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柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

飛蚊症の概要

飛蚊症(ひぶんしょう)とは、視界に糸くずや黒い点が浮かんで見える現象を指す医学用語です。
これらの浮遊物は、まるで蚊が飛んでいるように見えるため、「飛蚊症」という名前がつけられました。
この現象は、視野の中に突然小さな影が現れ、それが動き回る様子を指します。

通常、明るい場所や白い壁を見たときにより顕著に見えることが多い傾向です。
これは、光が網膜に直接当たると、浮遊物が影として映し出されやすくなるためです。
一部の人々にとっては、これらの浮遊物は不快感や心配の原因となることがあります。
特に、読書やパソコン作業など、集中力を必要とする活動を行っているときには集中力の妨げとなり、イライラを招くかもしれません。

飛蚊症は、加齢と共に誰にでも起こり得る一般的な現象であり、多くの場合は特に治療の必要がありません。
これは、年齢を重ねるとともに、目の中のゼリー状の物質(硝子体)が少しずつ変化することで、飛蚊症の症状を引き起こすためです。

しかし、見え方が突然変わったり、浮遊物の増加が見られたりした場合は、網膜剥離などの重篤な目の疾患の前兆である可能性もあります。
そのため、飛蚊症の症状が急に悪化した場合には、すぐに眼科医に相談することが重要です。

飛蚊症の原因

飛蚊症の主な原因は、目の中にある硝子体というゼリー状の物質の変化にあります。
硝子体は、目の中を満たす透明なゼリー状の物質です。
この硝子体が線維化したり液化したりする際に混濁することで、この濁りが網膜に映り、飛蚊症の症状が出ます。

具体的には、硝子体の中にあるコラーゲン線維が絡まったり、硝子体が液体化して小さな気泡ができたりすると、これらが影となって視野に映ります。

原因が加齢による硝子体の変化であればそれほど心配はいりません。
これは、年齢を重ねるとともに硝子体の構造が自然に変化し、その結果として飛蚊症が発生することが一般的だからです。
この場合、飛蚊症は無害であり、特別な治療を必要とすることはほとんどありません。

しかし、網膜裂孔、ぶどう膜炎などの病気が原因の場合、放置すると視力の低下や失明の恐れがあります。
これらの疾患は、硝子体が網膜から引き離される際に網膜に穴を開けたり、炎症を引き起こしたりすることで飛蚊症を引き起こします。

このような場合、飛蚊症は単なる症状であり、その背後にはより深刻な問題が隠れている可能性があります。
したがって、飛蚊症の症状が突然出現したり、急激に悪化したりした場合には、すぐに眼科医に相談することが重要です。
早期に適切な診断と治療を受けることで、視力の低下や失明を防ぐことが可能です。
飛蚊症自体は無害ですが、それがほかの目の問題を示している可能性があるため、注意が必要です。

飛蚊症の前兆や初期症状について

飛蚊症の前兆や初期症状は、多くの場合、突然現れます。
これは、視界に突如として黒い点や糸状の物が浮かび上がるという特徴的な症状です。
これらの浮遊物は、目を動かすとそれに応じて動き、まるで視界を漂っているかのように見えます。

また、光視症という症状も飛蚊症の一部として現れることがあります。
これは、閃光のようなものが見える現象で、特に暗い場所で目を閉じたときなどに顕著になります。
これは、網膜が刺激されることで起こる現象で、飛蚊症だけでなく、網膜剥離の前兆となることもあります。

さらに、視界の一部が霞むという症状も報告されています。
これは、視界の一部がぼやけたり、黒い影のようなものが見えることを指します。
これは、網膜の一部が損傷しているか、硝子体が網膜に影を落としている可能性があります。

飛蚊症を自覚した場合、まずは眼科を受診することをおすすめします。
眼科医は、適切な検査を行い、飛蚊症の原因を特定し、必要な治療を提案してくれます。
これは、飛蚊症がほかの眼科疾患の前兆である可能性もあるため、早期の診断と治療が重要となるからです。

飛蚊症の検査・診断

飛蚊症の検査として代表的なものが眼底検査です。
これは点眼薬を用いて瞳孔を開き(散瞳)、眼底鏡という器具で網膜の状態を調べます。

また、視力検査、眼圧検査も行う場合が一般的であり、状況に応じて原因を特定するための精密検査が行われる場合もあります。

眼底検査で加齢による生理的な飛蚊症か、病気が原因で生じている飛蚊症かの判断ができ、治療を行うかどうかの診断が下されます。

飛蚊症の治療

加齢による生理的な飛蚊症の場合、積極的な治療は行わずに様子を見ることが多い傾向です。
視界を遮る範囲が広く、経過観察でも改善が見られない場合は硝子体手術で該当部位を切除する治療を行うこともあります。

一方、病気が原因の飛蚊症の場合、原因となる病気の治療が必要となります。
網膜に穴が空く網膜裂孔では、裂孔を放置しておくと網膜剥離へと病気が進行する恐れがあり、早めの対処が求められます。
網膜裂孔に対してはレーザーで穴の周囲を焼き固め、裂孔が広がらないよう処置します。

また、硝子体出血が多量の場合は硝子体手術が行われます。
ぶどう膜炎が原因の場合、内科的治療としてステロイド薬や抗菌薬、抗ウイルス薬などを用いて治療を行います。

飛蚊症になりやすい人・予防の方法

飛蚊症になりやすい人として、まず始めに挙げられるのは40歳以上の人です。
一般的に40代になると、眼球内の硝子体の組成が変化し、内部に液体が溜まったり、硝子体が収縮したりします。
この変化に伴い、硝子体が濁って飛蚊症として表れます。

次に、強度近視の方の場合、眼球が前後方向に引き延ばされ、楕円形のような形になります。
専門的には、眼軸が伸びると表現します。
眼軸が伸びると目が前後に長くなるため、硝子体の剥離が早い段階から起こるほか、網膜が薄くなるため網膜裂孔、網膜剝離のリスクが高くなります。

また、糖尿病の方は全身の毛細血管がもろくなるため、網膜の毛細血管もダメージを受け、糖尿病網膜症に伴って飛蚊症が現れることがあります。

その他、事故やスポーツなどで目に外傷を負った場合、網膜が裂けるなどの理由で出血し、飛蚊症の症状が表れることがあります。

すでに発生した飛蚊症が自然に消えることはありませんが、予防法としては近視になるような生活習慣を改めることや、糖尿病にならないために食事や運動に気をつける、といったことが挙げられます。
目に強い衝撃が加わるような外傷にも気をつけましょう。

普段から目の見え方に気をつけ、見え方が変わった、何か変だと思ったときは違和感をそのままにせず、早めに眼科を受診し、相談してください。

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