

監修歯科医師:
遠藤 眞次(歯科医師)
目次 -INDEX-
ニコチン性口内炎の概要
ニコチン性口内炎は、長期間の喫煙習慣によって引き起こされる口腔内の炎症です。
硬口蓋(こうこうがい:上あごの固い部分)の粘膜に赤い発疹が出現し、次第に白っぽく厚みを増していく特徴があります。
ニコチン性口内炎は一般的に強い痛みをともなわないため、歯科検診や他の理由で口腔内を観察するまで自覚しにくいことがあります。
人によっては食べ物や飲み物がしみる程度の症状が出ることもあります。
注意点として、ニコチン性口内炎は口腔がんへ進行するリスクがあることが挙げられます。
ニコチン性口内炎における最も重要な治療法は禁煙です。できるだけ早期に発見し、禁煙を中心に適切な治療をおこなうことで重症化の予防につながります。
気づいたときには進行していることもあるため、喫煙習慣のある人は日頃から口腔内の観察を心がけましょう。
ニコチン性口内炎の原因
ニコチン性口内炎の主な原因は、長期間にわたる喫煙です。たばこの煙に含まれる成分が複合的に作用して発症すると考えられています。
とくにニコチンには血管を収縮させる性質があり、口腔内の粘膜への血液供給を減少させます。このため、通常なら問題ないような刺激でも粘膜が傷つきやすくなり炎症が起こります。
また、たばこの熱い煙もニコチン性口内炎の一因です。喫煙時に口腔内が繰り返し高温にさらされることで、やけどの状態が続き粘膜が刺激されます。
ほかにも、たばこの煙は口腔内の乾燥につながり、唾液の分泌量が減少することで、口内炎の発症リスクが高まります。
飲酒と喫煙を同時におこなうと、たばこの発がん性物質がアルコールに溶け出し、口腔粘膜への悪影響がさらに強まるとされています。
ニコチン性口内炎の前兆や初期症状について
ニコチン性口内炎の初期症状は硬口蓋に赤い発疹が現れることです。
発疹は時間の経過とともに白色に変化し、次第に厚みを増して硬くなります。
一般的な口内炎とは異なり、ニコチン性口内炎では強い痛みが生じにくい点が特徴です。
痛みなどの自覚症状に乏しいため、歯科検診や別の理由で口腔内を観察した際などに初めて見つかることもしばしばあります。
初期症状を見逃すと粘膜の変性が進行して、びらんや潰瘍ができ、口腔がんへ進展するリスクも高まります。
このため、喫煙習慣のある方は定期的な口腔内のチェックが重要です。少しでも口腔内に赤や白い病変を見つけた場合や痛みを感じた場合は、早急に医療機関へ受診することをおすすめします。
ニコチン性口内炎の検査・診断
ニコチン性口内炎は、硬口蓋における赤みや白みをともなう発疹の有無によって診断します。喫煙習慣の有無や1日の喫煙本数、喫煙年数なども重要な判断材料となるため確認します。
口腔内の白い病変が長期間持続している、潰瘍やびらんをともなう場合はがんを懸念するため、組織の一部を採取して病理検査をおこなうことがあります。
また、CRPや白血球数など、炎症の程度を評価するための血液検査をおこなうこともあります。総たんぱくやアルブミン値の測定も全身的な栄養状態を確認するために重要です。
ニコチン性口内炎の治療
ニコチン性口内炎の治療において重要なのは禁煙です。原因となる喫煙を止めることで口腔内の環境改善を目指します。
完全に禁煙することが難しい場合でも、喫煙本数を徐々に減らすことで症状悪化の予防につながるため、まずは喫煙習慣を見直すことが大切です。
ニコチン性口内炎の経過中に口腔がんが発見された場合は、手術や放射線治療、化学療法などの治療を要することがあります。症状が長引く場合や悪化する場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
ニコチン性口内炎になりやすい人・予防の方法
ニコチン性口内炎になりやすい人は喫煙習慣がある人です。1日の喫煙本数が多く長年にわたって喫煙している、いわゆるヘビースモーカーの場合はより注意が必要です。
また、喫煙と飲酒を同時にする習慣がある人も、たばこの発がん性物質がアルコールに溶け出すため発症のリスクが高まるとされています。
ニコチン性口内炎の予防法は禁煙です。たばこをやめることで口腔内環境の改善が期待でき、発症リスクを減らせます。すぐに禁煙が難しい場合でも、喫煙本数を減らすことが重要です。
禁煙補助薬の適切な活用や禁煙外来の利用も効果的な選択肢といえます。
ほかにも、口腔内を清潔に保つことも重要な予防策です。とくに喫煙後のうがいは口腔内に付着したたばこの有害物質を洗い流し、乾燥した口腔内を潤すことに役立ちます。
そして定期的な歯科検診も予防において重要です。口腔内の変化を早期に発見することは重症化の予防になるため、喫煙習慣がある場合は日頃から口腔内を観察しましょう。
少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診することが望ましいです。
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参考文献




