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巨赤芽球性貧血
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

巨赤芽球性貧血の概要

巨赤芽球性貧血とは、様々な原因により骨髄で大きな赤芽球 (赤血球のもととなる細胞) が増える貧血の1つです。巨赤芽球性貧血の原因としてはビタミンB12や葉酸の欠乏、DNA合成に干渉する薬剤などが知られています (参考文献 1, 2)。
症状としては息切れや倦怠感といった貧血症状のほかに、舌の痛み、食欲不振や下痢といった消化器症状、神経症状が巨赤芽球性貧血に特徴的とされています (参考文献 1, 3, 4)。
治療はビタミンB12や葉酸の補充が軸となります (参考文献 1, 5)。
ビタミンB12は動物性食品に、葉酸は緑黄色野菜に多く含まれるので (参考文献 6) 、これらを意識的に普段の食事に取り入れることが予防につながるといえるでしょう。

巨赤芽球性貧血の原因

巨赤芽球性貧血の原因としてはビタミンB12や葉酸の欠乏に加え、DNA合成に干渉する薬剤の使用が知られています (参考文献 1, 2) 。ビタミンB12や葉酸も DNA 合成に重要な役割を果たすことが知られています。
DNA 合成に干渉する薬剤は多くありますが、痛風に使う薬剤や胃もたれに使う薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、悪性腫瘍の治療に使う薬、抗痙攣薬などがあり、巨赤芽球性貧血の引き起こすメカニズムも様々です (参考文献 1, 2) 。
これらこれらの原因により DNA 合成が障害されると、正常な赤血球分化ができなくなり異常な巨赤芽球ができてしまい (参考文献 1, 2) 、貧血の発症につながります。
ビタミンB12が欠乏する原因としては次のようなものがあります (参考文献 1) 。

  • ビタミンB12の吸収に必要な内因子とよばれる胃から作られる物質が相対的に足りない。内因子に対する抗体ができていたり、胃を切除してしまっている人に多い。
  • 腸でうまくビタミンB12を吸収できないような要因を持っている

葉酸が足りなくなる原因には、摂取量が足りなかったり、様々な要因で吸収が障害されているなどといったものがあります (参考文献 1) 。

巨赤芽球性貧血の前兆や初期症状について

まず貧血の一般的な症状には、運動時の疲労感が増す、息切れがする、頭痛、イライラといったものがあります (参考文献 3)。
巨赤芽球性貧血の背景としては先ほど紹介したような DNA の剛性障害があるため、貧血以外にもつぎのような症状が全身に現れます (参考文献 1, 4)。

  • 舌乳頭 (舌のぶつぶつ) が萎縮して舌が赤く平らになり、痛みや味覚障害が現れるハンター舌炎
  • 食欲不振や下痢といった消化器症状
  • 神経症状:しびれや歩行困難、気分障害、認知機能、筋力低下、麻痺、寝るときに足がムズムズする (むずむず脚症候群)
    貧血の症状で困っていたり、特に巨赤芽球性貧血を疑うような症状や背景がある方は、まずは近くの内科を受診しましょう。

巨赤芽球性貧血の検査・診断

巨赤芽球性貧血の検査には次のようなものがあります (参考文献 1, 4) 。

  • 血液検査:
    血球の数値を確認して貧血の有無や大まかな赤血球の大きさを計算したり、巨赤芽球性貧血に特徴的なマーカーの値を確認します。血液を直接顕微鏡で確認することもあります。ビタミンB12や葉酸の値を測定することもあります。
  • 骨髄の検査:
    血液の成分をつくる骨髄の一部を採取して、巨赤芽球が増えていないかや、他の造血細胞の様子から巨赤芽球性貧血に特徴的な所見を探ります
  • 体内の鉄動態を調べる検査 (フェロカイネティクス)
  • ビタミンB12の吸収に関係する、抗胃壁抗体や抗内因子抗体の検査
  • ビタミンB12吸収試験

巨赤芽球性貧血の治療

巨赤芽球性貧血の原因となるビタミンB12の補充や葉酸の補充が軸となります (参考文献 1, 5)。もちろん、原因となるような薬剤が判明している場合には、それらの利用について見直しを行います。
適切な治療を行えば徐々に貧血は改善することが期待できますが、神経症状は治りが比較的遅く、後遺症として残ってしまうことがあるため、早期発見・早期治療が重要とされています (参考文献 1) 。
また、先天性の要因や手術によって胃や小腸を切除したことにより巨赤芽球性貧血になってしまった方は、継続的な治療が必要となります (参考文献 1) 。

巨赤芽球性貧血になりやすい人・予防の方法

巨赤芽球性貧血の原因を考えれば、ビタミンB12や葉酸の接種が足りない人がなりやすいといえます。ビーガンの方などで動物性食品の摂取が少ない人、他の疾患で十分な食事が摂取できない人、妊娠や溶血性貧血でビタミンB12や葉酸の必要量自体が上がっている人、胃や小腸の手術を受けた経験があったり、先天性の消化管疾患をもっている人、内因子にかかわる疾患をもっているひと、先ほど紹介したような巨赤芽球性貧血の原因となり得る薬剤を利用している人等が発症のハイリスクです (参考文献 1, 4) 。

予防としては、バランスの良い食生活、特に動物由来の食品緑黄色野菜をメニューに取り入れるのがよいのではないのでしょうか。
ビタミンB12は肉や乳製品、卵などの動物性食品、特にハマグリとレバーに多く含まれています (参考文献 6)。葉酸が多く含まれる食品は緑黄色野菜です (参考文献 6) 。ビタミンB12や葉酸が添加されているシリアルを食生活に取り入れるのも選択肢といえるでしょう。


参考文献

  • 1.小児慢性特定室病情報センター. 巨赤芽球性貧血
  • 2.UpToDate. Macrocytosis/Macrocytic anemia
  • 3.UpToDate. Patient education: Anemia overview (The Basics)
  • 4.UpToDate. Clinical manifestations and diagnosis of vitamin B12 and folate deficiency
  • 5.UpToDate. Treatment of vitamin B12 and folate deficiencies
  • 6.UpToDate. Causes and pathophysiology of vitamin B12 and folate deficiencies

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