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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の概要

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせい・たはつけっかんえんせい・にくげしゅしょう:EGPA)は、全身の細い血管に炎症が生じる病気です。

以前は「アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)」または「チャーグ・ストラウス症候群(CSS)」と呼ばれていましたが、2012年の国際会議において名称変更が提案され、現在では「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)」と呼ばれています。

炎症が血管に及ぶことで、臓器や神経、皮膚、筋肉など広範囲に障害を引き起こすことが特徴です。特に好酸球と呼ばれる白血球の一種が異常に増加し、血管や周囲の組織にダメージを与えます。

初期段階ではアレルギー性鼻炎や喘息のような呼吸器症状として現れることが多く、進行すると臓器障害が見られるようになります。

国の指定難病に登録されており、令和3年度の指定難病受給者証保持者として5839例が報告されています。なお毎年約100人以上が新たに罹患していると推定されています。

(出典:難病情報センター「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)」

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因は判明していませんが、自己免疫の異常が関わっていると言われています。

免疫は体内に侵入した病原体や異物を攻撃して体を守る働きをしていますが、好酸球性多発血管炎性肉芽腫では、白血球の一部である好酸球が誤って自身の臓器などを攻撃してしまうと考えられています。

自己免疫の異常を引き起こす原因として「ロイコトリエン拮抗薬」と呼ばれる薬剤を服用してい方の発症が多くみられるため、ロイコトリエン拮抗薬が関係している可能性があると言われていますが、詳しいことは分かっていません。

また、特定の遺伝子が好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の発症リスクを高める可能性があると言われていますが、同様にはっきりしていないのが現状です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の前兆や初期症状について

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の前兆や初期症状は、多くのケースでアレルギー性鼻炎や気管支喘息の発症にともなう呼吸器症状が生じます。

アレルギー性鼻炎や気管支喘息が発症してから、3年以内に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症を発症するケースが多いといわれています。
(出典:一般社団法人 日本循環器学会「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)

アレルギー性鼻炎や気管支喘息を発症した後は、次第に好酸球が増加していき、体重減少や発熱、運動障害、腹痛などの症状があらわれるようになります。なかでも、多発性神経炎による症状が多くのケースで生じる傾向があります。

最終的には前述した症状に加え、間質性肺炎や虚血性心疾患、心筋炎、腹膜炎、関節痛、脳血管障害など、幅広い症状があらわれるのが特徴です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の検査・診断

1998年厚生省によるアレルギー性肉芽腫血管炎(名称変更前の「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」)の基準を満たしている場合に、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と診断されます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断基準は、臨床所見として気管支喘息やアレルギー性鼻炎、好酸球の増加、血管炎に伴う症状が見られるかどうかが重要なポイントです。血管炎による具体的な症状としては、以下が挙げられます。

  • 38℃以上の発熱が2週間以上の継続
  • 6ヵ月以内に6kg以上の体重減少
  • 多発性単神経炎
  • 消化管出血
  • 紫斑
  • 多関節痛や関節炎
  • 筋肉痛や筋力低下

気管支喘息やアレルギー性鼻炎→好酸球の増加→血管炎という順に発症するのが典型的な経過です。組織所見としては、好酸球浸潤をともなう細い血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎、血管外肉芽腫が見られます。

確実な診断には、前述した臨床所見の3項目と組織所見を満たす必要があります。

また、参考となる所見としては、白血球や血小板の増加、血清IgEの上昇、MPO-ANCA(自己抗体)やリウマトイド因子の陽性反応、肺浸潤陰影が挙げられます。

診断基準を満たすかどうか調べるために、下記の検査を行います。

診察

はじめに患者の症状や病歴を確認します。気管支喘息やアレルギー性鼻炎の有無、体重減少や発熱などの全身症状、多発性単神経炎や筋肉痛の有無などを聞き取ることが重要です。

聴診や触診で、気道や肺の異常音がないか、身体に紫斑が見られるかどうかも確認します。

血液検査

血液検査では、好酸球や白血球、血小板、血清IgEの数値に異常がないかを確認します。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では、これらの数値の異常な上昇が見られるのが特徴です。また、MPO-ANCA(抗好中球細胞質抗体)やリウマトイド因子が陽性かどうかの判断にも役立ちます。

画像検査

肺の状態を確認するためにレントゲンやCTでの検査を行います。好酸球が肺まで影響している際は、肺にぼやっとした影が確認でき、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断の重要な所見となります。場合によっては、他の臓器の状態を確認するためにMRIや超音波検査が行われることもあります。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療は、重症度や病期によって変わってきます。また、心臓や腎臓など、各臓器に重篤な症状が生じている場合は、臓器別の治療も必要です。

適切に治療を行うことで、6か月以内に90%以上の患者さんが寛解すると言われていますが寛解後も継続的な医療が必要になります。残りの10%は寛解はせず、症状は軽くなりますが、再発を繰り返します。
(出典:一般社団法人 日本循環器学会「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)

推奨されている治療は下記のとおりです。

プレドニゾロン

プレドニゾロンはステロイド系の薬剤で、体内で作られるホルモンの一種です。服用することで、炎症や過剰な免疫反応を抑える効果が期待できます。軽・中等度の好酸球性多発血管炎性肉芽腫においては、プレドニゾロン単独で治療することが推奨されています。事実、軽症例であれば、プレドニゾロンでの治療でほとんどの好酸球性多発血管炎性肉芽腫が寛解すると言われています。
プレドニゾロンで十分な効果が得られない場合には、免疫抑制薬との併用が検討されます。

免疫抑制薬

免疫抑制薬もプレドニゾロンと同様に、体内の過剰な免疫反応を抑える効果が期待できる薬剤です。プレドニゾロンは長期的かつ大量に服用すると副作用のリスクがあるため、プレドニゾロンの服用量を減量しなければならない場合や単独では効果が得られない場合に、免疫抑制薬が併用して使われます。

メポリズマブ

メポリズマブは、プレドニゾロンや免疫抑制薬に対する抵抗があり、治療効果が薄い場合に併用して用いられる薬剤です。メポリズマブは、好酸球の増殖や活性化を抑制する効果が期待できます。

ステロイドの使用量を減らして、副作用のリスクを軽減できることもメリットです。

免疫グロブリン大量療法

高濃度の免疫グロブリンを静脈注射で投与する治療法です。免疫グロブリン大量療法は、他の治療法で改善が見られない場合に、末梢神経障害(運動神経、感覚神経、自律神経がダメージを受けた状態のこと)の改善を目的に使われます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症になりやすい人・予防の方法

喘息やアレルギー性鼻炎をもっている人やアレルギー体質の人は、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症を発症するリスクが高まることが知られています。免疫システムが過剰に反応しやすく、好酸球の異常な増加を引き起こす可能性があるためです。

原因が解明されておらず、遺伝要因が関わっているため、完全な予防策は確立されていません。発症した場合には、医師の指示に従い、継続的に治療を続けることが大切です。


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