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流行性角結膜炎(はやり目)
柿崎 寛子

監修医師
柿崎 寛子(医師)

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三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科

流行性角結膜炎(はやり目)の概要

流行性角結膜炎(はやり目)は、感染力が強いウイルス性結膜炎です。アデノウイルスが主な原因で、特に8型、19型、37型が多く報告されています。季節を問わず発症しますが、特に夏から秋に多い傾向にあります。
主な感染経路は、接触感染です。潜伏期間は1〜2週間で、突然白目が赤くなり、大量の目やにが出るのが特徴です。流行性角結膜炎は、5類感染症定点把握疾患に指定されており、診断した医師による届出が必要です。

流行性角結膜炎(はやり目)の原因

流行性角結膜炎(はやり目)の主な原因はアデノウイルスで、特に8型、19型、37型が多く報告されています。さらに、53型、54型、56型といったD種のウイルスも関与しています。

感染経路は、ウイルスが付着した手で眼に触れたり、ウイルスで汚染されたタオルや洗面器に触れたりする接触感染によります。また、消毒が不十分なプールの水を通じて広がるケースも少なくありません。職場や家庭、病院など、人が密集する場所での流行が多い傾向にあります。
また、家庭内での共用タオルや学校やプール、職場内でも感染が広がり、病院では検査器具や点眼薬、医療従事者の手指を介した院内感染も発生します。結膜炎の症状がある間は感染のリスクが高いため、注意が必要です。

流行性角結膜炎(はやり目)の前兆や初期症状について

流行性角結膜炎(はやり目)の前兆や初期症状は、主に以下の通りです。

  • なみだ目
  • まぶたの腫れ
  • 目やに
  • 目の充血
  • 目のゴロゴロ感

流行性角結膜炎はほかの結膜炎に比べて症状が重い傾向にあり、耳の前のリンパ節の腫れや圧痛を伴います。
子どもや高齢者、症状が強い人の場合、まぶたの裏に偽膜(ぎまく)と呼ばれる白い膜ができる例もゼロではありません。偽膜性結膜炎は、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こすことがあるため、注意が必要です。
また、角膜に炎症が及ぶと、黒目に小さな濁りが出て、まぶしさやかすみを感じる場合もあります。

流行性結膜炎は片方の目に発症し、3〜4日後にもう一方の目にも同様の症状が現れますが、後から発症した目の方が症状は軽い傾向にあります。通常は2週間から4週間で治癒しますが、角膜の濁りは長引くことがあります。
流行性角結膜炎は感染力が強いため、早期に眼科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

流行性角結膜炎(はやり目)の検査・診断

流行性角結膜炎(はやり目)は、通常は症状から診断されますが、正確な診断のためには検査が必要です。検査診断は、迅速診断キットを用いた抗原検査や、病原体の検出によって行われます。
具体的な検査方法は、以下の通りです。

  • アデノウイルスの分離同定
    結膜ぬぐい液を用い、約1ヶ月を要する
  • 遺伝子検出
    PCR法、LAMP法を用いて行う
  • 血清学的診断
    初診時と2週後のペア血清で4倍以上の抗体価の上昇を確認するが、臨床的な意義は少ない
  • 抗原検出
    アデノチェック®(感度57%、特異性100%)、アデノクロン®(感度60%、特異性100%)が使用される。検体は発症4日以内、遅くとも1週間以内の結膜擦過物を用いますが、感度が低いため慎重な判断が必要

迅速診断法として「イムノクロマトグラフィー法」が使用されますが、型別の判定はできません。「PCR-シーケンス法」では分子型別の同定が可能であり、これにより詳細な疫学調査や公衆衛生的対応が期待されます。
診断のポイントは、耳前リンパ節の腫れと圧痛を伴う急性発症の結膜充血があり、周囲に同様の結膜炎患者さんがいることが診断のポイントとなります。
また、結膜炎が出血性になると、以下のような疾患との鑑別診断が必要です。

  • 咽頭結膜熱
  • 急性出血性結膜炎

流行性角結膜炎(はやり目)の治療

流行性角結膜炎(はやり目)には有効な抗ウイルス薬はないため、治療は対症療法が中心です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 抗炎症剤の点眼薬
  • 低濃度副腎皮質ステロイド薬点眼薬
  • 非ステロイド系抗炎薬点眼薬
  • ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬
  • 副腎皮質ステロイド点眼薬

症状を緩和するため、抗炎症剤の点眼薬が用いられるのが一般的です。
症状が強い場合は、低濃度副腎皮質ステロイド薬点眼薬や非ステロイド系抗炎薬点眼薬が考慮されます。糸状角膜炎や広範囲の角膜上皮剥離が見られる場合には、ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬、多発性角膜上皮下浸潤に対しては、副腎皮質ステロイド点眼薬が処方されます。
細菌感染がなければ、抗菌薬の点眼薬は原則不要です。

流行性角結膜炎の治療の目的は、症状の軽減と二次感染の予防です。症状が現れた場合には、早期に眼科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

流行性角結膜炎(はやり目)になりやすい人・予防の方法

流行性角結膜炎(はやり目)は感染力が強いため、特定の状況や環境にいる人々は特に注意が必要です。また、予防接種はないため、感染対策の徹底も重要だといえます。

なりやすい人

流行性角結膜炎(はやり目)になりやすい人は、主に以下の通りです。

  • 新生児や乳幼児
  • 高齢者
  • 学校や職場などの集団生活をしている人
  • 医療従事者

新生児や乳幼児、高齢者などは免疫力が低い傾向にあり、感染リスクが高いと言えるでしょう。また、学校や職場など、人が密集する環境では、感染が広がりやすく、注意が必要です。患者さんと接触する機会が多い医療従事者も、感染リスクは高いといえます。

予防の方法

流行性角結膜炎(はやり目)の予防には、以下の対策を徹底することが重要です。

  • タオルや目薬などを共有しない
  • 手を頻繁に洗う
  • 目を触らない
  • 洗面具やタオルを家族と別々に使用する
  • 入浴は家族の中で最後にし、湯船を洗い流す
  • 目ヤニを取るときは洗い流す
  • 擦らずにティッシュでつまみ取るようにする
  • タオルでは拭かない(捨てれるもので拭くほうが良い)

消毒方法

消毒を徹底することも重要です。以下の方法で適切に消毒を行いましょう。

  • 熱消毒
  • 次亜塩素酸ナトリウムやアルコールの使用
  • 汚染された器具の消毒

アデノウイルスは熱に弱く、90℃で5秒の煮沸消毒で死滅します。次亜塩素酸ナトリウムやアルコールは、熱消毒ができないものの消毒に有用です。汚染された器具は、オートクレーブで滅菌するか、アルコールやヨード剤で消毒します。


関連する病気

  • アデノウイルス性胃腸炎
  • アデノウイルス性肺炎
  • ヘルペス性結膜炎
  • 細菌性結膜炎
  • 角膜上皮障害
  • 角膜混濁
  • リンパ節腫脹

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