膵嚢胞性腫瘍
伊藤 喜介

監修医師
伊藤 喜介(医師)

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名古屋卒業後、総合病院、大学病院で経験を積む。現在は外科医をしながら、地域医療に従事もしている。診療科目は消化器外科、消化器内科。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・消化器がん外科治療認定医、日本消化器病学会専門医、日本腹部救急医学会認定医、がん治療認定医。

膵嚢胞性腫瘍の概要

嚢(のう)胞とは体の組織内にできた閉鎖した袋(嚢)状の病変のことを指し、特に膵臓にできた嚢胞のことを膵嚢胞といいます。膵炎に伴ってできる良性の嚢胞もありますが、炎症とは関連なく発生するものを膵嚢胞性腫瘍とよびます。
腫瘍性膵嚢胞はさらにいくつかの腫瘍がありますが、今回は代表的な、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)の3種類について説明していきます。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の概要

腫瘍性の膵のう胞の中で最も多く発生するのがIPMNです。腫瘍は膵液を運ぶ膵管にできます。膵管は木の枝のように分かれており、木の幹にあたる主膵管に生じるものを「主膵管型IPMN」、木の枝にあたる分枝膵管に生じるものを「分枝型IPMN」と呼びます。のう胞の壁が腫瘍細胞で覆われており、袋の中にはネバネバとした粘液が入っていることが多くなります。
主膵管型IPMNは多くががん化することがわかっています。一方で、分枝型IPMNのがん化率は2〜3%程度であるため治療方針は異なります。

粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の概要

MCNはIPMNと同様に粘液を産生する腫瘍となります。IPMNと異なる点として、MCNの嚢胞は拡張した膵管でなく、嚢胞と膵管の交通もありません。大きくなるスピードは比較的遅いですが、嚢胞の壁にがんができることがあるため、がん化する前に治療をすることが望ましいとされています。

充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)の概要

SPNは中身が詰まった腫瘍ですが、腫瘍内で出血や壊死を起こすことで嚢胞が形成されます。腫瘍内には時に石灰化を伴うこともあります。低悪性度の腫瘍ではあるものの、稀に転移をおこすため、発見した場合には切除することが望ましいです。

膵嚢胞性腫瘍の原因

今回紹介するIPMN、MCN、SPNの原因としてわかっているものは特にありません。ただし、患者さんの特徴として以下のようなものがあります。

IPMN
中高年、男女比は2:1程度で男性に多く発生します。
MCN
若年~中年女性に多く発生します。
SPN
若年、9割程度は女性に多く発生します。

膵嚢胞性腫瘍の前兆や初期症状について

膵嚢胞性腫瘍は症状が出ないことがほとんどです。しかし、膵炎を引き起こしてしまった場合には、腹痛や背部痛といった症状が発生することがあります。また、病変によって胆管が閉塞してしまうと発熱や黄疸といった胆管炎の症状がおこります。
これらの膵嚢胞性腫瘍は小さいうちには症状から見つかることは少なく、超音波検査やCT検査を受けた際に偶然見つかることが多い疾患となります。

膵嚢胞性腫瘍の検査・診断

膵嚢胞性腫瘍を疑った場合は、以下のような検査を行うことで診断をします。

腹部超音波検査

外来や病室にて簡便に行うことができる検査であり、膵嚢胞性腫瘍を疑った場合にはまず行う検査となります。腫瘍の存在だけでなく、内部の構造まで観察することができます。膵臓は背中側にあり、膵臓の前面には胃があるため、腹部超音波検査での発見は難しい場合もあります。

腹部CT検査

腹部超音波検査で膵嚢胞性腫瘍を疑った場合には、続いてCT検査を行います。造影剤を用いてCT検査を行うことでより詳細な構造を確認できます。構造をみることで、疾患の鑑別を行うことができます。

MRI検査(MRCP)

MRIを用いて膵管や胆管の構造を観察することができます。膵管の拡張、閉塞、狭窄などを確認することができます。IPMNでは主膵管型IPMNと分枝型IPMNを見分けることに役立ちます。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

内視鏡(胃カメラに似た口から挿入するカメラ)を用いて、膵管や胆管の出口である十二指腸乳頭部から造影剤を用いて膵管の形や閉塞の程度を評価することができます。膵管の拡張、閉塞、狭窄を評価することができます。

超音波内視鏡(EUS)

内視鏡の先端から超音波検査を行うことができます。胃の壁を通して腫瘍の存在を体表からの検査より詳細に見ることができます。また、超音波をガイドとして針を刺し、内部の細胞を採取する(超音波内視鏡下穿刺吸引法:EUS-FNA)ことも可能です。採取した細胞を顕微鏡で確認することで確定診断をつけることができます。

膵嚢胞性腫瘍の治療

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の治療

IPMNの治療は主膵管型IPMNと分枝型IPMNで方針が異なります。

主膵管型IPMNは悪性(がん)の頻度が高いことから、診断がつき次第手術を行います。

分枝型IPMNでは5㎜以上で造影されるのう胞壁の壁在結節(のうほうの壁に盛り上がったできものがある)や、10㎜以上の主膵管の拡張が各種検査で見つかった場合は、悪性(がん)のリスクが高いため手術の適応となります。

これらの所見がみられない分枝型IPMNではがん化のリスクがあるため、定期的な外来受診で画像検査(超音波検査、CT検査)を3ヶ月あるいは半年毎に行い経過を見ていくこととなります。

手術となった場合は、IPMNの場所によって方法が異なります。十二指腸に近い膵頭部のIPMNに対しては膵頭十二指腸切除術などを、脾臓に近い膵尾部のIPMNに対しては膵体尾部切除術が洗濯されます。

粘液性嚢胞腫瘍(MCN)と充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)の治療

MCNやSPNは将来がん化する可能性があるため、発見された際には手術を行うことがすすめられます。IPMNと同様で、腫瘍の場所によって術式は異なります。
また、これらの腫瘍に対してはより少ない手術を選択することがあります。脾臓を温存する脾温存膵体尾部切除術や、腹腔鏡下手術、ロボット手術などは良い適応となります。

膵嚢胞性腫瘍になりやすい人・予防の方法

膵嚢胞性腫瘍にはこれといった原因は明らかになっていません。よって発生の予防をすることは難しいと考えられます。
しかし、早期発見は悪化(がん化)する前の発見、処置につながります。そのため定期的な健診の受診による画像検査は早期発見につながるため重要と考えられます。


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  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍
  • 膵管腺がん

参考文献

  • 医学書院 専門医のための消化器病学 第3版

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