

監修医師:
鎌田 百合(医師)
二次性貧血の概要
二次性貧血とは、何らかの基礎疾患や外部の要因によって引き起こされる貧血です。
続発性貧血とも呼ばれ、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血のような栄養不足が原因の一次性貧血とは異なります。二次性貧血の主な原因には、慢性的な疾患や感染症、腫瘍、腎疾患、自己免疫疾患などがあります。慢性腎不全やリウマチ性疾患による赤血球産生の抑制も二次性貧血の一因です。
症状には、疲労感や倦怠感、息切れ、めまい、体重減少などが見られますが、基礎疾患の症状が前面に出ることも多く、貧血自体が見過ごされる場合があります。診断には血液検査が用いられ、ヘモグロビン値の低下や赤血球の形態異常の確認が必要です。
治療は、基礎疾患の治療が中心です。必要に応じて鉄剤の補充やエリスロポエチン製剤の使用で赤血球の生成を促進します。しかし、過剰な鉄補充はかえって有害となる場合があるため注意が必要です。二次性貧血は、基礎疾患を適切に管理することで改善が期待できるため、早期診断と適切な治療が重要です。
二次性貧血の原因
二次性貧血とは、特定の病気や状態が原因で引き起こされる貧血のことを指します。このタイプの貧血は、単独の要因ではなく、基礎疾患や外部要因によるものが多く、治療には原因の特定とその治療が重要です。以下に代表的な原因を挙げます。
| 内容 | |
|---|---|
| 慢性的な 血液喪失 |
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、小腸や大腸の腫瘍、ポリープなどが原因となることがあります。 |
| 栄養吸収不良 | 胃酸欠乏症(無酸症や低酸症)などが鉄の吸収を妨げ、貧血を引き起こすことがあります。また、過剰な亜鉛摂取が銅欠乏を引き起こし、二次性貧血や白血球減少症を引き起こすことがあります。 |
| 慢性疾患 | 腎臓の機能低下によりエリスロポエチン(EPO)の産生が減少し、貧血が進行します。また、炎症による鉄代謝の異常も関与します。 |
| 血液疾患 | 骨髄異形成症候群(MDS)では、骨髄の造血幹細胞の異常により、効果的な血液産生が行われず、貧血が進行します。 |
| 薬剤や治療の影響 | リボビリンや抗てんかん薬などが貧血を引き起こすことがあります。 |
二次性貧血は、原因となる病気や状態を治療しなければ根本的な改善は難しいです。そのため、医師の診断のもと、適切な治療計画を立てることが重要です。早期の対処が、症状の進行を抑える鍵となります。
二次性貧血の前兆や初期症状について
二次性貧血の前兆や初期症状は、一般的な貧血と共通する点もありますが、原因疾患に関連した特徴的な症状が見られる場合もあります。
まず、二次性貧血の主な初期症状は、倦怠感や疲れやすさなどです。日常的な活動でも疲労感を強く感じることが多く、これが最初のサインとなることが少なくありません。次に、顔色の悪化や皮膚の蒼白も見られます。これは、血液中のヘモグロビン量が低下し、十分な酸素が体内に供給されなくなるためです。
また、動悸や息切れも初期症状の一つです。軽い運動や階段の昇降など、通常であれば問題ない活動でも心臓が速く鼓動し、息苦しさを感じることがあります。さらに、頭痛やめまい、集中力の低下もよく見られる症状です。これらは脳への酸素供給が不足することで引き起こされます。
二次性貧血の特徴的な点として、原因疾患の症状が同時に現れることが挙げられます。例えば、慢性腎不全が原因の場合は、むくみや尿量の変化が見られます。感染症が原因の場合は、発熱や炎症の症状を伴うことが一般的です。
これらの前兆や初期症状に気づいた場合は、早めに内科を受診するのが重要です。特に、原因となる疾患の早期診断と治療が、貧血の改善と健康状態の向上につながります。
二次性貧血の検査・診断
二次性貧血は、ほかの疾患や状態が原因となって生じる貧血です。そのため、診断には基本的な血液検査だけでなく、原因となる疾患を特定するための検査も必要です。
赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の低下が貧血を示唆します。また、平均赤血球容積(MCV)や平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)の測定により、貧血のタイプを分類します。たとえば、慢性炎症に伴う二次性貧血では、MCVが正常または低下していることが多いです。
また、フェリチン値や鉄代謝マーカーの測定が重要です。二次性貧血では、体内の鉄が利用されにくくなります。そのため、体内で鉄を貯蔵するタンパク質であるフェリチン値は正常または高値を示しますが、血清鉄や総鉄結合能(TIBC)は低下する傾向があります。これにより、鉄欠乏性貧血との鑑別が可能です。
原因疾患を特定するために、慢性炎症性疾患やがんの検査が行われることもあります。具体的には、炎症マーカー(CRP、赤沈速度)の測定や、感染症が疑われる場合は病原体の特定検査が必要です。消化器系疾患が疑われる場合には、内視鏡検査や便潜血検査も実施されます。
二次性貧血の治療
二次性貧血は、慢性疾患や特定の病態が原因で発症する貧血です。治療は、基礎疾患の改善に重点を置きながら、症状を緩和することを目的としています。二次性貧血の多くは慢性疾患が原因となるため、これらの疾患を適切に管理することが重要です。例えば、炎症性疾患の場合は抗炎症薬や免疫抑制剤を使用し、炎症を抑えることで貧血が改善することがあります。
次に、鉄剤やエリスロポエチン製剤の使用が行われます。特に鉄欠乏が認められる場合は、経口または静脈注射による鉄剤の補充が必要です。慢性腎疾患やがんに関連する二次性貧血では、エリスロポエチン製剤(赤血球を増やすホルモンの補充)が用いられることがあります。
また、栄養療法も治療の一環です。バランスの取れた食事を心がけるとともに、鉄分、ビタミンB12、葉酸を十分に摂取することが推奨されます。ただし、過剰摂取はかえって健康を害する可能性があるため、注意が必要です。
二次性貧血の治療は、基礎疾患の種類や患者さんの状態によって異なるため、個別の治療が必要です。早期の診断と治療で、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。
二次性貧血になりやすい人・予防の方法
二次性貧血とは、ほかの疾患や要因が原因で起こる貧血のことです。一般的な鉄欠乏性貧血とは異なり、根本的な病気や体内環境の問題に起因します。以下では、二次性貧血になりやすい人の特徴は以下の通りです。
| 内容 | |
|---|---|
| 慢性疾患を抱える人 | 慢性腎臓病、リウマチ性疾患、がんなどの病気を持つ人は、体内で炎症が起きやすく、赤血球の生成が抑制されることがあります。 |
| 消化器系の病気がある人 | 胃潰瘍や炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)などにより、栄養吸収が妨げられる場合、貧血を引き起こすことがあります。 |
| 慢性的な感染症を持つ人 | 結核やHIVなど、体内で長期間炎症が続く感染症があると、赤血球の生成が減少します。 |
| 高齢者 | 加齢に伴い、腎臓機能の低下や栄養不足が原因で貧血が起こりやすくなります。 |
二次性貧血を防ぐには、基礎疾患の治療が重要です。慢性疾患や感染症がある場合は、医師の指示に従い適切な治療を受けましょう。また、鉄分やビタミンB12、葉酸など、赤血球生成に必要な栄養素を含むバランスの良い食事が予防に役立ちます。
さらに、定期的な健康診断で血液検査を受け、早期に異常を発見することが大切です。慢性疾患を持つ人は特に注意が必要です。適度な運動は血行を促進し、赤血球の生成を助けます。また、ストレス管理も体内環境を整えるうえで欠かせません。
関連する病気
- 慢性疾患による貧血
- 鉄欠乏症に関連する貧血
- 肝疾患に関連する貧血
- 内分泌疾患による貧血
- 悪性腫瘍による貧血
参考文献
- 二次性貧血
- NEUROLOGICAL SYMPTOMS IN POSTHEMORRHAGIC SECONDARY ANEMIA
- Reference values for hematologic laboratory tests and hematologic disorders in the aged
- A Qualitative Analysis of Program Fidelity and Perspectives of Educators and Parents after Two Years of the Girls' Iron-Folate Tablet Supplementation (GIFTS) Program in Ghanaian Secondary Schools.




