

監修歯科医師:
加藤 大地(歯科医師)
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東京歯科大学卒業。日本歯科大学附属病院研修修了。都内歯科医院勤務。現在は医療法人かとう歯科勤務。日本口腔インプラント学会、日本臨床歯周病学会、近未来オステオインプラント学会、保田矯正塾。
目次 -INDEX-
先天欠如歯の概要
先天欠如歯(せんてんけつじょし)とは、生まれつき永久歯が存在しない状態です。通常、乳歯は20本、永久歯は親知らずを含めて最大32本ありますが、先天欠如歯の場合、何らかの理由で永久歯が形成されず、歯の本数が少なくなってしまいます。存在しない歯は、前から2番目の歯である側切歯や、前から5番目の歯である第二小臼歯に多いとされています。 この状態は、約10%に発症する一般的な歯の異常であり、特に女性に多く見られる傾向があります。さまざまな原因で発症しますが、遺伝的な要因が大きな役割を果たしているといわれています。 永久歯が先天的に欠如していると、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が残った状態になります。乳歯が残っても、噛み合わせなどの機能に関しては問題ありませんが、20歳前後で抜けてしまうことも少なくありません。 しかし、歯が抜けたままの状態にしていると、周辺の歯が動いたり倒れたりして、歯並びや噛み合わせを崩す要因の1つになります。それだけでなく、歯周病や顎の成長に悪影響を及ぼす場合もあるため注意が必要です。治療には、欠如した歯の位置にインプラントを埋め込む方法や、親知らずの移植、ブリッジ、義歯などがあります。 先天欠如歯は、早期の診断と治療が重要であり、専門的なチームによるアプローチが推奨されます。先天欠如歯の原因
先天欠如歯の原因は、明確には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。遺伝的要因
一般的な原因は遺伝的要因が多い傾向とされています。多くの遺伝子のなかで、以下の遺伝子の変異が関連していると考えられています。PAX9(対ボックス遺伝子9)
歯の形成に関わる遺伝子です。この遺伝子の変異は、後方の歯である臼歯の欠如と関連しているといわれています。MSX1(エムエスエックスワン)
歯や骨の成長を助ける遺伝子です。この遺伝子も先天欠如歯に関連していると考えられており、特に第二小臼歯や、親知らずである第三大臼歯の欠如と関与していると考えられています。その他の遺伝子
WNT10Aや、AXIN2などの遺伝子変異も、さまざまな先天的な歯の欠如に関与しているといわれています。家族歴
親や兄弟姉妹に先天性欠如歯がある場合は、遺伝的に同じ問題が引き継がれる可能性があります。妊娠中の環境要因
胎児の歯の形成は、母親の子宮内で行われます。そのため、以下のように妊娠中の母親の健康状態や環境が影響を与える場合があります。栄養不足
妊娠中の栄養不足が胎児の歯の発育に悪影響を及ぼす可能性があります。 特に、ビタミンDやカルシウムなど、歯の発育に重要な栄養素が不足すると、歯の形成が正常に行われない場合があるため注意が必要です。感染症
妊娠中に、風疹などのウイルス感染を発症した場合、胎児の発育全般に影響を与え、歯の形成にも影響を及ぼす可能性があります。薬物の副作用
妊娠中に抗がん剤や抗てんかん薬などの薬を飲んでいる場合は、その副作用によって、胎児の歯の発育に影響を与えることがあります。全身的要因
全身的な疾患や内分泌障害も先天性欠如歯の原因となると考えられています。例えば、甲状腺機能低下症や糖尿病などの疾患が、歯の発育に影響を与える可能性もあります。先天欠如歯の前兆や初期症状について
前兆や初期症状として、以下のようなものがみられます。歯の発育が遅れている
一般的に、乳歯から永久歯への生えかわりは、6歳頃から始まり、14歳頃に完了するといわれています。しかし、乳歯の生え変わりの時期に永久歯が見られない場合は、先天欠如歯の可能性があります。歯並びの乱れ
欠如している歯のスペースを埋めるために、欠如している歯の周囲の歯が傾くなど、歯全体のバランスが崩れる場合があります。噛み合わせの問題
歯が欠如していることによって、上下の歯の噛み合わせが悪くなり、歯で食べ物を噛み砕いて飲み込むまでの咀嚼(そしゃく)機能に影響が出ることがあります。発音が悪くなる
歯が欠如して隙間が空いていると、その隙間から空気が漏れて発音が悪くなる場面があります。前歯が欠如している場合は、サ行やタ行、ラ行の発音が悪くなる傾向があるとされています。 これらの症状を感じた場合は、すぐに(小児)歯科を受診しましょう。(小児)歯科を受診し、画像診断などを実施すれば、詳細な評価が可能です。また、評価とともに、患者さんに適した治療計画を併せて行うことができます。 早期の診断と治療によって、先天欠如歯による影響を最小限に抑えることが可能です。少しでも気になる症状がある場合は、早めに歯科医師へ相談しましょう。先天欠如歯の検査・診断
先天欠如歯の検査・診断は、主に以下の内容が行われます。口腔内検査
初期評価として歯科医師は、口腔内を直接観察し、歯の本数や配置、形状などを視診、触診をします。また、年齢と比較して、乳歯の残存の有無や、永久歯が生えてくる時期の遅れなども併せて確認します。レントゲン検査
視診や触診だけでは確認できない歯や顎の内部構造を把握するために、レントゲン検査を行う場合があります。レントゲン検査は以下のように分かれます。パノラマレントゲン
パノラマレントゲンは、口全体の歯や顎の構造を一度に撮影するため、全体的な状態を評価できます。この検査により、歯の欠如や、歯の元となる組織である歯胚(しはい)の存在、歯の位置や形状などが確認できます。デンタルレントゲン
デンタルレントゲンは、特定の歯やその周囲の組織を詳細に撮影する方法です。この検査を行うことで、それぞれの歯の状態や隣接する骨の状態を詳しく評価できます。歯科用CTスキャン
歯科用CTスキャンは、歯や顎の状態を三次元的な構造で確認できるため、詳細な評価が可能になります。先天欠如歯の治療
先天欠如歯の治療は、骨折の種類や程度、患者さんの状態に応じて、以下のように分かれます。歯列矯正治療
歯列矯正治療は、欠如した歯の位置にほかの歯を移動させることで、嚙み合わせや見た目の改善が可能です。特に、前歯の欠如がある場合には、有効な治療方法です。自分の歯を移植する
自分の歯を抜いて移植する「自家歯牙移植」を行う場合もあります。「自家歯牙移植」は、自分の歯を移植するため、身体の抵抗が起こりづらく移植後も安定しやすいなどの特徴があります。 自家歯牙移植は、不要な歯を使用する必要があるため、親知らずを移植して行う場合が多い傾向とされています。補綴(ほてつ)治療
補綴(ほてつ)治療とは、歯を失った部分に、人工的な歯を補う治療方法のことです。一般的には、ブリッジやインプラントを用います。義歯
義歯は、欠如した歯を補うためのもう1つの治療方法です。特に、複数の歯が欠如している場合や、インプラントが適用できない場合に使用されます。先天欠如歯になりやすい人・予防の方法
以下の要因に該当する場合は、先天欠如歯になりやすい傾向とされています。先天欠如歯になりやすい方の特徴
遺伝的要因
特定の遺伝子が関与していることが考えられています。そのため、家族や親戚のなかに、先天欠如歯の症状がある場合は発生しやすいため注意が必要です。性別
男性と女性を比較すると、女性の方が、先天欠如歯になりやすいといわれています。予防の方法
現時点では、先天欠如歯を完全に予防する方法はわかっていません。しかし、以下の点に注意することで、早期発見や適切な対応が可能となります。定期的な歯科検診
子どもの成長に合わせて歯科検診を受けることで、先天欠如歯の早期発見が可能となります。特に、家族に先天欠如歯がいる場合は、定期的に歯科検診を受けるようにしましょう。妊娠中の健康管理
妊娠中に、栄養バランスの取れた食事や健康的な生活習慣を意識することで、胎児の歯の発育を促すことが期待されます。関連する病気
- 外胚葉異形成
- 口唇口蓋裂
参考文献
- 小児歯科学雑誌「日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査」
- Congenitally missing teeth (hypodontia): A review of the literature concerning the etiology, prevalence, risk factors, patterns and treatment
- PAX9 and Hypodontia
- A novel mutation of MSX1 inherited from maternal mosaicism causes a severely affected child with nonsyndromic oligodontia
- Absence of mutations in the homeodomain of the MSX1 gene in patients with hypodontia
- WNT10A and isolated hypodontia




