遠視

小児や若年者に多く見られる一時的な遠視です。毛様体筋の過度の緊張によって引き起こされます。

薬剤

一部の薬剤で、特に抗コリン作用を持つものが、一時的に調節力を低下させ、遠視様の症状を引き起こします。

これらの原因が単独、もしくは重なることで遠視を引き起こす場合があります。人によって原因や症状は変化するため、眼科の受診が重要です。

遠視の前兆や初期症状について

遠視の前兆や初期症状は、個人差が大きく、症状の現れ方も人によって異なります。

近くのものがぼやける

代表的な症状で、近距離にあるものがはっきりと見えにくくなります。読書や小さなものを見る作業をする際に特に顕著な症状です。

目の疲れやストレス

近くのものを見ようとして、毛様体筋が過度に緊張し、目の疲れや不快感を感じることです。長時間、近くのものを見る作業をしていると表れます。

頭痛

目の疲れから、前頭部や眉間に頭痛を感じることがあります。理由は、目を凝らすことで筋肉が緊張するためです。

視力の変動

一日の中で、視力が変動することがあります。特に疲れているときや、長時間近くのものを見る作業をしていると視力が低下しやすいです。

眼球の奥の痛み

長時間近くを見る作業をすることで、眼球の奥に鈍い痛みを感じます。これは、毛様体筋の過度の緊張が原因です。

夜間の視力低下

薄暗い環境下で視力が低下し、暗い室内や、夜間の運転などが困難となります。

これらの症状は、遠視でのみ起こるわけではありません。ほかの視力の問題や眼の疾患でも現れるため、目に異常を感じたら眼科の受診が必要です。

遠視の検査・診断

遠視の検査は、眼科医や検眼士によって行われます。実際に行われる検査を解説します。

視力検査

最も基本的な検査で、視力表を用いて遠距離と近距離の視力を測定します。遠視の場合、近距離視力が低下する傾向にあります。

屈折検査

自覚的屈折検査
様々な度数のレンズを患者さんの目の前に置き、最も鮮明に見える組み合わせを見つけます。

他覚的屈折検査
オートレフラクトメーターという機器を用いて、患者さんの目の屈折状態を測定します。

調節力検査

近くのものにピントを合わせる能力を測定します。遠視の場合、この能力が低下しているためです。

眼位・眼球運動検査

両眼のバランスや動きを確認します。遠視が原因で斜視や両眼視機能の異常が生じていないかを調べる検査です。

細隙灯顕微鏡検査

角膜、水晶体、前眼部の状態を観察し、遠視に関連する異常がないか確認します。

眼底検査

散瞳薬で瞳孔を広げ、眼底カメラや検眼鏡を用いて網膜や視神経の状態を観察します。遠視に伴う眼底の変化を確認するためです。

角膜形状解析

角膜の形状を測定し、角膜に起因する遠視がないかを調べます。

眼軸長測定

超音波で眼球の前後径（眼軸長）を測定します。遠視の場合、眼軸長が短いことが多いです。

調節麻痺下屈折検査

調節力を一時的に麻痺させる点眼薬を使用し、正確な屈折状態を測定します。若年者の潜在遠視の診断に特に有効です。

両眼視機能検査

両眼で物を見たときの目の機能を検査します。遠視が両眼視に与える影響を調べるためです。

これらの検査は痛みを伴わず、短時間で終わるものがほとんどです。
遠視は以下のような症状がみられ、検査の後に診断されます。

主要な症状がある

• 近くのものがぼやけて、ピントが合いにくい
• 目が疲れやすく、近くのものを目を細めて見てしまう
• 暗い場所でものが見えづらい

検査初見
最初に視力検査が行われます。その上で、個々に合った検査を行い、診断をします。

除外されるもの
例えば、薬を使ったことで一時的な遠視症状が出た場合は除外されるでしょう。他には、目を休めて回復した場合なども除外されます。
診断は、年齢に応じた正常値との比較、症状との整合性を慎重に検討します。理由として、遠視は乱視などと併存することも多いため、包括的な診断が必要となるためです。

遠視の治療

遠視の治療は、患者さんの年齢や遠視の状態、日常生活での目の使用状況など、総合的に判断して治療を行います。

眼鏡による視力矯正

最も一般的な治療法です。凸レンズ（プラスレンズ）を用いて光の屈折を調整し、網膜上に焦点を合わせます。安全で調整が行いやすく、コストと効率が良い治療法です。ただし、最初の頃は周辺視野が歪んだり、外観に変化が見られるため、慣れるまでに時間がかかるでしょう。

コンタクトレンズの使用

眼鏡と同様、視力を矯正するために使用します。メガネに比べて、より自然な視野が広がるのが良い点です。しかし適切な管理が必要であり、目の乾燥や感染リスクがあります。

オルソケラトロジー

夜間に特殊なハードコンタクトレンズを使用し、角膜の形状を一時的に変化させて視力を改善する方法です。日中の生活はレンズフリーで過ごせますが、効果は一時的で、継続的な使用が必要になります。

レーザー屈折矯正手術

エキシマレーザーを用いて角膜の形状を変更し、屈折異常を直接修正する治療法です。LASIK、PRK、SMILEなどの手法があり、恒久的な視力改善の可能性があります。注意点としては、手術のリスクと高額な治療費、適応条件があることです。

眼内レンズ挿入術

眼内レンズを挿入することで、遠視を矯正することが可能です。白内障手術の際に同時に検討されることもあります。高度な遠視にも対応でき、調節性眼内レンズで近距離視力も改善できます。ただし侵襲的な手術であり、合併症のリスクがあります。

視機能訓練

主に小児の調節性遠視や斜視を伴う場合に行います。眼球運動や、両眼視機能の改善が目的の訓練です。非侵襲的で、副作用が少ないのがメリットですが、効果が現れるまで時間がかかります。

また、軽度の遠視や小児の場合、定期的な検査による経過観察が行われることがあります。日常生活の指導で、目の負担を軽減する時もあるため、気になる方は眼科を受診しましょう。

遠視になりやすい人・予防の方法

この章では、遠視になりやすい人の特徴と予防方法について解説します。

遠視になりやすい人

遺伝的要因
家族に遠視の人がいると、遠視になるリスクが高くなります。
加齢
特に40歳以上になると、水晶体の硬化で調節力が低下し、遠視症状が顕在化しやすくなります。
小児期の視覚環境
幼少期に、十分な近見活動である読書などを行わなかった場合、遠視のリスクが高まる可能性があります。
全身疾患
糖尿病などの疾患がある人は、眼の健康に影響を与え、遠視を含む視力問題のリスクが高くなります。
生活習慣
長時間のPCの使用や、近距離作業が多い職業の人は、眼の疲労から遠視症状になる可能性があります。

予防の方法

定期的な眼科検診
年に1回程度の定期検診を受け、早期発見・早期対応に努めます。
適切な視環境の整備
十分な照明と適切な作業距離、正しい姿勢を意識して実行します。
20-20-20ルール
20分ごとに、20フィート（約6メートル）先を20秒間見るようにします。この方法で、眼の疲労を軽減することが可能です。
バランスの取れた栄養摂取
ビタミンA、C、E、オメガ3脂肪酸など、眼の健康に良い栄養素を積極的に摂取します。
適度な運動
全身の血行を促進すると、眼の健康維持にも役立ちます。
睡眠と休息
十分な睡眠と適切な休息で、眼の疲労回復を促します。

遠視になりやすい人の特徴を把握し、予防することで遠視を軽減します。日常生活で積極的に取り入れると良いでしょう。