

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
胆道がんの概要
胆道がんは、肝臓で生成された胆汁の通り道である胆道に生じる悪性腫瘍の総称です。 胆道がんは、発生部位によって胆管がん(肝内胆管がんを含む)、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんに分類されます。
日本国内の胆道がんは、1年間で2万人以上診断されています。 胆道がんの発症リスクは50代から上昇し、特に70代〜80代の高齢層で多く確認されています。
原因は完全に解明されていませんが、膵胆管合流異常症(すいたんかんごうりゅういじょう)や特定の化学物質への曝露が危険因子として挙げられます。
初期段階では、黄疸、右脇腹の痛み、体重減少などの症状が現れますが、がんの発生部位によって症状の現れ方は異なります。
胆道がんの診断は、血液検査や腹部超音波検査、内視鏡検査、生検などによって実施されます。 治療法は進行度や患者の健康状態により異なります。 外科的切除が可能な場合は手術が第一選択肢となりますが、進行度が高く手術が難しいケースでは薬物療法が中心となります。 また、必要に応じて放射線治療がおこなわれることもあります。
胆道がんは手術で腫瘍を全て取り除いた場合でも、再発や腹膜播種(ふくまくはしゅ:腹膜内にがんが広がる状態)を起こす可能性があるため、手術後の定期的な検査と経過観察が欠かせません。
胆道がんの原因
胆道がんの発症メカニズムはまだ明らかになっていませんが、いくつかのリスク要因が指摘されています。 膵胆管合流異常は、胆のうがんの発症リスクを増大させることが分かっています。 また、印刷工場で使用される「ジクロロメタン」や「1,2-ジクロロプロパン」といった化学物質への長期的な曝露も、胆管がんの発生率を上昇させる可能性があります。
胆道がんの前兆や初期症状について
胆道がんの初期症状には、黄疸、右脇腹の痛み、体重減少などがあります。 がんの発生部位によって、現れやすい症状が異なります。
胆管がんの症状
胆管がんの初期症状として最も多いのは黄疸です。
胆管は、胆汁という脂肪の消化を助ける消化液を小腸に送る働きがあります。 がんによって胆管が狭くなったり詰まったりすると、胆汁の流れが妨げられ、胆汁が血液中に漏れ出します。 血液中に胆汁が漏れることで、胆汁に含まれる「ビリルビン」(古い赤血球が分解される際に発生する黄色の色素)が白目や皮膚などに沈着して黄色くなります。 また、ビリルビンが末梢神経を刺激することで、皮膚のかゆみを感じる場合もあります。
胆汁の流れがさらに悪くなると、腸内に胆汁が流れなくなり、白色便(はくしょくべん:白っぽいクリーム色の便)や褐色尿(かっしょくにょう:茶色っぽく、濃い色の尿)が見られることもあります。 その他の症状として、体重減少、腹痛、発熱、全身倦怠感が現れることもあります。
胆のうがんの症状
胆のうがんは、初期には症状が現れにくいことが特徴です。 病状が進行するにつれ、右上腹部痛、黄疸、吐き気、嘔吐、体重減少などが現れます。
乳頭部がんの症状
乳頭部がんでは、黄疸が最も多くみられます。 膵液の流れが悪くなり膵炎を発症すると、発熱や腹痛がみられることもあります。
胆道がんの検査・診断
胆道がんの診断には、血液検査や画像検査、生検などがおこなわれます。
血液検査では、胆汁の流れについて確認するために、ビリルビン値や胆道系酵素を測定します。あわせて、胆道がんの腫瘍マーカーである「CA19-9」や「CEA」も測定します。
次に、腹部超音波検査で臓器の形や状態、腫瘍の位置や広がりを調べます。胆管の狭窄や、胆汁の貯留なども確認します。また、CT検査やMRI検査によって腫瘍の場所や広がり、他の臓器への転移の有無などを確認します。
さらに、診断を確実なものにするため、超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)を用いて、胆管を含む消化管の状態を確認します。 生検もおこない、がんが疑われる組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
乳頭部がんが疑われる場合には、上部内視鏡検査(胃カメラ)が実施されることもあります。
これらの検査を組み合わせることで、確定診断がおこなわれます。
胆道がんの治療
胆道がんの治療は、がんの進行度や患者の全身状態、年齢により異なります。 主な治療法には、手術、薬物療法、放射線治療があります。
手術
がんの広がりや大きさに応じて、がん組織を可能な範囲で取り除きます。 がんの進行度や位置によっては、肝臓や膵臓の一部を切除することもあります。 患者の全身状態が手術に耐えられない場合や、肝切除後の肝機能が不十分な場合、がんが遠隔転移している場合などでは、手術が難しいと判断されます。
薬物療法
手術でがんを完全に切除できなかった場合や、再発した場合には、抗がん剤を使用した薬物療法がおこなわれます。 抗がん剤によってがんの進行を遅らせ、生存期間を延ばしたり、症状を軽減したりすることが可能です。h3:放射線治療 放射線治療は、手術後に補助的な治療が必要な場合や、手術が困難な場合に適用されます。 がんの進行を遅くしたり、痛みを和らげたりする効果が期待できる場合があります。
胆道がんになりやすい人・予防の方法
胆道がんは、肥満、糖尿病、膵胆管合流異常、原発性硬化性胆管炎がある人に発症しやすいと言われています。 特に肥満は胆石症を引き起こす要因となり、間接的にがんの発症リスクを増大させると考えられています。
予防の方法としては、禁煙や節酒、バランスの取れた食事、適度な運動、適正体重の維持、感染症の予防などが大切です。 特に喫煙は多くのがんを引き起こす要因となるため、禁煙を心がけてください。
胆道がんの早期発見のために、気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献




