

監修歯科医師:
石岡由理佳(歯科医師)
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明海大学歯学部歯学科を卒業後、臨床研修医を経て埼玉県内の歯科医院に勤務。その後、東京医科歯科大学大学院生体補綴歯科学分野に入学し、博士号(歯学博士)取得。現在、東京と埼玉県内の歯科医院、病院に勤務。
目次 -INDEX-
咬合性外傷の概要
咬合性外傷とは、歯のかみ合わせが原因となり歯周組織の損傷が引き起こされることです。とくにセメント質や歯根膜、歯槽骨が破壊されます。なお咬合性外傷には、一次性と二次性があります。- 一次性咬合性外傷 歯周病になっていない歯で生じる
- 二次性咬合性外傷 歯周炎が進行して生じる
一次性咬合性外傷の概要
一次的咬合性外傷は、特定の歯に過度な力が加わることによって引き起こされるものです。過度な力に歯周組織が耐え切れず、歯と歯槽骨の間にある歯根膜が広がり、歯が小さく動くようになったり、かみ合わせたときに痛みが出たりします。なお過度な力は、歯ぎしりやかみ合わせの悪い被せものを入れた場合に生じることがあります。二次性咬合性外傷の概要
二次性咬合性外傷は、歯周炎によって歯槽骨が減少することで起こるものです。歯槽骨が減少すると歯を支える力が低下し、かみ合わせたときに歯が動いたり痛んだりします。二次性咬合性外傷の場合は、通常のかみ合わせによる力でも歯周組織に損傷が生じます。咬合性外傷の原因
咬合性外傷の原因は、次のとおりです。- 歯ぎしり
- 食いしばり
- かみ合わせが悪い
- 被せものや詰めものの不具合
- 歯周病
咬合性外傷の前兆や初期症状について
一次性咬合性外傷の前兆は、かみ合わせたときに特定の歯だけが当たることです。これはかみ合わせが悪かったり、被せものや詰めものの高さが合っていなかったりすると生じます。この状態が続くと、歯が動いたり傷んだりと咬合性外傷へとつながります。また、歯ぎしりや食いしばりを自覚している方も注意が必要です。 二次性咬合性外傷は歯肉炎や歯周炎といった歯周病が進行することによって起こるため、歯周病の初期症状がある方は注意が必要です。下記のような症状がある人は、歯周病の可能性があります。- 起床時、口の中がねばつく
- 歯磨きをすると出血する
- 硬いものがかみにくい
- 口臭が気になる
- 歯肉が腫れる
- 歯肉が下がり、歯と歯の間に隙間がある
- 歯がぐらつく
咬合性外傷の検査・診断
咬合性外傷の診断には、動揺度(どうようど:歯のぐらつき具合を示したもの)とX線の検査が必要です。動揺度はピンセットを使って調べることが一般的で、歯のぐらつき具合によって下記のように判定されます。- 0度:通常
- 1度:前後にわずかに動く
- 2度:前後、左右に動く
- 3度:前後、左右、上下に動く
- 過度に咬耗している(歯が異常にすり減っている)
- 歯が病的に移動している
- 歯が破折している(歯が割れたり、欠けたりしている)
- 歯槽硬線の消失や肥厚が認められる(X線で確認できる)
- 歯根吸収が認められる(X線で確認できる)
咬合性外傷の治療
咬合性外傷の治療目的は、歯周組織の破壊を軽減しつつ、歯周組織機能を回復させることです。そのためには外傷性咬合(※)をなくし、かみ合わせを安定させることが重要です。 (※)外傷性咬合とは、歯周組織に損傷を与えるようなかみ合わせ状態のこと細菌感染に対する処置
咬合性外傷の治療で初めに行うのは、細菌感染に対する処置です。- 細菌感染に対する歯周基本治療を行う
- 炎症が落ち着いたら、ぐらつきが治まる歯もある
- ぐらつきが変わらないか大きくなるときは、咬合調整か固定を行う
咬合調整
咬合調整は外傷性咬合を正すことで、かみ合わせたときにかかる歯周組織への負担を軽減します。具体的な方法としては、必要に応じて歯を削ることです。そうすることで歯の接触関係を正し、歯にかかる負担は均等に、さらには歯軸方向へ力が伝わるようになり、歯周組織が安定へと導かれます。ただし、歯のぐらつきなど症状が認められないときは、接触している歯を全て調整する必要はありません。 また炎症があるときは、重度の外傷性咬合のみ調整します。なぜなら口内の衛生状態が悪く歯周組織に炎症のある歯が移動している場合、炎症がおさまれば正常の位置に戻ることもあるからです。 咬合調節の中でも、歯の形によって生じる外傷性咬合を修正することを歯冠形態修正といいます。たとえば歯が大きい、長さが揃っていないことにより一部の歯に負担がかかっているときに行う方法です。 歯を削ることは不可逆的な行為ですから、かみ合わせ状態を十分に検査し、患者さん本人に必要性などを説明、同意を得たうえで処置する必要があるでしょう。暫間固定
暫定固定とは、一時的に当該歯を周囲の歯とつなげることです。固定する期間は、歯周組織の破壊程度や広がりなど、状況によって異なります。暫定固定は咬合調整のみで改善しなかった咬合性外傷に用いる治療法で、次のような症状があるときに検討されるでしょう。- 歯のぐらつきが大きい場合
- 歯周炎が進み二次性咬合性外傷が起こりやすい場合
- 暫定固定の前後に咬合調整をする
- 固定装置が口腔衛生に支障をきたさないようにする
- 固定中は定期的に観察や管理(※)を行う
- 歯周組織が安定したら固定を外し、状況に応じて永久固定へと移行する (※)とくにプラークコントロールの状態、早期接触の有無、装置の破損などをチェックする
永久固定
暫定固定では強度が不十分なときには、永久固定が必要になります。ただし歯周組織の破壊が進行していて、残っている歯の支持力も低下している場合には、とくに気を付けるべき点があります。それは固定装置をつけること自体が、細菌感染や咬合性外傷の原因とならないようにすることです。固定装置を付けているときには、定期的に検査しましょう。咬合性外傷になりやすい人・予防の方法
咬合性外傷になりやすいのは、下記のような人です。- 歯ぎしりや食いしばりの癖がある人
- かみ合わせが悪い人
- 歯に被せものや詰めものがある人
- 中年期以降の人
- 喫煙する人
- 妊娠中の人
- 糖尿病の人
- 口内の衛生状態が悪い人




