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原発性胆汁性胆管炎
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

原発性胆汁性胆管炎の概要

原発性胆汁性胆管炎は、肝臓の中の胆管 (肝内胆管) が何らかのメカニズムによって自分のリンパ球によって破壊されていく疾患です(参考文献 1) 。
診断時にはほとんどの症例で無症状ですが 、病気が進行していくと胆汁の流れが滞ることによる症状や、肝機能低下による症状が出てきます (参考文献 2, 3) 。
治療では肝臓をこれ以上悪くしないための対策に加えて、原発性胆汁性胆管炎に対して効果が知られているウルソデオキシコール酸を中心とした薬物療法を行います (参考文献 4) 。
早期発見・早期治療が重要な疾患ですので、検診などで指摘された異常は放置せずに、お近くの病院を受診しましょう。

原発性胆汁性胆管炎の原因

原発性胆汁性胆管炎は主に肝臓の中にある小さな胆管 (肝内胆管) がダメージを受ける疾患です。
何らかのメカニズムによって自分のリンパ球が肝内胆管を攻撃するようになり、肝内胆管がゆっくりと破壊されていきます (参考文献 1) 。
原発性胆汁性胆管炎の原因ははっきりと分かっているわけではありませんが、遺伝要因と環境要因があることが示唆されています (参考文献 1) 。

原発性胆汁性胆管炎の前兆や初期症状について

診断時には無症状の場合が多く「血液検査の肝臓のマーカーが高い」→「原因を探していたら原発性胆汁性胆管炎が見つかる」という流れが一般的で (参考文献 2, 3) 、長期間無症状で病気が進行していると考えられます。初期症状として多いのは疲労感 (2人に1人)痒み (3人に1人) です (参考文献 2) 。黄疸の原因となることで知られているビリルビンですが、皮膚の痒みはビリルビンの血中濃度が高くなることで出てくる症状の1つです。本来は胆汁に混ざって排出されるはずのビリルビンが身体に溜まることは、胆汁の流れが滞っていることを示唆しています。
その他にも胆汁がきちんと排泄されないことによる症状として、黄疸のほか目の周りが黄色くなることがあるほか (眼瞼黄色腫) 、病状が進行すると肝障害が前面に出てきて、肝硬変や食道や胃の静脈が腫れる食道胃静脈瘤、腹水、肝臓癌が現れることがあります (参考文献 3) 。
「身体がだるい」「全身の痒みがある」という症状は軽く思われがちかもしれません。これらの症状の精査をしていくうちに原発性胆汁性胆管炎をはじめとした肝臓などの疾患が見つかることがありますので、我慢せずにお近くの内科を受診してください。

原発性胆汁性胆管炎の検査・診断

血液検査で肝・胆道関連のマーカーが上昇している場合や、右上腹部の不快感、原因不明の痒みや疲労感、黄疸、体重減少がある場合に「胆道系に何かあるな…」と疑います (参考文献 2) 。
原発性胆汁性胆管炎で上がることの多い自己抗体 (抗ミトコンドリア抗体) が知られているほか、画像検査で肝臓の外の胆管が詰まっていないか確認したり、肝臓の一部をとって顕微鏡で肝内胆管の状態を目で見て確かめる検査をしていきます (参考文献 2, 3) 。

原発性胆汁性胆管炎の治療

これ以上肝臓を悪くしないための対策と、原発性胆汁性胆管炎に対する薬物療法に大きく分かれます。

肝臓を悪くしないための対策

肝臓を悪くしないための対策には次のようなものがあります (参考文献 4) 。

  • 予防接種
    肝炎ウイルスのワクチンをはじめ、肺炎球菌のワクチンのほか、一般的に摂取できるワクチンを打つことが推奨されます。
  • お酒を控える

薬物療法

薬物療法はウルソデオキシコール酸 (UDCA) という薬剤を中心に、血中の脂質濃度をコントロールする薬剤を併用することもあります (参考文献 4) 。

これらの治療によっても病勢のコントロールがつかない場合には肝臓移植も選択肢に入ってきます (参考文献 4) 。
症状がないまま経過する場合には予後が良いことが知られていますが、5年で 25% の方が症候性の原発性胆汁性胆管炎へ進行するとされています (参考文献 3) 。黄疸が出てくるようになると予後が良くないことが知られているので (参考文献 3)、病因や検診で異常を指摘されたら早期発見・早期治療のチャンスととらえて、直ぐに病院にいきましょう。

原発性胆汁性胆管炎になりやすい人・予防の方法

原発性胆汁性胆管炎の患者さんの特徴として最も有名なのは「ほとんどが女性であること」です。特に中年女性の患者が多いことが知られています (参考文献 2, 3) 。
血のつながった人の中に原発性胆汁性胆管炎の患者がいる場合には発症リスクが高いことも知られており、遺伝要因が発症に関与することが示唆されています (参考文献 3) 。
豆知識ですが、原発性胆汁性胆管炎は2016年まで原発性胆汁性「肝硬変」と呼ばれていました。以前では肝硬変まで進行した状態で見つかることが多い疾患だったので「肝硬変」の名がついていましたが、診断技術の進歩により現在では肝硬変にいたる前に発見されることがほとんどのため名前の変更がされました。
先述の通り、原発性胆汁性胆汁性は早期発見・早期治療が重要な病気で、初期段階で適切な治療を開始できれば生命予後は一般集団とほとんど変わらないのではとも言われています (参考文献 2)。
「たまたま見つかった」「症状はないが血液検査で異常が指摘されて詳しく調べたら見つかった」という場合には是非とも医師の指示のもと適切な治療を受けて、重症化予防をしてください。


参考文献

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