

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
急性胆管炎の概要
急性胆管炎とは、胆汁を運ぶ「胆管」に閉塞と感染が生じた状態です。
胆汁には、脂肪を乳化する作用があり、食物の消化を助けるうえで重要な働きを持ちます。胆汁は肝臓で作られて十二指腸へと運ばれますが、その通り道となる長さ10cm太さ0.5cmほどの細長い管が胆管(肝外胆管)です。
急性胆管炎は、胆管にできた結石や腫瘍が主な原因となって発症します。胆管が詰まり胆汁の流れが悪くなることで、胆管内の圧力が上がりやすくなり、そこに腸内細菌などの一部が感染すると、強い炎症を起こすことがあります。
急性胆管炎の典型的な症状は、発熱や腹痛です。皮膚や白目が黄色くなる「黄疸(おうだん)」がみられることも多いです。
急性胆管炎の発見や治療が遅れると、胆管内で増加した細菌やその毒素が血液内にも侵入し、「敗血症」と呼ばれる状態に陥るリスクが高まります。敗血症を発症すると、意識障害やショック状態をきたし、致命的な状態になることも珍しくありません。そのため、急性胆管炎はできるだけ速やかな治療開始が求められる疾患と言えます。
急性胆管炎の治療では、抗菌薬を用いた薬物療法や、胆管内で滞る胆汁を体外へ排出させるための治療がおこなわれます。原因として結石や悪性腫瘍を認める場合には、初期治療の後にそれらに対する治療がおこなわれます。

急性胆管炎の原因
急性胆管炎は、胆汁の流れが悪くなることで発症します。
胆汁の流れが悪くなる原因には、結石(肝内結石、総胆管結石)、悪性腫瘍(乳頭部がん、胆管がん、膵頭部がん)、胆管狭窄などの疾患が挙げられます。
さまざまな原因によって胆汁の流れが悪くなると、胆管内の圧力が上昇します。さらに、本来無菌状態であるはずの胆管に腸内細菌の一部などが感染し、炎症を引き起こす可能性が高まります。
胆管の内部の圧力が高まった状態で細菌感染と炎症が広がることで、血液中にも細菌や毒素が侵入しやすくなります。
急性胆管炎の前兆や初期症状について
急性胆管炎では、発熱、腹痛、黄疸などの症状が認められます。
発熱は38℃以上の高熱となることも珍しくありません。
黄疸とは、胆汁に含まれる「ビリルビン」という物質が体内で滞り、皮膚や眼球が黄色くなる状態です。
また、腹痛は胆管の位置付近である「右側の肋骨下あたり(右季肋部)」に生じる傾向があります。
病状が悪化し敗血症を合併しているような状況では、血圧低下や意識混濁など、より重篤な症状がみられることもあります。
急性胆管炎の検査・診断
急性胆管炎の検査では、問診や身体診察、血液検査、画像検査がおこなわれます。
問診では、症状が始まった時期やこれまでの既往歴、腹痛などの自覚症状を確認します。
身体診察では、視診で黄疸の有無を確認するほか、腹部の触診などをおこないます。急性胆管炎では右側の肋骨の下あたり(右季肋部)に痛みを呈することが多いため、痛みを感じる部位を確認することも診断に役立つケースがあります。
さらに、血液検査では、炎症反応の有無や肝機能関連の数値、ビリルビンの値などを確認します。
画像検査では超音波検査や腹部CT検査がおこなわれ、胆管の狭窄の程度などが確認できるほか、急性胆管炎の原因となっている結石や腫瘍を発見できる可能性があります。
急性胆管炎の治療
急性胆管炎では、薬物療法や胆汁を排出させるための治療がおこなわれます。
初期治療として絶食のうえ輸液をおこない、点滴で抗菌薬や鎮痛薬を投与します。
これらの治療に加え、重症度に応じて胆汁を体外へ排出させる「胆道ドレナージ」が推奨されています。軽症では抗菌薬治療や支持療法で改善が見られない場合に、また中等症以上では胆道ドレナージが強く推奨されています。
胆道ドレナージは、内視鏡を用いておこなう「内視鏡的胆道ドレナージ」がもっとも一般的におこなわれています。内視鏡的胆道ドレナージでは、内視鏡を口腔内から十二指腸まで進め、カテーテルと呼ばれるチューブを胆管内に挿入して胆汁を排出させます。
まれに開腹手術やその他の方法で胆道ドレナージがおこなわれることもあります。
急性胆管炎の原因として結石や胆道の狭窄がある場合には、ドレナージと同時に結石を除去したり、狭くなっている胆道にステントと呼ばれる医療器具を留置して胆道を広げる処置をしたりすることもあります。
敗血症を発症している場合には、原因となる細菌を取り除くための抗菌薬の使用や手術がおこなわれることがあります。また、障害されている臓器の機能を代償するための支持療法がおこなわれ、状態によって人工透析や人工呼吸器管理などが考慮されます。
急性胆管炎になりやすい人・予防の方法
肝内結石や総胆管結石、乳頭部がん、胆管がん、膵頭部がん、胆管狭窄などの疾患を発症している場合には、急性胆管炎になりやすいといえます。
これらの発症者は、急性胆管炎を予防するために適切な治療と経過観察を受けることが重要です。また、急性胆管炎の原因となりうる病気があることがわかっており、突然腹痛などの症状を認める場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
急性胆管炎の原因となる結石症は、1日の総エネルギー量や動物性脂肪、炭水化物の過剰摂取、運動不足、長時間の絶食などによって発症するリスクが高まります。
そのため、生活習慣を改善することで結石症や急性胆管炎の予防に役立つケースもあります。暴飲暴食や炭水化物、動物性脂肪の過剰摂取を避け、適度な運動をするなどして規則正しい生活を心がけましょう。
極端なダイエットや急激な体重の減少なども結石症を招く恐れがあるため、単に食べる量を減らすのではなく、バランスの取れた食生活を送ることが重要です。
参考文献




