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柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

結膜下出血の概要

結膜下出血は、眼の結膜(白目の部分)の下にある細い血管が破れて出血する状態です。
出血は結膜の下に広がり、通常は鮮やかな赤色の見た目をしています。
出血している場所の血管は見えづらくなっています。
また、結膜下出血は痛みや視力の低下などの症状はないことが多く、せいぜいゴロゴロするなどの異物感を訴える程度です。

一方で、出血とよく間違えられるのが充血です。充血でも目は赤くなりますが、血管の走行を追うことができます。
また、充血以外にも、目やにや目の痛みなどの症状を訴えることもあります。

このように、結膜下出血と結膜充血には違いがありますが、中には重複している場合もあります。
決して自己判断はしないようにしましょう。

結膜下出血の原因

結膜下出血は原因が明らかでない場合と、原因が明らかである場合に分けられます。
この章では結膜下出血の原因について解説します。

原因がはっきりとしない場合

結膜下出血の多くは原因がはっきりとしません。
せきやくしゃみ、トイレで力を入れたりすることで、一時的に血圧が上がるだけでも結膜下出血が生じるとされています。
しかし、多くの場合は痛みや見えづらさを伴わないため、いつ結膜下出血が起きたのか分かりません。
そのため、鏡を見て初めて気付く、他人に言われて気付きます。

目をケガした場合

目をぶつけたり、ボールが当たったりすると、結膜下出血を生じることがあります。
この場合は原因がはっきりしており、目の痛みや見えづらさなども訴えることがあります。
この場合は早急な対応が必要になることもあるため、速やかな眼科受診が必要となります。

目のかゆみや目やにがある場合

ウイルス性の結膜炎やアレルギー性結膜炎によって、結膜下出血が生じることがあります。
目のかゆみや目やに、涙が多く出るなどほかの症状を認めることがあります。
結膜下出血のほかに、上記の症状を認める場合は点眼薬で治療をすることがあります。
眼科を受診するようにしましょう。

そのほかに原因がはっきりしている場合

上記以外にもさまざまな原因があると考えられています。

  • 糖尿病
  • 動脈硬化症
  • 白血病や紫斑病などの血液疾患
  • エイズや敗血症などの感染症
  • 高山病

 

  • 潜函病
  • 抗凝固薬内服
  • インターフェロン治療 

などがあります。
頻度が多くないものもありますが、特に、繰り返す結膜下出血の場合はこれら疾患がないか確認します。

結膜下出血の前兆や初期症状について

結膜下出血が発症する前兆はほとんどありません
結膜下出血が生じると、目がゴロゴロする、しょぼしょぼするという異物感を訴えることがあります。
しかし、多くの場合は痛みや見えづらさなどの症状はなく、目が赤い自覚症状を認めない場合がほとんどです。
一方で、結膜下出血の原因がある場合は目やにや見えづらさなどの症状を認めることがあります。
それらの症状があれば原因を調べる必要があります。
このように、結膜下出血自体は目が赤い以外の自覚症状がないことも多く、あっても軽い異物感を認める程度です。

結膜下出血の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、眼科です。
結膜下出血は眼の結膜下に出血が起こる症状であり、眼科で診断と治療が行われています。

結膜下出血の検査・診断

結膜下出血は細隙灯顕微鏡検査で検査および診断を行います。
結膜下出血が視力や眼圧に影響を与えることはほとんどありませんが、結膜下出血のほかに症状があれば、視力検査や眼圧検査、眼底検査などを行い、結膜下出血の原因を調べることがあります。
特に、外傷に伴う結膜下出血は骨折の有無が予後に大きく関わります。
そのため、緊急でCTなど画像検査を行うことがあります。

また、ウイルス性結膜炎も感染症対策の観点から、他者への感染予防が重要です。
ウイルス性結膜炎を診断できる迅速診断キットを使って、診断を確定する場合もあります。
さらに、結膜下出血の診断は容易ですが、充血などほかの所見が隠れている場合があります。
特に、結膜下出血が続いていたり、繰り返したりする場合は自己判断せず検査を受けると安心です。

結膜下出血の治療

結膜下出血は数日から数週間で自然に治癒するため、特に必要な治療はありません。
しかし、中には異物感などの症状がある方もいるため、対症療法的に人工涙液や角膜保護用の点眼薬を処方します。
また、結膜下出血の原因があれば、それらに対する抗菌薬抗アレルギー薬を用います。

また、結膜下出血になりやすい人の中には、結膜弛緩症という目の病気を合併していることがあります。
点眼薬で経過観察をする場合もありますが、手術することで結膜下出血の再発防止が期待できます。
そのほかにも高血圧など結膜下出血の原因と考えられる疾患があれば、治療のために内科を受診するよう指示する場合があります。

結膜下出血になりやすい人・予防の方法

結膜下出血は原因が分からない場合も多いですが、結膜下出血になりやすい人、治りにくい人はいます。

結膜下出血になりやすい人

結膜下出血になりやすい人は、いくつか原因が考えられますが、主な原因を2つ解説します。

1つ目は結膜弛緩症がある場合です。
結膜弛緩症は、加齢とともに結膜がゆるむことで、しょぼしょぼ感など目の違和感や涙がよく出るなどの症状が起こる病気です。
原因はよくわかっていませんが、皮膚にできるシワと似たようなものと考えられています。
この結膜弛緩症は結膜下出血を繰り返す原因とされています。
結膜にあるシワが擦れると、結膜にある血管も併せて擦れるため、血管が破れやすいとされています。
結膜弛緩症による結膜下出血を減らすためには、手術によって結膜にできたシワを取り除くことが有効な場合があります。

結膜下出血になりやすい、もう1つの原因は高血圧です。
くしゃみや咳、トイレでいきむだけでも結膜下出血が生じることがあります。
これはくしゃみなどによって、血圧が一時的に上昇し、結膜にある血管が破れるためと考えられています。
そのため、もともと高血圧の方は結膜下出血が起こりやすいと考えられています。
そのため、高血圧と診断されている人はもちろん、結膜下出血になったことがある方は血圧管理を行うと発症予防に繋がります。

そのほかにも、動脈硬化や糖尿病などがあると結膜下出血が起きやすいとされています。

結膜下出血が治りにくい人

結膜下出血が治りにくい人は、大きく2つの原因が考えられます。

1つ目は抗凝固薬を内服している場合です。

抗凝固薬は血を固まりにくくする内服薬で、心房細動や心筋梗塞、心臓の手術後に用いられます。
抗凝固薬を内服していると、血液は固まりにくくなり、皮膚の内出血をしやすくなったり、結膜下出血が長引くことがあります。
しかし、結膜下出血が長引くために内服を中止する必要はありません。
徐々に結膜下出血は吸収されるため、そのまま経過観察を行います。

もう1つは白血病などによって血が固まりにくくなっている場合です。
白血病の方の血液は固まりにくくなることがあり、結膜下出血の症状が出る場合があります。
白血病と診断されている場合は特に内科などの受診は不要です。
しかし、そのような診断を受けていないにもかかわらず、結膜下出血がなかなか治らない場合は原因を調べるために内科を受診すると安心です。

このように結膜下出血は多くが問題になりませんが、時に高血圧や白血病などの病気が隠れている場合があります。
結膜下出血を繰り返したり、なかなか治癒しない場合は眼科医に相談するだけでなく、内科などの受診をしてもらう場合があります。


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