプです。

現代の医療では色覚異常を治す方法はありませんが、日常生活を送る上で大きな支障はないケースが多いです。

厚生労働省は色覚異常がある人に対して、雇用受け入れ時に根拠のない採用制限はおこなわないように指導していますが、周囲の理解が不十分であるのが現状です。

色覚異常

色覚異常の原因

先天性色覚異常の主な原因は、遺伝による染色体異常です。

XとYの染色体のうち、X染色体は色覚に関係する遺伝子を持っています。

男性はXとYの染色体を持っており、1つのX染色体に異常があれば色覚異常が生じます。

一方で女性はXとXの染色体を持っており、片方のX染色体に異常があれば保因者に、両方のX染色体に異常があれば色覚異常が生じます。

また、少ないケースではありますが、網膜や視神経、脳の疾患が原因で後天性色覚異常になることもあります。

色覚異常の前兆や初期症状について

以下のような見え方の場合、色覚異常の症状が生じている可能性があります。

  • 似た色の区別が難しい
  • 赤のチョークで書かれた黒板の文字が見えにくい
  • 信号機の色や地図の色区別がつきにくい

色覚異常の症状は個人差が大きく、これらの症状をほとんど感じない人もいるため、少しでも不安がある場合は医療機関で適切な検査を受けることをおすすめします。

色覚異常の検査・診断

色覚異常の主な検査方法には、以下があります。

  • 仮性同色表
  • パネルD-15テスト
  • アノマロスコープ
  • ランタンテスト

仮性同色表

仮性同色表は色付きの点で描かれた数字や図形を識別する検査で、スクリーニング検査として使用されます。

仮性同色表のなかでもよく使用されているのが石原式色覚検査表で、わかりにくい色の組み合わせで描かれた数字や図形を読み上げてもらい、色覚異常の疑いがないか確かめます。

パネルD-15テスト

パネルD-15テストは色が付いた15個のキャップを、色が似ている順に並べる検査で、生活の支障や職業適性を判断するのに適しています。

色覚異常のタイプによって似ていると感じる色が異なるため、色覚異常のタイプや程度の判断ができます。

アノマロスコープ

アノマロスコープは赤と緑の光を調整して、黄色の光と一致させる検査で、色覚異常の確定診断に用いられますが、行える施設は限られます。

スコープをのぞくと小さな円状の下半分に黄色の光、上半分に赤と緑を混ぜた光が見えます。

上半分の光の色は徐々に調節されて黄色に近づいていくため、下半分の光の色と同じに見えるタイミングを教えてもらいます。

色素異常がある場合、正常とは異なる条件で上半分と下半分の色の見え方が合致します。

ランタンテスト

赤や緑、黄の光がランダムに2つずつ点灯し、映し出された色の名前を答える検査です。

海外では航空や鉄道、船舶などに関連する職業の適性検査の時に実施されていますが、現在日本ではほとんどおこなわれていません。

色覚異常の治療

現代の医療では色覚異常の治療法は確立していませんが、色覚異常がある人の生活をサポートするために、文章を提示する際は以下のような方法を取り入れると効果的です。

  • 色合いに配慮する
  • 文字に色を付けるときは明度差をつける
  • 色の名前を表記する
  • 色以外の方法で強調する

色合いに配慮する

文章を書くとき、文字を強調するために赤を使用することが多いですが、色覚異常の人は濃い赤が黒と混同しやすいため、オレンジや赤橙を使いましょう。

背景を白にするとより目立ちやすくなります。

赤のチョークで書かれた黒板の文字は見えにくいため、使用するチョークを白と黄色に限定している学校もあります。

文字に色を付けるときは明度差をつける

文字と背景色には、はっきりとしたコントラストをつけましょう。

白の背景に対して青の文字にしたり、黄色の背景に対して黒の文字にしたりすることで明度差がついて、色の区別がしやすくなります。

色の名前を表記する

色覚異常がある人の場合、色の呼び方がほかの人と異なったり、その場の照明によって色の見え方が変わったりすることがあります。

たとえば、書類の隅の方に「ピンク」と表記したり看板の端に「みどり」と書くことで、認識のずれを防ぐことができます。

色以外の方法で強調する

色覚異常がある人に文章を提示するとき、文字に下線を引いたり太字にしたりして、色以外の方法で強調する工夫をしましょう。

文章を書くときは区別するために色を使うことがありますが、色覚異常の人は赤が黒と同じように見えることがあります。

文字の大きさを変えたりフォントを変えたりすることも効果的です。

色覚異常になりやすい人・予防の方法

色覚異常になりやすい人は以下の人です。

  • 男性
  • 家族に色覚異常の人がいる
  • 網膜や視神経、大脳に疾患がある

男性は遺伝子上の理由により、色覚異常になる割合が女性よりも多いです。家族のなかに色覚異常の人がいる場合も、色覚異常になる可能性が高くなります。

網膜や視神経、大脳に疾患がある場合は後天性色覚異常になる可能性があり、疾患が重症化すると、初期段階とは別の色を識別しにくくなる特徴もあります。

現段階で先天性色覚異常を予防する方法は確立されていませんが、後天性色覚異常のリスクを下げるためには以下の点に気を付けるとよいでしょう。

  • 網膜や視神経、大脳の疾患がある場合はしっかりと治療を受ける
  • 色の見え方に不安がある場合はできるだけ早く眼科医へ相談する

目や目の周辺組織、脳の疾患を抱えている場合は治療をきちんと受けて症状の管理に努めましょう。

色の見え方に少しでも不安を感じる場合は早めに眼科医へ相談しましょう。


関連する病気

  • 先天性色覚異常
  • 後天性色覚異常
  • 網膜疾患
  • 視神経疾患

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