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高尿酸血症
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科を経て現職。診療科目は総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本老年医学会老年科専門医、禁煙サポーター。

高尿酸血症の概要

高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度が高くなる状態を指します。
男女とも血中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。
成人男性の20%以上、女性の5%未満が高尿酸血症の基準に当てはまると言われています。
尿酸はプリン体の代謝産物であり、通常は腎臓を通じて尿として排泄されますが、何らかの理由で尿酸の産生が過剰になったり、排泄が低下したりすることで高尿酸血症が生じます。
高尿酸血症は、痛風関節炎(尿酸結晶が関節などに沈殿し炎症反応を引き起こす)や尿路結石(尿酸結晶が腎臓から膀胱をつなぐ尿路の間で形成される)、腎障害(尿酸結晶が腎臓に蓄積し腎機能が低下する)などの合併症を引き起こすリスクがあり、また心血管疾患のリスクも高める可能性があります。

高尿酸血症の原因

高尿酸血症の原因は、大きく分けて「尿酸の産生過剰」「尿酸の排泄低下」の二つに分類されます。
尿酸の産生過剰は、プリン体を多く含む食品(例:肉類、内臓、アルコール飲料)の過剰摂取や、特定の疾患(例:遺伝性代謝性疾患、悪性腫瘍、甲状腺機能低下症など)によって引き起こされます。
一方で、尿酸の排泄低下は、腎機能の低下や脱水、特定の薬剤(例:利尿薬、抗結核薬、免疫抑制薬など)の使用によって生じます。
また、肥満やメタボリックシンドローム、運動不足といった生活習慣も高尿酸血症の発症に関与しています。
例えば、肥満の人は、体内での尿酸の産生が増加し、同時に腎臓からの排泄が低下するため、高尿酸血症になりやすいとされています。
また、アルコールの摂取は、肝臓での尿酸の生成を促進し、腎臓での尿酸の排泄を妨げるため、高尿酸血症のリスクを高めます。
さらに、男性は女性よりも高尿酸血症のリスクが高いと言われています。その理由として、女性の体内で生成されるエストロゲンが、腎臓での尿酸排泄を促進することが挙げられます。
ただし、閉経後の女性ではエストロゲンの影響が減少するため、同年代の男性と比べて血清尿酸値の差が少なくなることが知られています。

高尿酸血症の前兆や初期症状について

高尿酸血症は無症候性のことが多く、特に初期段階では自覚症状がないことが一般的です。
しかし、血清尿酸値が高くなると、痛風発作を引き起こすリスクがあがります。
痛風発作は、特に夜間に突然発生し、関節(特に足の親指の関節)が赤く腫れ、激しい痛みを伴います。
痛風は、尿酸が体内で結晶化し、関節や周囲の組織に沈着することで引き起こされます。
これにより、激しい炎症反応が起こり、強い痛みが生じます。
また、高尿酸血症が長期間持続すると、尿路結石や腎障害を引き起こすことがあります。
尿路結石は、尿酸が腎臓や尿路で結晶化して石になることで起こります。
これにより、激しい腹痛や排尿困難が生じることがあります。
腎障害は、尿酸が腎臓の組織に沈着し、腎機能を低下させることで発生します。
高尿酸血症が疑われる際は、総合診療科や一般内科、内分泌代謝科の受診をおすすめします。

高尿酸血症の検査・診断

高尿酸血症の診断は、主に血液検査によって行われます。
血清尿酸値が7.0mg/dLを超える場合に高尿酸血症と診断されます。
ただし、尿酸値が7-8mg/dLの場合は、再検査を行い持続して尿酸値が7mg/dLであるか確認します。
また、病型分類として尿酸生産過剰型(尿酸産生量の増加)か、尿酸排泄低下型(尿中尿酸排泄能の低下)か病型分類をするために、尿中尿酸排泄量(EUA)、尿酸クリアランス(CUA)を測定することがあります。
EUA>0.51mg/kg/時の場合は尿酸過剰型、CUA<7.3ml/分の場合は尿酸排泄低下型と考えます。

合併症として尿路結石が疑われる場合には、腹部X線検査や超音波検査、CTスキャンが行われます。
腎機能の評価には血液検査(クレアチニン、尿素窒素など)や尿検査(尿蛋白、尿潜血など)が用いられます。
痛風が発生している場合、関節液の検査が行われることがあります。
この検査では、関節液を採取し、顕微鏡で尿酸結晶の存在を確認します。
これにより、痛風の診断が確定します。

高尿酸血症の治療

高尿酸血症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法が基本となります。
高尿酸血症の治療目的は、体組織への尿酸沈着を解消し、痛風関節炎や腎障害などの合併症を予防することです。
そのため、痛風関節炎を繰り返していたり、痛風結節をみとめる患者さんにおいては6mg/dL以下に維持を目標に薬物療法を行います。

無症状である無症候性高尿酸血症においては、国内のガイドラインでは腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症がある患者さんは、尿酸値が8mg/dL以上の場合を薬物治療の適応、合併症がない場合も尿酸値が9mg/dL以上の場合を薬物治療の適応としています。
米国のガイドラインでは無症候性高尿酸血症には薬物治療の基準がないため、治療を急がず生活指導のみで経過観察することも多いようです。

生活習慣の改善には、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、プリン体を多く含む食品やアルコールの摂取を控えることが推奨されます。
また、適度な運動と体重管理も欠かせません。
さらに、水分を多く摂取して尿量を増やすことで、尿酸の排泄を促進することが効果的です。
これまでの研究では、ビタミンCやDASH食(高血圧予防食)、地中海食、果物、大豆食が尿酸値の低下に寄与することが示されています。
加えて、乳製品やコーヒーの摂取が痛風のリスクを減らす可能性も指摘されています。

薬物療法には、尿酸生成抑制薬(例:アロプリノール、フェブキソスタットなど)や尿酸排泄促進薬(例:プロベネシド、ベンズブロマロン、ドチヌラドなど)が用いられます。
尿酸生成抑制薬は尿路結石を生じやすい人に用いられることが多いです。
薬物療法を開始する際には、副作用のリスクを考慮し、定期的な血液検査や尿検査で状態をモニタリングすることが重要です。

高尿酸血症になりやすい人・予防の方法

高尿酸血症になりやすい人には、遺伝的要因を持つ人、肥満やメタボリックシンドロームを有する人、アルコールを多く摂取する人、プリン体を多く含む食品を好む人が含まれます。
また、慢性腎臓病や高血圧などの基礎疾患を持つ人も、高尿酸血症のリスクが高まります。

予防のためには、バランスの取れた食事を心がけ、アルコールの摂取を控えること、適度な運動を習慣化し、体重管理を行うことが重要です。
具体的には、プリン体を多く含む食品(例:肉類、内臓、魚卵など)の摂取を制限し、特にビールの摂取を控えることが推奨されます。
また、適度な運動を行い、体重を適正範囲に保つことで、インスリン感受性を改善することが大切です。
さらに、水分を十分に摂取し、尿量を2000ml以上に保つことで、尿酸の排泄を促進し、尿路結石の予防にもつながります。

高尿酸血症の予防や管理には、日々の生活習慣を見直し、継続的に改善することが求められます。
一度にすべてを変えるのではなく、少しずつ無理のない範囲で改善を続けることが効果的です。
たとえば、最初はアルコールの摂取を減らすことから始め、次に運動を取り入れるなど、段階的に取り組むと無理なく習慣化できます。
また、家族や友人のサポートを受けながら進めると、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。

さらに、定期的に健康診断を受けることで、早期発見と早期治療が可能になります。
高尿酸血症が発見された場合は、医師の指導に従い、適切な治療と生活習慣の改善を行うことが重要です。

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