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新生児肝炎
佐伯 信一朗

監修医師
佐伯 信一朗(医師)

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兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科 外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。

新生児肝炎の概要

新生児肝炎は、生後数カ月以内に発症する肝疾患であり、肝細胞の炎症や肝機能障害を引き起こします。この疾患の原因は多岐にわたり、ウイルス感染、代謝異常、遺伝的要因、自己免疫反応などが関与するとされています。主な症状としては、長期間持続する黄疸や肝腫大、肝酵素の上昇などが挙げられ、早期の診断と適切な治療が求められます。

新生児肝炎の原因

新生児肝炎の最も一般的な原因の一つはウイルス感染です。特にサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などが関与することが多く、母体からの垂直感染が主な感染経路とされています。また、先天性代謝異常も重要な要因です。ガラクトース血症やチロシン血症などの代謝疾患では、異常な代謝産物が肝臓に蓄積し、肝細胞に障害を引き起こします。さらに、遺伝的要因としては、α1-アンチトリプシン欠乏症などが新生児肝炎の発症に関連していることが知られています。

新生児肝炎の前兆や初期症状について

新生児肝炎の典型的な症状には、持続する黄疸、肝腫大、灰白色便、食欲不振、体重増加の遅れなどがあります。通常、新生児の黄疸は生理的なものであり、数日から1週間程度で消失します。しかし、新生児肝炎の場合は、黄疸が長期間続き、さらに胆汁うっ滞が伴うことが特徴です。便の色が淡くなる場合は、肝機能障害の指標とされるため、注意が必要です。

新生児肝炎の検査・診断

診断には血液検査、画像検査、病理組織検査が用いられます。血液検査では、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の上昇、ビリルビン値の異常、アルブミンの低下などが確認されます。また、ウイルス感染の有無を調べるためにPCR検査やウイルスマーカーの測定が行われます。
画像検査としては、超音波検査やMRIを用いて肝臓の構造を評価し、肝腫大や胆汁うっ滞の有無を確認します。さらに、確定診断のために肝生検が行われることもあり、肝細胞の炎症や線維化の程度を詳しく評価することができます。

新生児肝炎の治療

新生児肝炎の治療法は原因によって異なります。ウイルス性肝炎に対しては、特異的な抗ウイルス療法が適用されることもありますが、多くの場合、支持療法が中心となります。対症療法として、黄疸や肝機能障害の管理を目的とした栄養管理が重要です。高エネルギー・高タンパク質の食事を維持し、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の補充を行うことが推奨されます。
代謝異常が原因の場合は、特定の食事療法や酵素補充療法が必要になることがあります。また、自己免疫性肝炎が疑われる場合は、副腎皮質ステロイドを使用することが考慮されます。重症例では、肝移植が唯一の治療法となることもあります。

新生児肝炎になりやすい人・予防の方法

新生児肝炎のリスクが高いのは、母親がB型肝炎やC型肝炎ウイルスに感染している場合や、先天性代謝異常を持つ家系の新生児です。また、早産児や低出生体重児では肝機能が未熟であるため、肝炎のリスクが高まります。
予防策としては、妊婦のウイルススクリーニングが重要です。妊娠中にB型肝炎ウイルスのキャリアであることが判明した場合、新生児に対してB型肝炎ワクチンと免疫グロブリンを投与することで、感染を防ぐことができます。また、妊婦の栄養状態を適切に管理し、健康的な妊娠を維持することも、新生児の肝機能を守るために重要です。
新生児の健康状態をこまめに観察し、黄疸が長引く場合には早めに医療機関を受診することが推奨されます。特に便の色が淡くなる、体重増加が悪い、食欲が低下しているといった症状が見られた場合には、速やかな対応が必要です。

関連する病気

参考文献

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