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レイノー現象
副島 裕太郎

監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)

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2011年佐賀大学医学部医学科卒業。2021年横浜市立大学大学院医学研究科修了。リウマチ・膠原病および感染症の診療・研究に従事している。日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医、日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員、日本リウマチ財団 リウマチ登録医、日本アレルギー学会 アレルギー専門医、日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー、日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医、日本温泉気候物理医学会 温泉療法医、博士(医学)。

レイノー現象の概要

レイノー現象とは、寒さや精神的なストレスにさらされたときに、皮膚の温度調節血管が過剰に反応してしまうことで起こる症状です。
主に手足の指先の血管が収縮し、血液の流れが悪くなることで、皮膚の色が変化したり、しびれや痛みを感じたりします。
レイノー現象は、以下の3つの段階を経て症状が現れます。
蒼白期
指先が冷たくなり、白っぽくなります。これは、皮膚の表面近くの血管が収縮し、血流が減少するためです。
チアノーゼ期
さらに血管収縮が進むと、指先は青紫色になります。これは、静脈血が滞留するためです。
紅潮期
血管が拡張し、血流が回復すると、指先は赤くなります。

これらの症状は、片手だけに現れることもあれば、両手に同時に現れることもあります。
また、症状の程度や持続時間は、人によって様々です。

レイノー現象の原因

レイノー現象の原因は、大きく分けて以下の2つに分類されます。
原発性レイノー現象
明確な原因となる病気はなく、血管の反応が過敏になっている状態です。
続発性レイノー現象
膠原病や動脈硬化症などの基礎疾患が原因で起こります。

原発性レイノー現象

比較的軽症で、命に関わることはほとんどありません。
人口の約3〜5%にみられると言われています。

続発性レイノー現象

膠原病、特に強皮症や混合性結合組織病に合併することが多く、これらの病気の患者さんの約90%以上にみられます。
その他にも、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発筋炎/皮膚筋炎などの膠原病や血管炎、その他の病気によって引き起こされることがあります。
[続発性レイノー現象の原因となる病気の例]
膠原病
強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発筋炎/皮膚筋炎、血管炎など
外傷
振動病など
機械的閉塞
胸郭出口症候群など
病的な血清タンパク質による病気
クリオグロブリン血症、クリオフィブリノゲン血症など
神経原性刺激
手根管症候群など
外因性血管収縮薬
抗がん剤など

レイノー現象の前兆や初期症状について

レイノー現象の前兆や初期症状としては、次のようなものがあります。

  • 指先が冷たくなる
  • 指先にしびれや痛みを感じる
  • 指先の感覚が鈍くなる
  • 指先の色が白や紫に変色する

これらの症状は、初期は軽度で、寒さにさらされたときや、精神的なストレスを感じたときなどに一時的に現れるだけの場合もあります。
しかし、症状が悪化すると、常に指先が冷たく感じたり、しびれや痛みが強くなったり、指先に潰瘍ができることもあります。

[受診の目安]

  • 上記のような症状が頻繁にみられる
  • 症状が改善しない

レイノー現象の症状がみられる場合は、循環器内科やリウマチ膠原病内科を受診するのが良いでしょう。

レイノー現象の検査・診断

レイノー現象の診断は、問診、診察、検査結果などを総合的に判断して行われます。

問診

症状
いつから、どのような時に、どの程度の頻度で起こるかなど
既往歴
膠原病・血管炎などの病気がもともとあるかどうかなど
家族歴
家族に膠原病やレイノー現象の患者さんがいるかなど
服薬歴
現在内服している薬、サプリメントなど
生活習慣
職業、喫煙歴など

診察

指先の皮膚の状態
色調、温度、潰瘍の有無など
毛細血管の状態
爪の診察など

検査

血液検査
膠原病・血管炎の有無を調べるために、抗核抗体、抗DNA抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗リン脂質抗体などの自己抗体を測定します。
爪郭毛細血管検査
爪の付け根にある毛細血管を観察する検査です。レイノー現象では、毛細血管の形が変化したり、数が減少したりすることがあります。
冷水負荷試験
冷たい水に手を浸し、症状の出現や回復までの時間、皮膚の温度変化などを測定します。
その他
必要に応じて、血管造影検査、血流検査、神経伝導検査などが行われることもあります。

レイノー現象の治療

レイノー現象の治療は、原因や症状の程度に合わせて行われます。

原発性レイノー現象の治療

原発性レイノー現象の治療は、生活習慣の改善が中心となります。
寒さ対策
特に、手足や首、頭を冷やさないように注意しましょう。外出時は、手袋や帽子、マフラーなどを着用し、体温を逃がさないように工夫することが大切です。
禁煙
ニコチンは血管を収縮させる作用があるため、喫煙はレイノー現象の症状を悪化させる要因となります。
ストレス解消
ストレスを感じると、交感神経が優位になり、血管が収縮しやすくなります。そのため、ストレスをため込まないように、リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむ、十分な睡眠をとるなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
適度な運動
適度な運動は、血行を促進し、冷え性を改善する効果があります。

レイノー現象の治療

続発性レイノー現象の治療は、原因となっている病気の治療が基本となります。

薬物療法

血管拡張薬
血管を拡張し、血流を改善する薬です。カルシウム拮抗薬、プロスタグランジン製剤、エンドセリン受容体拮抗薬などが用いられます。
抗血小板薬
血液をサラサラにすることで、血栓の形成を防ぎます。アスピリンなどが用いられます。
その他
原因となる病気に応じて、ステロイドや免疫抑制薬などが用いられることもあります。

手術療法

交感神経節ブロック
血管を収縮させる神経をブロックすることで、血流を改善します。
血管形成術: 狭窄または閉塞した血管を拡張または再建する手術です。

レイノー現象になりやすい人・予防の方法

なりやすい人

女性
男性よりも女性に多くみられます。
若年者
15歳から30歳代の若い世代に多く発症します。
寒冷地に住んでいる人
寒冷地に住んでいる人は、寒さにさらされる機会が多いため、発症リスクが高くなります。
家族にレイノー現象の患者さんがいる人
遺伝的な要因も考えられています。
膠原病などの基礎疾患を持っている人
特に強皮症や混合性結合組織病の患者さんは、レイノー現象を合併することが多いため注意が必要です。
振動工具を日常的に使用する人
振動病を発症することで、続発性レイノー現象を引き起こす可能性があります。

予防の方法

レイノー現象を完全に予防することはできませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げたり、症状の悪化を防いだりすることができます。
寒さ対策
手袋や靴下、カイロなどで保温し、特に指先を冷やさないように注意しましょう。冷たい場所に長時間いる場合は、こまめに休憩をとるようにしましょう。
ストレス解消
十分な睡眠をとり、適度な運動を行い、リラックスできる時間を作るなど、ストレスをため込まないようにしましょう。
禁煙
喫煙は血管を収縮させる作用があるため、禁煙することが大切です。

レイノー現象は、日常生活に支障をきたすこともある病気です。早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。


関連する病気

  • 全身性硬化症(Scleroderma
  • シェーグレン症候群(Sjögren's Syndrome)
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • 混合性結合組織病(MCTD)
  • 閉塞性動脈硬化症(PAD)

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