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口内炎
本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

口内炎の概要

口内炎は、口腔内の粘膜に生じる炎症の総称です。原因や症状は多岐にわたりますが、多くの場合は痛みを伴い、食事や発音に支障がでます。2週間程度で自然治癒することがほとんどで、2週間以上治らない場合は口腔がんや難病の可能性もあるため、注意が必要です。
口は呼吸と食事を司る器官であり、粘膜が常に外部に晒されているため、感染や炎症が生じやすい部位です。通常であれば免疫力と治癒力によって口腔内の健康は保たれていますが、何らかの原因で機能が低下したときに口内炎が発症します。
口内炎ができたときは、免疫力や治癒力が落ちていると考え、生活習慣見直しのきっかけになるでしょう。

口内炎の原因

口内炎は口腔粘膜に生じる炎症の総称であるため、その原因は多岐にわたります。

一般的に見られる口内炎の主な原因は、以下の5つです。

  • アフタ性口内炎
  • カナル性口内炎
  • ウイルス性口内炎
  • カンジダ性口内炎
  • アレルギー性口内炎

それぞれの原因を確認しましょう。

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎は頻繁にみられる口内炎で、粘膜部や舌に白く膨らんだ灰白色斑(アフタ)が生じて痛みを伴います。唇を噛んで傷ついたときや、熱いもので火傷した後にできることが多いですが、ビタミン不足やストレスなどで粘膜が弱っている際にもできやすくなります。

カナル性口内炎

カナル性口内炎は、唇を噛んだり火傷による傷口から広がる口内炎です。傷口となった部分が白く変色し、アフタ性口内炎と比べて境界が不明瞭となります。舌で触ったり、辛いものを食べたりすると強い痛みが生じます。

ウイルス性口内炎

さまざまなウイルスの感染によって、口内炎の症状がでることも少なくありません。よくみられる感染症で口内炎を起こすウイルスは、以下の3つが代表的です。

  • ヘルペスウイルス
  • エンテロウイルス
  • ヘルパンギーナウイルス

ヘルペスウイルスはヘルペス性口内炎の原因となり、激しい痛みを伴う口内炎が多数できて、発熱することも少なくありません。エンテロウイルスは手足口病の原因となり、口内炎だけでなく、手や足にも湿疹が多数生じます。ヘルパンギーナウイルスは上顎から喉にかけて水疱と口内炎が多数生じ、発熱することも少なくありません。いずれも子どもがかかりやすい病気で、症状がつらい場合は速やかに医療機関を受診してください。

カンジダ性口内炎

カンジダはカビの一種で、口腔内にも感染する真菌です。真菌自体はありふれた菌類であるため多くの人が保菌していますが、通常は免疫によって抑え込まれています。ストレスや体調不良などで、免疫力が落ちたタイミングで発症します。口腔内に白い斑点や白苔が生じて、悪化すると粘膜のただれとなり、痛みや味覚障害が起こることも少なくありません。

アレルギー性口内炎

食べ物・薬物・金属などへのアレルギー反応で、口内炎となる場合もあります。食物アレルギーの場合は食後数時間以内に発症し、自然に治まります。金属アレルギーの場合は、歯科治療後の金属製の詰め物が原因となることが多く、歯科治療後に慢性的な口内炎となる場合が少なくありません。

口内炎の前兆や初期症状について

口内炎の症状は、痛みを伴う炎症がほとんどです。舌や歯が炎症部に触れるときの接触痛や、熱いものや辛いものでの刺激痛が生じて、疼痛が続く場合も少なくありません。口内炎のできる部位によっては、食事や発音の快適性が大きく低下します。

症状があった場合には、耳鼻咽喉科や歯科口腔外科を受診しましょう。

口内炎の検査・診断

口内炎の検査は、歯科医師や皮膚科医師による視診がほとんどです。炎症部の形状や口腔内以外への症状の広がりなどから、口内炎の種類を判別します。口内炎と似た症状の違う病気の可能性もあるため、疑わしい症状は詳しい検査が必要です。

口腔がんとの鑑別

口腔がんの初期症状は、口内炎と似ており、症状だけでは鑑別できない場合があります。口腔がんの半数以上は舌がんであり、舌の側面にできる口内炎は特に注意が必要です。口腔がんは自然治癒しないため、2週間以上治らない口内炎は細胞を採取して病理検査などを行います。

口腔粘膜疾患との鑑別

2週間以上治らない口内炎は、ほかの口腔粘膜疾患の可能性が高くなります。主な口腔粘膜疾患は白板症・紅板症・扁平苔癬などがあり、いずれも難治性で数年に渡って症状が持続します。アフタ性口内炎を頻繁に繰り返す場合は、ベーチェット病などの可能性を考慮して、血液検査や顕微鏡検査など詳しい検査が必要です。

口内炎の治療

口内炎の治療は、歯科・皮膚科・耳鼻咽喉科のクリニックのほか、セルフケアでできるものもあります。

口内炎の治療は、以下のような方法が代表的です。

  • 経過観察
  • 栄養補給
  • 抗炎症薬
  • 原因の除去
  • レーザー治療

それぞれの内容を解説します。

経過観察

口内炎はほとんどの場合2週間程度で自然治癒するため、経過観察が基本となります。触ると痛い部分にはなるべく触れず、刺激となる辛いものや熱いものは避けてください。口腔粘膜は乾燥に弱いため、こまめに水分補給してお口の中を潤してください。

栄養補給

口腔粘膜の健康を保つのに必要な栄養素は、ビタミンA、ビタミンB1、B2、ビタミンE、ビオチンなどです。特にビタミンB2が重要で、納豆・鶏卵・レバー・干し椎茸などとともに、バランスのよい食生活を心がけましょう。

抗炎症薬

口内炎の痛みが強い場合は、抗炎症薬で炎症を鎮めて症状を緩和します。塗り薬・貼り薬・スプレー・うがい薬などがあり、医師と相談して適切な治療薬を選択しましょう。

原因の除去

口内炎の疑わしい原因がある場合、その原因を除去する必要があります。金属アレルギーの可能性がある場合には、金属製の詰め物を取り除くことが少なくありません。噛み合わせの悪さで粘膜に物理的刺激がある場合には、歯列矯正などで治療します。

レーザー治療

口内炎にレーザーを当てて焼き切り、かさぶたのような膜をつくる治療法もあります。かさぶたが自然に剥がれた後は傷口も塞がるため、接触痛がつらい場合には有効な治療法です。

口内炎になりやすい人・予防の方法

口腔内は食べ物や空気中の細菌・ウイルスの刺激を常に受けており、免疫力と治癒力で対応しています。口腔内の機能が正常に保たれている限り、口内炎を起こすリスクは下げられるでしょう。

口腔内の機能を保って口内炎を予防するには、主に以下のポイントに気をつけましょう。

  • 口腔内を清潔に保つ
  • ビタミンB群の豊富な食事
  • 口呼吸を改善する
  • 噛み合わせや歯並びの治療

それぞれのポイントを確認しましょう。

口腔内を清潔に保つ

口腔内で細菌が繁殖すると、むし歯や歯周病だけでなく口内炎にもかかりやすくなります。毎日の歯みがき・歯間ブラシに加えて、定期的な歯科検診でクリーニングを受けましょう。

栄養の豊富な食事

口腔粘膜は常に新陳代謝を繰り返しているため、必要な栄養が不足すると口内炎が起こりやすくなります。粘膜の健康を保つビタミンA、ビタミンB群に加えて、ビタミンC、ビタミンEや、身体の材料となるタンパク質なども重要です。普段から栄養バランスの取れた食生活を心がけましょう。

口呼吸を改善する

口腔粘膜は乾燥に弱く、口腔内が乾燥すると細菌やウイルスを抑える免疫が働きにくくなります。口呼吸が癖になっていると口腔内が乾燥しやすく、口内炎だけでなくさまざまな口腔粘膜疾患の原因です。常に鼻呼吸を心がけて、水分補給でお口のなかを潤しましょう。

噛み合わせや歯並びの治療

噛み合わせや歯並びの問題があり、歯が粘膜にあたっていると口内炎を起こしやすくなります。特定の部位で口内炎を繰り返す場合には、歯並びや噛み合わせの治療が必要です。慢性的に炎症を繰り返していると、口腔がんに進行する可能性もあるため、早めに矯正歯科医院に相談してください。

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