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赤芽球癆
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

赤芽球癆の概要

赤芽球癆は、体内で赤血球を作る骨髄の機能が低下し、赤血球が減少する病気です。貧血の症状として、疲れやすくなったり、動悸や息切れ、顔色が悪くなるといったことが起こります。

赤芽球癆の原因

赤芽球癆は、先天性(生まれつき)と後天性(生まれた後に発症)に分けられます。後天性赤芽球癆は、さらに急性と慢性に分かれます。

•急性赤芽球癆は突然発症し、主に薬やヒトパルボウイルスB19の感染が原因です。パルボウイルスB19は、特に子どもがかかる「りんご病」の原因ウイルスとしても知られています。

•慢性赤芽球癆は、長期間にわたる病気で、さらに「特発性(原因がわからない)」と「続発性(ほかの病気が原因)」に分けられます。続発性の主な原因としては、胸腺腫(きょうせんしゅ)という胸の中にある腫瘍、大型顆粒リンパ球白血病という血液の病気、自己免疫疾患、さらには造血幹細胞移植(骨髄移植など)に関連することもあります。

慢性赤芽球癆の原因として多いのは、原因不明の特発性(約39%)、胸腺腫に関連するもの(約23%)、リンパ球に関わる病気(約14%)、そして自己免疫疾患(約10%)です。

赤芽球癆の前兆や初期症状について

この病気の初期症状は貧血の症状と似ているため、気づきにくいことが多いです。以下が主な初期症状です。

  • 全身のだるさ
  • 体が疲れやすく、何をするにもやる気が出ない。

  • 動悸
  • 心臓がドキドキして、普段よりも速く感じることがあります。

  • めまい
  • 立ち上がったときや、急に動いたときにふらつくことがあります。

  • 息切れ
  • 少し動いただけでも息が切れて、呼吸が苦しくなることがあります。

  • 顔色が悪くなる
  • 血の気が引いたように顔が青白く見えることがあります。

これらの症状は、赤芽球癆が進行するにつれて徐々に現れてくることが多いです。最初は少しのだるさや息切れだけかもしれませんが、病気が進むと症状が悪化します。

基礎疾患がある場合

続発性赤芽球癆では、病気の原因となっている胸腺腫や自己免疫疾患の症状も現れることがあります。

特に気をつける点

赤芽球癆に特有の前兆は今のところわかっていませんが、貧血の症状が出た場合は早めに内科、血液内科で診てもらうことが大切です。また、健康診断での血液検査が、この病気を早期に発見するために重要です。

赤芽球癆の検査・診断

赤芽球癆を正確に診断するためには、血液検査や骨髄検査が必要です。

主な検査方法

1.血液検査

  • 赤血球数やヘモグロビン値の減少
  • 赤血球が少なくなっていることが確認できます。

  • 網赤血球数の減少
  • 赤血球を作る前段階の細胞である網赤血球が通常より少ないです。網赤血球数が1%未満の場合、赤芽球癆が疑われます。

  • 白血球や血小板は通常正常
  • ただし、特定の病気がある場合、リンパ球の増加が見られることがあります。

  • MCV(平均赤血球容積)
  • 赤血球の大きさを示す値で、通常は正常ですが、一部のケースでは赤血球が大きくなることもあります。

2.骨髄検査

  • 骨髄の中で赤血球を作る元となる赤芽球が極端に少なくなっていることを確認します。
  • ヒトパルボウイルスB19感染が原因の場合、大きな前赤芽球が見られることがあります。
  • 診断の手順

    • 問診
    • 貧血の症状(全身がだるい、息切れなど)の有無や、基礎疾患(胸腺腫や自己免疫疾患など)がないかを確認します。

    • 血液検査
    • 血液検査で赤血球の減少や網赤血球の減少が確認された場合、赤芽球癆が疑われます。

    • 骨髄検査
    • 骨髄検査で赤芽球の減少が見られれば、赤芽球癆と診断されます。

    • 病型診断
    • 赤芽球癆の原因となる病気を調べるために、薬や感染症などが関係しているかをさらに検査します。必要に応じて、CTやMRI、自己免疫に関わる検査などが行われます。

    他の病気との区別(鑑別診断)

    • 骨髄異形成症候群(MDS)
    • MDSも貧血の原因となる病気ですが、赤芽球癆とは異なり、赤血球以外の血球にも異常が見られることがあります。

    • 再生不良性貧血(AA)
    • AAは、赤血球だけでなく白血球や血小板も減少しますが、赤芽球癆は赤血球のみが減少します。

    • 腎性貧血
    • 腎臓の病気に伴う貧血で、腎機能の検査が必要です。

    赤芽球癆の治療

    赤芽球癆の治療は、その原因や病気のタイプ、どれくらい重いかによって異なります。大きく分けて、原因療法、免疫抑制療法、支持療法の3つがあります。

    1. 原因療法

    赤芽球癆を引き起こした原因に対して治療を行います。

    • 薬による赤芽球癆
    • 薬が原因の場合、その薬をやめることが一番大切です。多くのケースでは、薬を中止して1ヶ月以内に回復し始めます。

    • 感染症による赤芽球癆
    • ヒトパルボウイルスB19などの感染が原因の場合、感染症を治すことが優先されます。免疫が弱っている人には、免疫グロブリンという薬が使われることもあります。

    • 胸腺腫による赤芽球癆
    • 胸の中にある腫瘍(胸腺腫)を手術などで治療すると、赤芽球癆も良くなることが期待されます。

    2. 免疫抑制療法

    原因療法がうまくいかない場合や、特発性(原因不明)の赤芽球癆には、免疫の働きを抑える薬を使います。

    • シクロスポリン
    • 特発性や胸腺腫、大顆粒リンパ球白血病(だいかりゅうりんぱきゅうはっけつびょう)に効果があり、第一選択薬としてよく使われます。腎臓に負担がかかることがあるので、定期的にチェックが必要です。

    • 副腎皮質ステロイド
    • さまざまなタイプの赤芽球癆に使われますが、長期的に使用すると副作用(糖尿病、骨粗しょう症、感染症)が出ることがあるため、注意が必要です。

    3. 支持療法

    体を支えるための治療を行いながら、症状を和らげることも重要です。

    • 赤血球の輸血
    • 貧血がひどい場合、赤血球を輸血します。ただし、輸血を続けると鉄が体にたまりすぎて、心臓や肝臓に問題が起こることがあるので、定期的に鉄を減らす治療も行います。

    • 感染症予防
    • 免疫抑制療法中は、感染症にかかりやすくなるため、予防策が重要です。

    最近の研究で、赤芽球癆の患者さんの中には「STAT3」という遺伝子に変異があることがわかりました。この変異がある場合、シクロスポリンの効果が低くなることがあるため、遺伝子解析が役立つことがあります。

    赤芽球癆になりやすい人・予防の方法

    後天性赤芽球癆は、あらゆる年齢で発症する可能性があります。
    一方、先天性赤芽球癆(Diamond-Blackfan貧血)は、多くの場合1歳未満で発症します。

    現時点では、赤芽球癆を確実に予防する方法は確立されていません。これは、赤芽球癆の原因が複雑であり、まだ完全には解明されていないためです。

    参考文献

    • 赤芽球癆診療の参照ガイド改訂版作成のための ワーキンググループ.赤芽球癆診療の参照ガイド 令和 4 年改訂版(第 7 版).令和 5 年(2023 年)2 月.
    • 澤田賢一ほか) 1 科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造 .(小峰光博 主任研究者,血障害に関する調査研究班 330,2006

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