監修医師:
柳 靖雄(医師)
アレルギー性結膜炎の概要
アレルギー性結膜炎は、外部からの異物に体が過剰に反応して生じる免疫システムの異常反応です。この症状には、目のかゆみ、充血、腫れなどがあります。
現代社会では、環境の清潔化に伴い、身体の防御機構が本来無害な物質まで反応することが増え、アレルギー性の疾患が増加しています。
結膜は目を保護する役割を担っており、空気中の粒子と直接接触します。したがって、ハウスダストや花粉などのアレルゲンに晒されることが多く、これらが原因でアレルギー性結膜炎が引き起こされます。10代に多く発症することが知られており、年齢が高くなるにつれて発症頻度は減少します。
アレルギー性結膜炎の主な特徴は、目の強いかゆみであり、これはほかの結膜炎、例えばウイルス性や細菌性と区別される重要なポイントです。
感染性の結膜炎が急性かつ短期間であるのに対し、アレルギー性結膜炎は症状が長期間にわたり繰り返されることが特徴です。毎年同じ時期に症状が現れる季節性のパターンを示すこともあります。
アレルギー性結膜炎の原因
アレルギー性結膜炎は、外部からのアレルゲンに対して身体が過敏に反応することによって起こります。
主に、花粉やハウスダストなどの粒子が目の表面、特に結膜に接触することで、アレルギー反応が引き起こされます。この疾患は、異物感やかゆみ、充血、そして涙や目やにの分泌などの自覚症状を伴います。これらの症状は、体内の免疫システムがアレルゲンを排除しようとする過程で、ヒスタミンなどの化学物質が放出されるためです。ヒスタミンは炎症を引き起こす主要な因子であり、結膜の赤みや腫れ、痒みを引き起こします。
季節性アレルギー性結膜炎は特定の季節に現れることが多く、スギやヒノキなどの花粉が原因であることが多い傾向があります。対照的に、通年性アレルギー性結膜炎は、ダニやハウスダストなど一年中接触する可能性のあるアレルゲンによって引き起こされるため、季節に関係なく症状が現れることがあります。
重症のケースでは、春季カタルのように季節ごとに症状が強くなることもあります。
また、長期間にわたるコンタクトレンズ使用による刺激もアレルギー性結膜炎を引き起こす一因となることがあります。
このように、アレルギー性結膜炎は原因となるアレルゲンの種類によって多様な形で現れ、それぞれ異なる管理と治療が求められます。
アレルギー性結膜炎の前兆や初期症状について
アレルギー性結膜炎の前兆や初期症状は、主に目やまぶたにかゆみが生じることから始まります。このかゆみが現れた際、多くの方は無意識に目をこする行動をとることがありますが、これが症状を悪化させることにつながる場合があります。
目をこすることで、痛みを伴うゴロゴロとした感覚が出現し、これがさらに進行すると結膜の充血やまぶたの赤みと腫れが目立ち始めます。症状が表れた場合は、眼科を受診しましょう。
アレルギー性結膜炎の検査・診断
アレルギー性結膜炎の検査や診断には、目の症状と患者さんの訴えを詳細に調査することが基本です。具体的には、目のかゆみ、充血、目やにの有無などが重要な指標となります。これらの症状から予備的な診断を立てることは可能といわれていますが、さらに精確な診断を目指す場合にはいくつかの検査が行われます。
その一つが、結膜から上皮細胞を採取し、顕微鏡で好酸球の有無を確認することです。好酸球はアレルギー反応に特有の炎症性細胞であり、これの確認によりアレルギー性結膜炎の確定診断につながります。しかしながら、これはやや侵襲的な方法であり、実際の臨床ではほかの手段も用いられます。
アレルギー性結膜炎の治療
アレルギー性結膜炎の治療には、主に薬物療法が用いられます。この疾患の治療で中心となるのは抗アレルギー作用を持つ点眼薬です。これには、ヒスタミンH1拮抗点眼薬とメディエーター遊離抑制点眼薬の二種類があり、それぞれが異なる作用機序を持ちます。ヒスタミンH1拮抗点眼薬は、かゆみの原因であるヒスタミンの作用を直接阻止するため、症状が強い際に有効です。一方、メディエーター遊離抑制点眼薬はヒスタミンの放出を抑制し、炎症を軽減しますが、効果が現れるまでには時間がかかるため、症状の出現前に使用を開始する必要があります。
花粉が原因の場合には、症状が現れる季節の始まりに合わせて事前に点眼薬の使用を開始する初期療法が推奨されます。これにより、症状の発生を予防または軽減させることができます。また、症状が重い場合にはステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬が用いられることもありますが、これらは副作用のリスクもあるため、定期的に眼圧や視力などを眼科でチェックしながら使用する必要があります。
加えて、目薬だけではコントロールできない重症のケースでは、抗アレルギー薬の内服や、ステロイド薬の結膜への注射などが検討されることもあります。最終的な治療法として、アレルギーそのものに対処するためのアレルゲン免疫療法があり、これは舌下免疫療法や皮下注射法として行われ、特定のアレルゲンに対する体の反応を減らすことを目的としています。
これらの治療法は、それぞれの患者さんの症状やアレルゲンに応じて適切に選択・調整されるべきであり、眼科専門医の診察と指導のもとで行われることが重要です。
アレルギー性結膜炎になりやすい人・予防の方法
アレルギー性結膜炎になりやすい人や予防方法について以下で詳しく解説します。
季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)
花粉が原因のアレルギー性結膜炎を予防するためには、花粉の季節に特有の対策を講じることが有効です。症状の発生を抑えるためには、花粉が目に入らないようにする工夫が必要です。花粉防止用の眼鏡やゴーグルの着用は、直接的な花粉の侵入を防ぐのに役立ちますし、ひさしのある帽子を併用することでさらに保護効果を高めることができます。
また、外出を控えるか、外出する際はマスクを着用して顔への花粉の付着を抑えることも重要です。家に帰った後には、衣類や髪の毛に付着した花粉をしっかり払い落とし、うがいや洗顔をすることで、花粉による刺激から目を守ることができます。
さらに、洗眼を行う際には防腐剤の入っていない洗眼剤を使用し、目に入った花粉を洗い流すことが推奨されます。これらの予防策を適切に行うことで、花粉によるアレルギー性結膜炎のリスクを減らすことができます。
通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストアレルギー)
ハウスダストが原因で発生するアレルギー性結膜炎を予防するためには、日常生活での細かな注意が必要です。
まず、家の中を常に清潔に保つことが重要です。なかでもホコリがたまりやすい場所の掃除はこまめに行い、排気循環式の掃除機を使って細かなホコリまでしっかりと取り除くことが推奨されます。
また、カーテンや絨毯、ぬいぐるみなどのホコリが付着しやすい物は定期的に洗浄するか、使用を控えるとよいでしょう。
さらに、室内の湿度と温度を適切に管理することでダニの繁殖を抑えることができます。湿度は50%前後、温度は20〜25度に保つとよいとされています。また、ベッドや枕にはダニ防止のカバーを使用し、定期的な洗濯も有効です。
これらの措置を講じることで、ハウスダストによるアレルギー性結膜炎のリスクを低減させることができます。日常生活の小さな工夫が、目の健康を守るために大きな効果を発揮します。
春季カタル
春季カタルはアレルギー性結膜炎のなかでも重症化しやすいタイプで、主に学童期の男子に多く見られます。
春になると花粉などの季節的なアレルゲンの影響で症状が悪化し、強いかゆみや角膜の傷、光への過敏反応が特徴です。予防のためには、アレルゲンとの接触を避けることが効果的だといわれています。
なかでも屋内でのアレルゲンの管理は重要で、部屋の中を定期的に掃除し空気清浄機を利用することで、空気中のアレルゲン濃度を低減させることができます。
また、外出から帰宅した際には、花粉やハウスダストなどを持ち込まないよう、手洗いや顔洗いを忘れずに行うことが推奨されます。外出時には、目を保護するためのサングラスの着用も有効です。
これらの方法を組み合わせることで、春季カタルのリスクを減少させ、その症状の発生や悪化の予防が期待できます。毎日の小さな心がけが、春の季節を快適に過ごすための鍵となります。