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口腔カンジダ症
大津 雄人

監修歯科医師
大津 雄人(歯科医師)

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東京歯科大学歯学部卒業。東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学)修了。現在は大津歯科医院勤務。東京歯科大学インプラント科臨床講師。専門は口腔インプラント、インプラント周囲顎骨における骨微細構造特性解析の研究をおこなう。日本口腔インプラント学会専門医。

口腔カンジダ症の概要

口腔カンジダ症は口腔内の常在菌であるカンジダ菌という真菌(カビ)によって引き起こされ、口内の粘膜や舌に白い苔のようなものが付いたり、赤くなる紅斑が見られたりする疾患です。免疫力の低下により発症や再発を繰り返す傾向があります。

口腔カンジダ症は偽膜性と紅斑性(萎縮性)、肥厚性などに分類されます。
口腔カンジダ症が原因で口角の紅斑やびらん(ただれ)、亀裂などの口角炎が見られる場合もあります。

免疫力が低下した高齢者では、誤嚥により口腔カンジダ症による真菌が肺へ移行し、真菌性肺炎を発症する原因になることがあるため、早期の治療や予防が必要です。

健康体の若年では口腔カンジダ症を発症することはまれであり、免疫不全をきたす基礎疾患がない場合は、白血病や後天性免疫不全症候群(AIDS)などに感染している可能性があるため、早期に診断を受けることが重要です。

口腔カンジダ症

口腔カンジダ症の原因

口腔カンジダ症の原因は、カンジダ菌という真菌(カビ)の感染です。

カンジダ菌にはさまざまな種類があり、口腔カンジダ症ではCandida albicansが原因菌となる場合が多いと報告されています。

口腔カンジダ症は免疫力と関連しており、口内環境や健康状態の悪化によって発症します。
口の中が乾燥していたり、入れ歯(義歯)の洗浄を怠ったり、基礎疾患やその治療によって免疫力が低下したりすると、カンジダ菌が増殖し発症する原因となることがあります。

口腔カンジダ症の前兆や初期症状について

口腔カンジダ症の初期症状は、分類される種類によって大きく異なります。

偽膜性カンジダ症

偽膜性カンジダ症の初期症状では白苔(はくたい)と呼ばれるコケのような白あるいは黄色の偽膜(粘膜の表面を覆う薄い膜状の構造)が見られます。

白苔はこすると簡単に剥離できますが、剥がれた後の粘膜の表面に赤みやただれ(びらん)が現われることがあります。

偽膜性カンジダ症の初期段階では痛みを感じないことが多いですが、重症になるにつれてヒリヒリするような痛みが現れる場合があります。

紅斑性(萎縮性)カンジダ症

紅斑性カンジダ症の初期症状では口内の粘膜が赤くなったり、舌乳頭(舌の表面のざらざらとした突起)が消えて赤みが現れたり、ヒリヒリとした痛みが現れます。

味覚障害をともなっている場合や入れ歯が合わないと感じている場合も、紅斑性カンジダ症が原因となっている可能性があります。

肥厚性カンジダ症

肥厚性カンジダ症は口腔カンジダ症の病変が慢性化したものです。
カンジダ菌が粘膜に入り込むことによることで、皮膚や粘膜が厚く硬くなることがあります。

口腔カンジダ症の検査・診断

口腔カンジダ症は、自覚症状があり視診で白苔や紅斑が見られ、発症のリスクとなる病歴がある場合には、これらの情報から診断を行うことがあります。
視診による診断が困難な場合には、培養検査や直接顕微鏡検査が行われます。

培養検査・直接顕微鏡検査

培養検査や直接顕微鏡検査では、口腔内の患部から採取した検体の観察を行います。

培養検査は検体に含まれる菌を増殖させて病気の原因となる菌を調べる検査であり、直接顕微鏡検査は採取した検体を顕微鏡で観察する検査です。

培養検査は結果が出るまでに時間がかかりますが、真菌の成長の早さや形状の観察に優れており、細菌の種類を特定することが可能です。
直接顕微鏡検査は、培養が不要なため結果がすぐに出ますが、技術者により精度に差が出やすいことが特徴です。

口腔カンジダ症の治療

口腔カンジダ症の治療は、重症度によって異なります。

含嗽薬(がんそうやく)を用いたうがいや義歯の洗浄の指導や抗真菌薬による外用・内服療法が選択されます。

うがい、義歯洗浄

口腔カンジダ症の治療では、ベンゼトニウム塩化物を有効成分に含む含嗽薬によるうがいが選択されます。
また義歯洗浄剤の活用も有効であり、徹底的な義歯洗浄の指導が行われます。

軽症の口腔カンジダ症は、うがいや義歯洗浄の指導だけで治癒することもあります。

抗真菌薬

うがいや義歯洗浄で改善がみられない場合、抗真菌薬の使用が検討されます。

口腔カンジダ症の治療に有効な抗真菌薬にはアゾール系のミコナゾールやイトラコナゾールや、ポリエン系のアムホテリシンBなどがあり、塗り薬や内服薬として使用します。

口腔カンジダ症は局所療法の治療効果が高いため、塗り薬による治療が第一選択です。
塗り薬の使用で症状の改善が見られない場合は、内服薬の服用による治療が検討されます。

後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症原因となるHIVに感染している場合は、抗真菌薬の内服は行わずHIV感染症の治療法である抗レトロウイルス療法を併用してカンジダ症の治療と再発予防を行います。

抗真菌薬の使用期間は1-2週間が目安ですが、症状が改善されない場合には継続して使用することもあります。

口腔カンジダ症になりやすい人・予防の方法

歯の欠損による義歯の使用や口内の乾燥・不衛生、糖尿病、がん(悪性腫瘍)、後天性免疫不全症候群(AIDS)に当てはまる人は口腔カンジダ症になりやすいことが報告されています。

口腔カンジダ症は高齢者や乳児、免疫不全の患者で起こりやすい病気です。
中でも基礎疾患の治療で日常的に服薬している高齢者は、口内の乾燥をきたしやすく義歯を装着している場合が多いことから口腔カンジダ症の発症に注意が必要です。

がんの治療のために化学療法をしている人や副腎皮質ステロイド薬を長期間使用している人も、免疫力の低下をきたしやすく口腔カンジダ症を発症しやすいと言われています。

口腔カンジダ症の予防には丁寧な歯磨きやうがいによる口内衛生の保持、義歯の消毒、禁煙をはじめとした規則正しい生活習慣を心がけることが効果的です。


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  • 免疫不全
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この記事の監修歯科医師