

監修医師:
五藤 良将(医師)
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アナフィラクトイド紫斑の概要
アナフィラクトイド紫斑は「IgA血管炎」とも呼ばれる疾患で、IgAという免疫複合体が細い動脈や毛細血管に付着して炎症を引き起こす病気です。
主に小児期の男児に多く見られますが、成人以降も発症することがあり、特に高齢者では重症化しやすい傾向があります。
IgAが血管に付着する原因は不明ですが、子どもの場合は水ぼうそうやB型肝炎、A群溶血性連鎖球菌などによる上気道(のどや鼻)の感染症がきっかけとなることが多いです。
成人の場合はウイルスや細菌の内臓感染、悪性腫瘍、妊娠などが発症の要因となることがあります。
主要な症状には、皮膚の紫斑、腎炎(紫斑病性腎炎)、腹痛、関節炎などがあります。
特徴的なのは、下肢に多く見られる紫斑や強い腹痛です。
関節炎によって歩行困難になったり、腎炎によって血尿が出たりすることもあります。
診断は視診、血液検査、尿検査、画像検査、皮膚生検、腎生検などを通じておこなわれます。
治療は主に薬物療法が中心となり、腹痛が強い場合は入院が必要になることもあります。
感染症の軽快とともに症状が改善する例も多く見られますが、再発の可能性もあるため、症状が落ち着いた後も定期的な検査が必要です。
アナフィラクトイド紫斑は適切な治療と経過観察により、多くの場合良好な予後が期待できますが、特に腎症状の管理が長期間必要になります。

アナフィラクトイド紫斑の原因
アナフィラクトイド紫斑は、IgAが細い動脈や毛細血管に付着して炎症を引き起こすことで発症します。
IgAが血管に付着する正確な原因は不明ですが、小児の場合は主に上気道のウイルスや細菌の感染がきっかけとなることが多いです。
感染の原因となる病原体には、水痘ウイルスやB型肝炎ウイルス、ヒトパルボウイルスB19、A群溶血性連鎖球菌などが含まれます。
成人の場合は、ウイルスや細菌の内臓感染、悪性腫瘍、妊娠、薬剤反応なども発症の要因となることがあります。
これらの要因が複雑な免疫反応を引き起こし、血管壁へのIgAの異常沈着を促進すると考えられています。
アナフィラクトイド紫斑の前兆や初期症状について
アナフィラクトイド紫斑の初期症状として特徴的なのは、しこりのある小さな紫斑の出現です。
紫斑は、ふくらはぎや太もも、臀部、背部、腕などに複数現れます。
一部の症例では、紫斑が進行して水疱や血疱、紅斑(こうはん)、丘疹(きゅうしん)、びらん、潰瘍を形成します。
皮膚症状に加えて、足首や手首を中心とした対称性の関節炎も現れます。
特に足首の関節炎は激しい痛みを伴い、歩行困難を引き起こすケースもあります。
また、強い腹痛も特徴的な症状の一つで、嘔吐や血便、陰嚢の腫れを伴うこともあります。
むくみも現れることがあり、足首やふくらはぎ、顔面、背中などに痛みを伴って生じます。
症状が進行すると、腎炎を発症することがあります。
腎症状は紫斑の発症から数ヵ月、時には数年後に現れることもあり、主に血尿や蛋白尿として観察されます。
アナフィラクトイド紫斑の検査・診断
アナフィラクトイド紫斑の診断は、複数の検査を組み合わせておこなわれます。
血液検査では、IgAや炎症マーカー(CRPや白血球)の上昇が確認されます。
皮膚生検は、特徴的な紫斑部位から組織を採取し、顕微鏡で詳細に観察します。
アナフィラクトイド紫斑が発症している場合、皮膚へのIgAの沈着が確認されることがあります。
尿検査で血尿や蛋白尿などの異常が見られた場合、腎生検で腎臓の組織学的変化について評価します。
また、強い腹痛がある場合は、超音波検査や内視鏡検査を実施して、消化器系の状態を確認することもあります。
これらの検査結果を総合的に評価し、アナフィラクトイド紫斑の診断が確定されます。
アナフィラクトイド紫斑の治療
アナフィラクトイド紫斑の治療は症状の重症度に応じておこなわれます。
軽症の場合は経過観察のみで自然治癒することもあります。
紫斑に対しては血管強化薬や止血薬が使用され、関節痛には抗炎症薬が投与されます。
腹痛が強い場合は基本的に絶食と輸液療法がおこなわれ、改善が見られない場合はステロイド薬が使用されます。
腎炎を合併した場合はステロイド薬による治療が基本となりますが、難治性の場合はステロイド薬と免疫抑制剤の大量投与を併用することがあります。
治療の選択は症状の程度や合併症の有無によって個別に判断され、長期的な経過観察が必要となります。
アナフィラクトイド紫斑になりやすい人・予防の方法
アナフィラクトイド紫斑は、特に5〜10歳の男児に発症しやすい傾向があります。
秋から冬にかけて多く見られ、約半数の症例が紫斑病性腎炎へ移行する可能性があるため、注意深い経過観察が必要です。
(出典:難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究「IgA血管炎」)
予防法として、感染症の対策を徹底しましょう。
外出後の手洗いや手指消毒、うがいなどの基本的な衛生習慣を守ることが大切です。
また、感染症の流行時期にはマスクの着用も効果的な予防策となります。
さらに、規則正しい生活を送り、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事を心がけて、免疫力を高めることも重要です。
これらの予防策を日常的に実践することで、アナフィラクトイド紫斑の発症リスクを軽減できる可能性があります。
しかし、完全に予防することは難しいため、症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。




