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E型肝炎
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

E型肝炎の概要

E型肝炎はE型肝炎ウイルスによる感染症で、世界中で年間2,000万人が感染している感染症で、5万人ほどが死亡しているとされています (参考文献 1) 。日本は流行地域ではありませんが年間50人程度の発症が報告があり、流行地域への渡航歴に加えて、十分に加熱されていないジビエ料理の喫食が発症リスクとなっています (参考文献 1, 2) 。
15~60日の潜伏期間の後に、発熱、倦怠感、吐き気・嘔吐、腹痛、筋肉痛といった症状に加えて、褐色尿や黄疸が出現します (参考文献 1, 2) 。1カ月程度で軽快する場合が多いですが、妊婦での重症化が多いことが知られており、妊婦の致死率は 20% にもなります (参考文献 1, 2) 。
E型肝炎に対しての特別な治療はなく対症療法が中心になりますが、重症化した場合は追加での濃厚な治療が必要になる場合があります (参考文献 2) 。
アジアやアフリカの発展途上国が流行地域とされており 、これらの地域に訪れる際は加熱処理されたものを口にするのが予防になります (参考文献 1) 。日本国内でもジビエ料理を食べる際は火の通ったもののみを食べることが重要です (参考文献 1, 2) 。

E型肝炎の原因

E型肝炎はE型肝炎ウイルスによる感染症であり、世界では年間2,000万人以上の患者が発生し、5万人程度が死亡するとされています (参考文献 1) 。日本での報告数は少ないですが、年間50人程度の発生が報告されており、近年では海外渡航歴のない人でも感染した例が報告されています (参考文献 1) 。
日本のような非流行地域における感染経路として重要なのは食べ物を介した感染です。豚やイノシシの生レバー、狩猟によって得られた野生動物を調理したものであるジビエ料理を火の通っていない状態で食べることで感染する経路が一般的です (参考文献 1, 2) 。

E型肝炎の前兆や初期症状について

15~60日前後の潜伏期間の後、発熱や倦怠感、筋肉痛といった全身症状、吐き気・嘔吐、食欲不振、腹痛などの消化器症状、皮疹をともなう急性肝炎を発症します (参考文献 1, 2)。
急性肝炎の症状として褐色尿や黄疸がでることもあります (参考文献 2)。

免疫不全状態にある方や妊婦では重症化することが多く、妊婦では劇症肝炎の発症率が高く、致死率は 20% とされています (参考文献 1, 2) 。

1~2カ月以内の海外渡航歴やジビエ料理の喫食歴のある方で、気になる症状がある場合は、お近くの内科を受診しましょう。この際に海外渡航歴やジビエ料理のことを忘れずに伝えていただけると、診断に結び付きやすいです。

E型肝炎の検査・診断

E型肝炎感染リスクの高い背景のある人に先述の症状がある場合、血液中のE型肝炎に特異的な免疫グロブリンの数値を確認したり、PCR検査をすることでE型肝炎の感染があるか確認します (参考文献 2)。
そのほかにも肝臓関連のマーカーの推移を確認して、肝障害の程度や悪くなっていないかの評価をしていきます (参考文献 2) 。

E型肝炎の治療

特別な治療はなく、急性肝炎に対する対症療法が中心となりますが、劇症肝炎になった場合には血漿交換などの処置が必要になる場合があります (参考文献 2)。
対症療法としては、肝炎ウイルスの活動が落ち着くまで肝臓を休めるために入院して安静に過ごしたり、肝臓に負担をかけないための栄養バランスを調整したり、口から栄養をとれない状態の方は点滴での輸液をするといった治療をします (参考文献 3) 。

E型肝炎になりやすい人・予防の方法

E型肝炎ウイルスの感染経路を考えると、日本において発症リスクが高い人は、流行地域への渡航歴のある人や、ジビエ料理をよく食べる人といえるでしょう。

E型肝炎の流行地域ですが、一般的には赤道近くのアジア地域やアフリカ、メキシコなどで高レベルの流行が確認されています (参考文献 4) 。季節による差もあるようで、中央アジアでは秋に流行がみられるほか、東南アジアでは雨季に流行し、特に広い地域で洪水が起こった後に感染者が増えやすいことが知られています (参考文献 5)

狩猟をされる方はジビエ料理との関わりが多いかと思いますし、狩猟をしない人でも旅行先でジビエ料理が提供されることがあります。普段口にすることのない新鮮なジビエ料理はとても美味しく、独自の文化と強く結びついていることも多いですが、身体にやさしくジビエ料理を楽しむためには十分に加熱したものを頂くことが重要といえるでしょう。

E型肝炎ウイルスに対するワクチンが開発されていないため、A型肝炎のように渡航前の予防接種での感染予防はできません。
感染予防のためには「糞口感染」の経路を経つことが重要です。

流行地域に旅行する際には、口にするものが衛生的かどうかに気を配りましょう。基本的には十分に加熱されたもののみ食べるようにし、飲み物もペットボトル飲料などの衛生的と思われるものを選ぶようにしましょう (参考文献 2) 。フルーツなども洗うために使った水が衛生的ではないことがあるので注意してください (参考文献 4) 。

狩猟でとれた動物の料理をいただく場合も、しっかり加熱調理することが予防のために重要です。E型肝炎ウイルスは80℃で2分間以上加熱することで失活化することが可能です (参考文献 1) 。


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