

監修歯科医師:
箕浦 千佳(歯科医師)
目次 -INDEX-
過剰歯の概要
通常、人間の歯は乳歯で20本、親知らずを含む永久歯で32本が生えてきます。
過剰歯とは、何らかの理由によりこれ以上の本数の歯が生えてくる状態のことです。
過剰歯は通常の歯と同様に生えてくる場合と、顎の骨の中に埋まったままの状態(埋伏過剰歯)で留まる場合があり、後者に関しては歯科でのレントゲン撮影で偶然見つかるケースも多いようです。
発生箇所はほとんどが上顎側で、特に前歯付近に多く見られますが、稀に下顎側に発生する例もあります。
過剰歯をそのままにしておくと、永久歯の邪魔になってうまく歯が生えてこなくなったり、歯並びが悪くなったりする原因となります。
性別で見ると、過剰歯は男性に多い傾向があり、また発生する本数は大半において1本のみ、または2本であり、3本以上発生することは稀です。
過剰歯を治療する場合、大人になってからの治療は、骨格が固まっていることから手術の時間が長くなる傾向があり、また術後の痛みも長くなる可能性があります。
このため、まだ骨が柔らかい子どものうちに治療することが推奨されています。
過剰歯の原因
過剰歯が発生する原因として、現状では明確な理由はわかっていません。
遺伝や環境による影響が考えられているほか、外傷などが原因で歯の芽となる歯胚が分裂したり過剰に形成されたりして起こるとされています。
過剰歯の種類
過剰歯には、その生え方や場所によって以下のように分類されます。
正中過剰歯(正中埋伏過剰歯)
正中過剰歯は、上側の前歯の間や裏側から生えてくる、またはその箇所に埋まっている過剰歯のことを指します。
歯科において正中とは顔の真ん中、すなわち上下の前歯の中心線を表します。
過剰歯の概要でも述べた通り、過剰歯の多くは上顎の正中付近に多く見られ、過剰歯の半数近くはこの正中過剰歯です。
順正過剰歯
順正過剰歯とは、生えてくる向きが通常の歯と同じである過剰歯のことです。
この場合は身体への負担や治療の難易度などの理由から、生えてきてから抜歯することが多い傾向です。
逆性過剰歯
先ほどの順正過剰歯とは反対に、通常の歯とは逆の向きに生えてくる過剰歯のことを逆性過剰歯と呼びます。
普通に生えてくる歯とは向きが逆のため、歯茎の外に出てくることはあまりなく、歯茎、骨の中に埋まっている場合がほとんどです。
そのため、抜歯の際は歯茎を切開して摘出することになりますが、他の歯に与える影響がない場合は無理に抜歯せず経過を観察することも多い傾向があります。
水平埋伏歯
顎の骨の中で水平向き、つまり横向きに存在する埋伏歯のことです。
不具合につながる場合は除去しますが、こちらも逆性過剰歯と同様に、ほかの歯や神経、血管などに影響がない場合は経過観察となります。
過剰歯の前兆や初期症状について
過剰歯は、実際に生えてくるまで目視での確認ができないため、その前兆を掴むことは難しいです。
歯の生え変わりの際、歯並びが悪い、または永久歯が生えてこない場合は過剰歯が発生している可能性があります。
特に自覚症状がなく、定期健診の際に見つかる場合が多いようです。
また、大人になってから過剰歯が見つかるケースもよくあります。
歯の生え方が気になる場合や、膿が溜まる嚢胞という症状が見られるようでしたら、歯科を受診してください。
念のため電話で対応できるか事前に聞いて受診をするようにしましょう。
過剰歯の検査・診断
過剰歯の診断には、歯科でのX線検査、CT検査が行われます。
特に埋伏過剰歯の場合は自覚症状に乏しく、画像での検査を行わないとその存在に気付かないことも多い傾向です。
過剰歯の治療
過剰歯の治療としては、余分な歯を取り除くことが一般的です。
表面に生えてきた過剰歯に対しては抜歯を行い、埋伏過剰歯に関しては切開を行って摘出を行う場合があります。
大人になってから発覚した過剰歯については、周囲の歯や神経への干渉がなく、嚢胞のような症状もなければ積極的な除去は行わず、経過観察で様子を見ます。
また、過剰歯の治療後、歯並びが気になる場合は歯列矯正を検討してもよいかもしれません。
近年、歯列矯正にはワイヤー矯正のほか、マウスピース矯正などの方法があります。
歯並びを整えたい場合は過剰歯の治療時に歯科医師に相談してみてください。
過剰歯に関連する病気
過剰歯の多くは1本のみ形成され、時に2本存在する場合がありますが、3本以上の過剰歯が発生することはほぼないとされています。
3本以上の過剰歯が見られる場合、特定の病気がもとになっていることがあります。
鎖骨頭蓋異形成症
鎖骨頭蓋異形成症、または鎖骨頭蓋形成不全症とも呼ばれるこの病気は先天性の欠損症です。
鎖骨の形成が不十分、または無形成であり、肩幅が狭くなる特徴があります。
その他の症状の一つに歯列の異常があり、多くの過剰歯が見られる場合があります。
遺伝により発症する場合と、家族性ではない突然変異によって発症する場合があり、性別による発症率の差はありません。
比較的珍しい疾患であり、発症の割合は100万人に1人とされています。
家族性大腸腺腫症
家族性大腸腺腫症は遺伝性の疾患で、小児期や青年期に多数のポリープが大腸に発生する病気です。
この病気による大腸ポリープは年齢とともに増加し、やがてがん化します。
名称に大腸とありますが、その病態は大腸に留まらず、胃や十二指腸のポリープ骨腫のほか、過剰歯も症状の1つです。
以前は家族性大腸腺腫症の合併症としてGardner(ガードナー)症候群と呼ばれることもありました。
過剰歯の治療
過剰歯の治療としては、余分な歯を取り除くことが一般的です。
表面に生えてきた過剰歯に対しては抜歯を行い、埋伏過剰歯に関しては切開を行って摘出を行う場合があります。
大人になってから発覚した過剰歯については、周囲の歯や神経への干渉がなく、嚢胞のような症状もなければ積極的な除去は行わず、経過観察で様子を見ます。
また、過剰歯の治療後、歯並びが気になる場合は歯列矯正を検討してもよいかもしれません。
近年、歯列矯正にはワイヤー矯正のほか、マウスピース矯正などの方法があります。
歯並びを整えたい場合は過剰歯の治療時に歯科医師に相談してみてください。
過剰歯に関連する病気
過剰歯の多くは1本のみ形成され、時に2本存在する場合がありますが、3本以上の過剰歯が発生することはほぼないとされています。
3本以上の過剰歯が見られる場合、特定の病気がもとになっていることがあります。
鎖骨頭蓋異形成症
鎖骨頭蓋異形成症、または鎖骨頭蓋形成不全症とも呼ばれるこの病気は先天性の欠損症です。
鎖骨の形成が不十分、または無形成であり、肩幅が狭くなる特徴があります。
その他の症状の一つに歯列の異常があり、多くの過剰歯が見られる場合があります。
遺伝により発症する場合と、家族性ではない突然変異によって発症する場合があり、性別による発症率の差はありません。
比較的珍しい疾患であり、発症の割合は100万人に1人とされています。
家族性大腸腺腫症
家族性大腸腺腫症は遺伝性の疾患で、小児期や青年期に多数のポリープが大腸に発生する病気です。
この病気による大腸ポリープは年齢とともに増加し、やがてがん化します。
名称に大腸とありますが、その病態は大腸に留まらず、胃や十二指腸のポリープ骨腫のほか、過剰歯も症状の1つです。
以前は家族性大腸腺腫症の合併症としてGardner(ガードナー)症候群と呼ばれることもありました。
過剰歯になりやすい人・予防の方法
過剰歯はその原因が明確に分かっておらず、予防は困難です。
性別で見ると女性に比べて男性に発生することが多く、また、前項で挙げた疾患を持っている場合は過剰歯の発生する可能性がそうでない人と比べて高いと言えるでしょう。
過剰歯そのものの予防は難しいですが、関連するトラブルを予防するため、過剰歯に伴う不具合を整理しておきましょう。
永久歯の成長を妨げる
永久歯が生えてくるところに過剰歯があると、永久歯の成長の邪魔になってうまく歯が生えてこないことがあります。
歯並びへの影響
上顎の前歯の間、いわゆる正中の位置に過剰歯があると、歯と歯の間に隙間ができやすくなります。
永久歯が生えて来るためのスペースに過剰歯が存在していることで永久歯が真っ直ぐに生えて来るのを妨げ、結果として歯並びが悪くなる場合があります。
歯根を傷める
過剰歯が骨の中で成長し、隣の歯に干渉することで永久歯の根を溶かしてしまうことがあります。その場合は邪魔になる過剰歯を取り除く必要があります。
嚢胞が発生する
過剰歯の周りに、嚢胞とよばれる膿の袋ができることがあります。
この嚢胞が大きくなると、痛みが出たり、周囲の歯根に悪影響が出たりする場合があります。
細菌感染のリスク
永久歯の神経が虫歯などによって失われてしまった場合、その近くに過剰歯があると、その過剰歯にも細菌が移ってしまい、過剰歯そのものが細菌感染してしまうことがあります。
顎の骨の中に埋まっている過剰歯が細菌感染すると、腫れや痛みが生じてしまいます。
まとめ
過剰歯は子どものうちに治療を行うことができれば、その後の歯並びへの影響も少なくすることができます。
過剰歯だけではなく、その他の口腔トラブルを未然に防ぐために、定期的に歯科を受診し、検査とメンテナンスを受けるようにしましょう。
関連する病気
- ガムガム症(Gardner症候群)
- クリューレー症候群(Cleidocranial dysostosis)
- 異形成症(Cleft Lip and Palate Syndromes)
- 単純性歯科異常(Simple Dental Anomalies)
参考文献




