

監修歯科医師:
加藤 大地(歯科医師)
不正咬合の概要
不正咬合とは、上顎と下顎の嚙み合わせが悪い状態や、歯並びが乱れている状態を指します。
不正咬合は、当人が外見を気にすることにより、心理社会的な問題に影響を及ぼし、QOLを低下させる場合があります。また、咀嚼(そしゃく)や発語をしづらい、顎関節を動かしづらい、などの不都合が生じることもあります。そのほかには、外傷のリスクや、歯磨きがしづらいことによる口臭が生じるリスク、むし歯や歯周病になるリスクなどがあることが知られています。
歯並びや嚙み合わせで悩んだら、まずは治療の要不要の相談だけでもよいので、歯科医院を受診しましょう。そのうえで、治療をするかどうか、治療する場合には、実際に治療をする病院や開始のタイミングなどを検討してください。
不正咬合の原因
不正咬合の原因には、先天的なものと後天的なものがあります。
先天的な原因としては、上下の顎の大きさや位置の発育の差、歯槽(歯が埋まり込む顎骨の穴)の異常による歯の過剰な傾きや突出、咬み合わせに必要な筋肉や舌の力のバランスの乱れなどがあります。
後天的なものとしては、乳幼児期の指しゃぶりや口呼吸などの習慣、顎関節や顎骨の外傷や感染による炎症、むし歯や歯周病による歯の喪失などがあります。
不正咬合の前兆や初期症状について
不正咬合は、以下の6種類に分類されます。
- 「叢生(そうせい)」
歯の大きさに対し、生えるスペースが不足することで、歯列がガタガタになる状態。 - 「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」(出っ歯)
下顎の位置に比べて上顎が突出している状態。 - 「空隙(くうげき)」(すきっ歯)
歯間の隙間が大きい状態。 - 「開咬(かいこう)」
奥歯を噛んだときに上下の何本かの前歯が接触しない状態。前歯で麺類を噛みきることができない。 - 「過蓋咬合(かがいこうごう)」
前歯の咬み合わせが深く、下の前歯が隠れて見えない状態。 - 「下顎前突」
下の歯列が上の歯列よりも前に出ている状態。
外見が気になり、心理的に問題を起こしている、咀嚼や発語機能に影響を及ぼしているなどの問題があれば、矯正歯科を扱っている歯科医院に相談することになります。治療をすべきか迷う場合には、まず医師に相談をしてから治療の検討をすることも可能です。
基本的に不正咬合の治療は保険外診療となり、一般的な総額で80~120万円程度かかるようです。ただ、骨格性不正が大きく、外科的手法が必要な場合は、一部の病院で保険診療となります。
保険適用医療機関は日本矯正歯科学会ホームページの自立支援・顎口腔機能施設リストで確認することができます。
子どもの不正咬合の治療開始時期については、早期に治療を開始することにより顎の成長をコントロールしながら歯列を矯正できる場合があります。特に反対咬合については、早期治療により、将来的な外科的手術を避けられる場合が多いです。適切な治療開始時期については、個々の不正咬合の状況によるため、まずは早い段階で歯科医院に相談することが望ましいです。
不正咬合の検査・診断
矯正歯科治療を行うためには、検査として口腔内検査、顎機能と咬合機能の検査、筋機能の検査などを行います。また、レントゲン検査で骨格的な診断を行います。そのうえで、診断、治療方針・治療計画を決定します。
治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者さんに示しながら、それぞれの患者さんに適した治療装置とその効果,治療期間、第2期治療の可能性(子どもの場合)、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。
不正咬合の治療
不正咬合の治療は、治療介入のタイミングによって、Ⅰ期治療とⅡ期治療があります。
Ⅰ期治療は永久歯列完成前の成長に余力がある子どもに対して行われ、Ⅱ期治療は永久歯列完成後にワイヤーやマウスピースを用いて行われます。
Ⅰ期治療では、成長期にある子どもの不正咬合が骨格性であれば、成長を利用した骨格性の不正の解消が試みられます。主な治療装置および治療法として以下が挙げられます。
- 床矯正装置(拡大床)
樹脂製のプレートと、歯を動かすための金属のバネでできた取り外し可能な装置。顎のアーチを広げて歯を並べるスペースを作り歯列を整えます。 - マウスピース型装置
マウスピース型の取り外しが可能な治療装置。就寝時や日中の少ない装着時間で小さなお子さまも負担なく装着できます。上顎前突(出っ歯)、反対咬合(受け口)、開咬症(前歯が咬み合わない)、それぞれの症状に適した装置があります。 - 急速拡大装置
上顎に固定し、装置中央にあるネジを調整することで歯列のアーチを広げる治療装置。歯の土台となる骨が拡大されることで、永久歯がきれいに生え揃うスペースを作ります。 - ペンデュラム
上顎に固定して、おもに出っ歯や前歯に凸凹がある子どもに使用する装置。上顎の奥歯を後方に移動させます。 - リンガルアーチ
歯の裏側のアーチに沿わせたスプリングの弾力を利用して、歯を目的の方向へ動かします。
Ⅱ期治療では、マルチブラケット装置を用います。マルチブラケット装置は金属やセラミック製のブラケットを歯に直接接着し、ワイヤーを通して歯を徐々に理想的な位置へ動かします。近年は透明な目立たないブラケットや、表の歯面ではなく裏の歯面に接着する目立ちにくい矯正装置も使われています。
また近年では、個人の歯型から作成したマウスピース型を用いた矯正が増えてきております。この治療法は、マウスピース型を歯列にかぶせて矯正するもので、治療の進行に応じて何度か作成し直して、理想の歯列へ矯正していきます。本治療法のメリットとして、型が透明で目立たない、痛みや違和感を感じづらい、装着時に話しづらかったり、滑舌が悪くなったりすることが少ない、などが挙げられます。
わずかな骨格性不正ならば、歯の移動によってカモフラージュして治療することが可能です。しかしその程度が著しく大きい場合は、顎変形症といい、一般的な矯正治療が難しくなり、外科的矯正治療が行われます。具体的には、下顎が前に出ている、顎が横にずれて顔が曲がっている、下顎が小さく後ろに下がっている、上下の歯が嚙み合わず、隙間が空いている、などの状態により、咀嚼や嚥下、発音や呼吸に支障が出ている場合が対象となります。最初に矯正治療(術前矯正治療)を行い、連携医療機関であごの骨の手術をします。その後、矯正治療(術後矯正治療)をし、かみ合わせを安定させるために保定を行います。矯正治療は矯正歯科が、顎矯正手術は形成外科や口腔外科が担当し、各科が連携しながら治療を行います。
不正咬合になりやすい人・予防の方法
後天的な原因とされている、乳幼児期の指しゃぶりや口呼吸などの習慣、顎関節の外傷や感染による炎症、むし歯や歯周病による歯の喪失などを避けることが、不正咬合の予防になる可能性があります。
関連する病気
- 顎関節症(Temporomandibular Joint Disorder
- TMJ)
- 歯周病(Periodontal Disease)
- 噛み合わせによる顎の変形(Temporomandibular Joint Displacement)
- 頭痛(Tension Headaches)
- 歯の摩耗や裂け目(Dental Wear or Cracks)




