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胆嚢ポリープ
中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胆嚢ポリープの概要

胆嚢ポリープとは、胆嚢にできた丸く出っ張ったできもののことをいいます。胆嚢ポリープは症状がほとんどなく、健康診断や人間ドックなどで偶然みつかることが多いです。胆石や胆嚢炎を合併している場合は、腹痛がみられることもあります。

胆嚢ポリープの約90%は良性のコレステロールポリープであり、経過観察となることがほとんどです。コレステロールポリープの多くは数ミリと小さく、たくさんできやすいという特徴があります。
胆嚢ポリープの原因ははっきりわかっていませんが、食生活の欧米化など生活習慣と関連があるといわれています。

胆嚢ポリープがみつかったからといって、すぐに手術が必要となることはありません。多くは良性のポリープのため、経過観察となることがほとんどです。しかしがんが疑われる場合には超音波内視鏡検査などをおこない、ポリープの大きさや形をくわしく観察し悪性かどうかを調べる必要があります。がんの可能性が高いと判断された場合は、手術による胆嚢摘出の対象となります。その場合、腹腔鏡下の内視鏡手術ではなく開腹手術が選択されます。

胆嚢ポリープの治療で一番大切なのは、悪性であるかどうかを確かめることです。胆嚢ポリープの多くは良性のポリープですが、なかにはがんが隠れている場合もあります。健康診断や人間ドック等で胆嚢ポリープが見つかり、より詳しい検査をすすめられた場合には消化器内科などの専門医を受診することをおすすめします。

胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープの原因

胆嚢ポリープができる原因ははっきりしたことはわかっていませんが、食生活などの生活習慣が関係していると考えられています。

胆嚢ポリープの種類は、コレステロールポリープ、過形成ポリープ、炎症性ポリープ、腺腫性(せんしゅせい)ポリープ、胆嚢がんの5つに分類されます。この中で1番多く見られるのは、コレステロールポリープで胆嚢ポリープの約90%を占めます。

胆嚢は肝臓で作られた脂肪の消化を助ける胆汁とよばれる液体を貯めておく働きがあります。コレステロールポリープは胆汁の中にふくまれるコレステロールが胆嚢にくっついたものが大半であり、近年の食生活の欧米化による肥満や脂肪肝、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣などが原因だと考えられています。また炎症性ポリープは胆嚢炎が原因となってできるとされています。

胆嚢ポリープの前兆や初期症状について

胆嚢ポリープはほとんどが無症状です。そのため健康診断や人間ドックで腹部エコーをした際にたまたまみつかることが多いです。

胆石や胆嚢炎を合併している場合には、腹痛や発熱がみられ、受診後にたまたま胆嚢ポリープがみつかることもあります。

胆嚢ポリープの検査・診断

胆嚢ポリープの検査は腹部超音波検査が用いられます。

ポリープの大きさが10mmを越えるものや悪性が疑われる形であった場合は、よりくわしく胆嚢を観察するために超音波内視鏡検査や造影剤を使ったCT検査などがおこなわれます。

腹部超音波検査(AUS)

お腹の上から超音波をつかった器械を当て、胆嚢の様子を画像に映し出す検査です。ポリープの大きさや形、数などを観察し、良性か悪性かをみていきます。
良性のポリープは超音波で白く見え、形はきのこのようなクキがみられることが特徴です。一方で悪性のポリープ(胆嚢がん)は、超音波で黒く写り、クキがなく平べったい山のようにみえるという特徴があります。

MRIやCTよりも小さなポリープを診断できますが、体格や腸の位置によって胆嚢全体が映らないこともあります。その場合、超音波内視鏡検査(EUS)をおこなうこともあります。

超音波内視鏡検査(EUS)

先端に超音波装置が付いた内視鏡を口から入れて、胃や十二指腸の壁を介して胆嚢を調べます。体の外からおこなう腹部超音波検査と比べると、胆嚢により近い位置から検査できるため、よりくわしく観察することができます。また胆管なども同時に調べることが可能です。

胆嚢ポリープの治療

胆嚢ポリープと診断された方の全てが治療の対象となるわけではありません。胆嚢ポリープの約90%は良性のコレステロールポリープであり、治療はおこなわず定期的な腹部超音波検査による経過観察となることがほとんどです。経過観察中には、ポリープの形や大きさに変化がないかをみて、ポリープががん化していないか観察していきます。

胆嚢がんの可能性があると判断された場合は、手術で胆嚢を摘出するかどうか検討されます。手術の対象となるのは、①胆嚢ポリープの大きさが10㎜を越える、②経過観察でポリープが大きくなっている、③ポリープの大きさにかかわらずクキが幅広いものなど、がんの可能性を否定できない場合です。

胆嚢摘出手術には、腹腔鏡下胆嚢摘出術と開腹胆嚢摘出術の2種類があります。
胆嚢がんの可能性が高い場合には、原則として開腹手術が選択されます。お腹に小さな穴を開けて内視鏡などを挿入しておこなわれる腹腔鏡での手術は、体への負担は小さいですが、がんが完全に取り切れなかったり、胆嚢が破れてお腹の中に胆汁が漏れたりするリスクがあります。

胆嚢は脂肪の消化を助ける胆汁とよばれる消化液をためる働きがありますが、胆嚢がなくなっても肝臓から胆汁がでるので、生活に支障がでることはほとんどありません。脂肪を多く含む食事を摂りすぎると、脂肪の消化不良で腹痛や下痢などが起こる可能性はありますが、その際は主治医に相談するとよいでしょう。

胆嚢ポリープになりやすい人・予防の方法

胆嚢ポリープの多くはコレステロールポリープであり、その多くは肥満や脂肪肝(肝臓に過剰に脂肪がたまった状態)などの生活習慣病と関連があるといわれています。そのため、生活習慣を見直し肥満や脂肪肝を改善することが予防につながります。

健康診断などで肥満や脂肪肝が見つかった場合は、以下に挙げるような生活習慣の見直しをおこないましょう。

①脂肪のとりすぎを控える
揚げ物や脂っこい食事、脂身が多い肉類のとりすぎを避けましょう。続けることを目標に食べる頻度や量を減らすことから始めてみることをおすすめします。

②糖分の摂りすぎを控える
糖分の多い食事は肥満につながります。ジュースなどの甘い飲み物やお菓子、菓子パンなど、血糖値を急激に上げる食べ物を控えるようにしましょう。

③食物繊維の多い食品をとる
野菜や海藻、きのこ類を積極的に食べるようにしましょう。

④お酒は適量を心がける
アルコールの多量摂取は、アルコール性脂肪肝の原因となります。お酒は適量を守りましょう。1日の適量の目安は、ビールなら中瓶1本(500ml)、清酒なら1合(180ml)、ウイスキー・ブランデーならダブル60mlです。

⑤食事の食べ方を見直す
速食いは肥満につながるので、ゆっくりよく噛むことを意識して食べましょう。

⑥日常生活に運動を取り入れる
運動は消費エネルギーを増やし、体内の脂肪を消費します。階段を使う、一駅手前のバス停や駅で降りて歩くなど、続けることを目標に日常生活の中で体を動かすようにしましょう。


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