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亜急性甲状腺炎
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

亜急性甲状腺炎の概要

亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染などが原因で甲状腺に炎症が起こる病気です。症状は主に首の痛みや腫れ、発熱です。甲状腺が炎症を起こすことで、一時的に甲状腺ホルモンが多く分泌されることがあり、動悸や発汗などの症状が出ることもあります。多くの場合、炎症は数ヶ月で治まり、甲状腺機能も正常に戻りますが、稀に甲状腺機能が低下することもあります。治療は必要なく自然回復することも多いですが、症状が強い場合は消炎鎮痛剤やステロイド剤が使われます (参考文献 1, 2) 。

亜急性甲状腺炎の原因

亜急性甲状腺炎の主な原因は、ウイルス感染によるものと考えられています。多くの場合、インフルエンザや流行性耳下腺炎などの感染症に罹った後に発症します。他にも、コクサッキーウイルスや EBウイルス 、アデノウイルスなども原因となる可能性があります。また、遺伝的な要因も関連している可能性が報告されていますが、詳しいことはわかっていません (参考文献 1) 。

亜急性甲状腺炎の前兆や初期症状について

亜急性甲状腺炎は、倦怠感や軽い発熱といった風邪のような症状に続いて起こることが多いです。その後、高熱や、首の前側の痛みが起こります。痛みは耳や下あごに広がることもあります。また、一時的に甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、動悸、体重減少、発汗、といった甲状腺中毒症状と呼ばれる症状が出ます。

甲状腺中毒症状は 1~2か月間 ほど続きますが、その後炎症は収まっていきます。多くの場合は治る過程で一時的に甲状腺機能低下症が起こった後、正常となります (参考文献 1) 。

亜急性甲状腺炎の検査・診断

亜急性甲状腺炎の診断は、症状、血液検査、甲状腺超音波検査が用いられます。診断基準としては、次のようになっています。

  • 甲状腺の腫れがあり、痛みがある
  • 血液検査で炎症を示す値 (CPR または赤沈) が高い・甲状腺ホルモン (T3, T4) が高い、かつ甲状腺刺激ホルモン (TSH) が低い
  • 甲状腺超音波検査で痛みのある部位が黒っぽく見える(低エコー像)

上記の条件の中ですべて当てはまる場合は、亜急性甲状腺炎と診断される可能性が高いです。1 と 2 を満たす場合は亜急性甲状腺炎の疑いと考えられます。この診断基準を軸に、橋本病や癌などの疾患ではないことを確認しながら診断がつけられます (参考文献 3) 。

亜急性甲状腺炎の治療

亜急性甲状腺炎の治療は、主に症状を和らげることを目指します。甲状腺自体の炎症は自然に回復することが多いため、特別な治療の必要がない場合もありますが、痛みや炎症が強い場合には薬が使われます。

痛みを和らげるためには、消炎鎮痛剤(NSAIDs)が使用されます。もし 2~3日 経っても良くならない場合は、ステロイド剤が処方されることもあります。ステロイド剤は症状が落ち着くまで続け、その後徐々に減らします。

また、炎症の初期には甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることがあるため、動悸や震えといった症状を抑えるために β遮断薬 が使われることもあります。ほとんどの場合はこうした症状はあっても軽く、短期間で治まるので治療は必要でないことも多いです。炎症は数か月で治まり、甲状腺機能も正常に戻りますが、稀に甲状腺機能が低下することがあります。低下しても軽度で短い期間であり、治療せずに回復することが多いです。しかし、もし甲状腺機能低下症の症状が出る場合は甲状腺ホルモンの補充が必要になることもあります (参考文献 2) 。

亜急性甲状腺炎になりやすい人・予防の方法

亜急性甲状腺炎は比較的まれな病気で、主に30~60歳 の女性に多く見られます。男女比では、女性が男性の 約10倍 かかりやすいとされています。季節的には、夏や秋に発症が増える傾向がありますが、1年 を通じてどの季節でも発症する可能性があります (参考文献 1) 。


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