皮膚アレルギー性血管炎
吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

プロフィールをもっと見る
医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

皮膚アレルギー性血管炎の概要

皮膚アレルギー性血管炎は、アレルギー反応によって皮膚の毛細血管や細動静脈などの小さな血管に炎症が起こる病気です。

皮膚白血球破砕性血管炎(ひふはっけっきゅうはさいせいけっかんえん)に含まれる病気としても知られています。

主な原因は細菌やウイルス、薬剤に対するアレルギー反応です。自己免疫疾患や悪性腫瘍にともなって生じる場合もあると知られています。

皮膚アレルギー性血管炎は内臓などにも影響を及ぼす全身性の血管炎とは異なり、皮膚に限局して血管炎が生じることや、下肢を中心に紫斑(しはん)や水疱(すいほう)などを引き起こすことが特徴です。

皮膚の痛みや痒みをともなうことが多いですが、自覚症状がほとんどないケースもあります。

皮膚アレルギー性血管炎は特異的な皮膚の病理組織がなく、他の皮膚疾患と似ているケースが多いため、診断・治療する際は、正確に鑑別することが重要です。

皮膚アレルギー性血管炎の原因

皮膚アレルギー性血管炎の原因は、「Ⅲ型アレルギー反応」が関与していると考えられています。

Ⅲ型アレルギー反応とは、体内に入った異物(抗原)と、それを攻撃するための抗体が結合した「免疫複合体」による組織損傷のことです。

皮膚アレルギー性血管炎の場合、細菌やウイルス、薬剤などが抗原として体内に侵入し、抗体がそれを攻撃する(アレルギー反応)ことで免疫複合体が作られます。その免疫複合体が皮膚の小さな血管の壁に沈着することで、炎症を引き起こすと考えられています。

他にも、自己免疫疾患や悪性腫瘍にともなって発症することも知られています。

皮膚アレルギー性血管炎は単なる皮膚の炎症ではなく、身体の免疫システムが複雑に関与して発症します。

原因不明のケースも多いため、症状が現れたときにはすみやかに医療機関へ受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

皮膚アレルギー性血管炎の前兆や初期症状について

皮膚アレルギー性血管炎の症状は、主に下肢の皮膚に紫斑として現れます。紫斑とは皮膚の下で小さな出血が起こることで現れる、紫色や赤紫色の斑点です。

じんましんのような膨れ上がった発疹や丘疹(きゅうしん:小さな盛り上がり)、皮下結節(しこり)が形成されることもあります。重症化すると、血液を含んだ水ぶくれが出現し潰瘍などの症状が現れることもあります。

なお、発熱や倦怠感、関節痛などの全身的な症状が強い場合は、皮膚アレルギー性血管炎ではなく、全身性血管炎の可能性を考慮する必要があります。

皮膚アレルギー性血管炎の検査・診断

皮膚アレルギー性血管炎は、問診や視診による臨床症状の確認に加えて、皮膚生検や血液検査によって診断します。

皮膚生検とは皮膚の一部を小さく切り取り、顕微鏡で観察する検査です。採取した組織を分析すると、血管壁に炎症の原因物質が沈着している様子が確認できます。

血液検査では白血球やCRP、血沈(けっちん)など炎症の指標となる数値の上昇が認められます。他にも、高ガンマグロブリン血症を発症していることもあります。

ただし、これらの所見は皮膚アレルギー性血管炎に特異的なものではありません。他の病気と鑑別するために複数の画像検査や尿検査など、さまざまな検査をおこなうことがあります。

これら複数の検査結果を総合的に判断し、適切な治療へと結びつけることが重要です。

皮膚アレルギー性血管炎の治療

皮膚アレルギー性血管炎はさまざまな原因によって引き起こされるため、原因に応じた治療が基本となります。

薬剤が原因であれば原因薬剤の使用を中止し、感染症が原因であれば、適切な抗菌薬などを使用して感染症に対する治療をおこないます。

下肢の病変に対しては、軽症の場合は軽く下肢を挙上させて休ませることが推奨されます。症状が重い場合や治療による症状の改善がみられない場合は、ステロイド剤の全身投与を検討します。

ただし、ステロイド剤は長期使用によってさまざまな副作用が生じる可能性があるため、使用する場合は患者の状態などを考慮し、慎重に用量を決めることが求められます。

皮膚アレルギー性血管炎になりやすい人・予防の方法

皮膚アレルギー性血管炎になりやすい特定の因子は現段階では解明されていませんが、アレルギー体質の人や特定の薬剤(ペニシリン系など)を使用している人、悪性腫瘍を患っている人などは注意が必要です。

予防方法としては、自分のアレルギー歴を把握することが重要です。過去に薬剤でアレルギー反応を起こしたことがある場合、新たな薬剤を服用する際は、副作用や異常な症状が現れないか観察しましょう。服用後に皮膚に変化が生じた場合は早めに医師に相談することが大切です。

感染症の罹患も皮膚アレルギー性血管炎のきっかけとなる可能性があるため、日頃から手洗いやうがいなどの基本的な感染対策をおこなうことも有効です。

皮膚アレルギー性血管炎の完全な予防法はまだ確立されていませんが、これらの点に注意することで、発症のリスクを減らしたり早期発見につなげたりすることができます。

紫斑や水疱、膿疱、しこりなど皮膚に気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することをおすすめします。


関連する病気

  • 皮膚白血球破砕性血管炎
  • 皮膚小血管性血管炎
  • 過敏性血管炎
  • 高ガンマグロブリン血症

この記事の監修医師

S