男性にも更年期障害はあるの?症状や対策法など解説!
更年期障害は女性のイメージが強いですが、男性にも起こり得るのか知りたい方も多いのではないでしょうか。本記事では男性の更年期障害について以下の点を中心にご紹介します。
・男性の更年期障害の症状
・男性の更年期障害の原因
・男性の更年期障害の対策
男性の更年期障害について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
豊島 大貴(医師)
【資格】
日本心エコー図学会 SHD心エコー図認証医
【所属学会】
日本内科学会、日本循環器学会、日本心エコー図学会、日本超音波医学会、日本心血管インターベンション治療学会など
目次 -INDEX-
男性の更年期障害とは
男性の更年期障害、またはLOH症候群(Late-onset Hypogonadism Syndrome)は、男性ホルモンの減少によって引き起こされる一連の身体的および精神的な症状です。この状態は、疲労感、倦怠感、性欲の低下、勃起障害(ED)、不眠、肩こりなどの身体的な症状と、気力の衰え、集中力の低下、イライラ、抑うつなどの精神的な症状を引き起こします。
男性ホルモンが減少すると、不安が強くなり、やる気、記憶力、性欲の低下が著しくなることが一般的です。ストレスがこのホルモン減少の大きな要因であり、特に仕事や家庭でのストレスが影響を与えることが多いです。また、男性ホルモンには肥満を抑える働きもあり、ホルモンの減少によって生活習慣病のリスクも高まる可能性があります。
治療には、男性ホルモン補充療法や運動、特定の漢方薬が用いられることがあります。しかし、症状は個々に異なるため、専門の医師の診断と治療が必要です。
この症状は女性の更年期障害とは異なり、年齢層も広く、終わりの明確な時期がありません。特に、定年後の男性に多く見られる傾向があります。症状が重症化すると、心血管疾患や脳卒中のリスクも高まるため、早期の対処が推奨されています。
男性の更年期障害の症状
ここからはそんな男性の更年期障害の症状を詳しく解説していきます。
身体への症状
男性の更年期障害は精神的なものだけでなく、身体的な影響も多くあります。
筋力低下、筋肉痛:
男性ホルモンは筋肉の成長と維持に関与しているため、その減少は筋力の低下や筋肉痛を引き起こす可能性があります。
疲労感:
テストステロンの低下はエネルギーレベルにも影響を与え、持続的な疲労感を感じることがあります。
ほてり、発汗:
ホルモンのバランスの崩れは体温調節にも影響を与え、ほてりや発汗を引き起こすことがあります。
頭痛、めまい、耳鳴り:
ホルモンの不均衡は神経系にも影響を与え、頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が出る場合があります。
頻尿:
テストステロンの低下は尿道や膀胱にも影響を与え、頻尿の症状が出ることがあります。
これらの症状は個々に異なる程度で現れ、全ての人に共通するわけではありません。症状が出た場合は、専門の医師の診断と治療が必要です。特に、テストステロンの補充療法などが考慮される場合があります。
精神的な症状
男性の更年期障害(LOH症候群)は、精神的な症状も多くあります。
・健康感の減少
・不安
・いらいら
・うつ
・不眠
・集中力の低下
・記憶力の低下
これらの精神的な症状は、日常生活において多くの困難を引き起こす可能性があります。例えば、集中力や記憶力の低下は仕事の効率を落とし、不安やうつ症状は人間関係にも影響を与える可能性があります。
精神的な症状に対する治療としては、男性ホルモン補充療法が一般的ですが、それだけでなく、健康的な生活習慣の見直しも重要です。十分な睡眠、運動、バランスの取れた食事、ストレスの軽減などが、症状の改善に寄与することが多いです。
性機能障害
男性の更年期障害における「性機能障害」は、多くの人が口に出しにくい非常に重要な問題です。この症状は、性欲の低下や勃起不全、さらにはオーガズムに至るまでのプロセスに影響を与える可能性があります。
一般的に、男性ホルモン(テストステロン)の低下が主な原因とされています。このホルモンの低下は、自信の喪失やパートナーとの関係にストレスをもたらすこともあります。
性機能障害は、単なる「歳のせい」と片付けられる問題ではありません。実際には、この症状が引き起こす心理的、身体的ストレスは、日常生活や人間関係、さらには仕事にも影響を与える可能性があります。
そのため、早期の対処が必要です。泌尿器科での診断と治療が推奨されており、症状が進行する前に医師の診断を受けることが重要です。
男性の更年期障害の原因
前述しましたが、男性の更年期障害は、主に男性ホルモン(テストステロン)の減少によって引き起こされます。この減少は、重度のストレスや環境の変化によって急激に発生する場合もあります。加齢に伴って徐々に男性ホルモンが減少する場合も、この症状が徐々に現れることがあります。
ストレスや環境の変化が原因で男性ホルモンが急激に減少すると、症状が顕著に現れやすくなります。一方で、加齢とともに徐々に男性ホルモンが減少している場合、症状は少しずつ現れ、他の病気と誤診される可能性もあります。
このように、男性の更年期障害は多様な要因によって引き起こされる可能性があり、その原因は一概には言えません。しかし、症状が出た場合は、早めに医師の診断を受けることが重要です。特に、体の不調が続いている場合は、それが重大な病気のサインである可能性も考慮する必要があります。
男性ホルモン「テストステロン」の働き
では、男性ホルモン「テストステロン」とはどんな働きを持つのでしょうか。詳しく紹介します。
骨格や筋肉の成長促進
テストステロンは、男性が成長する過程で重要な役割を果たします。このホルモンは、特に思春期に急激に分泌され、その結果、骨格や筋肉の成長が促進されます。この時期に身長が急激に伸びるのは、テストステロンの影響が大きいとされています。
テストステロンは、筋肉組織に直接働き、筋肉の成長と修復を助けます。また、骨密度を高める働きも期待でき、強く健康な骨格を形成する手助けをします。このようにして、テストステロンは「男性らしい」体型、すなわちがっしりとした骨格と筋肉質な体を作り上げるのです。
年齢とともにテストステロンの分泌量は減少する傾向にありますが、その影響は個人差が大きいです。一部の人々は、年齢を重ねても筋肉量や骨密度が維持されるケースもあります。しかし、テストステロンが減少すると、筋肉の衰えや骨密度の低下が起こる可能性もあり、これが高齢期のフラジリティ(虚弱)につながることもあります
性衝動への働き
テストステロンは多くの生理的・心理的機能に影響を与えますが、性衝動に対する働きも注目されています。
このホルモンは、性的興奮や勃起のスイッチを入れる役割を果たし、フェロモンの生成や骨盤神経への刺激を通じて性行動を促進します。思春期にはテストステロンの分泌が急増し、それが性的成熟に大いに寄与します。しかし、年齢とともにテストステロンのレベルは自然に低下し、それが性欲の減退や性的興奮の低下といった症状を引き起こす可能性があります。
特に40代以降、急激なホルモンの減少は男性更年期障害の一因ともなり得ます。このように、テストステロンは男性の性衝動や性的健康において、非常に重要なホルモンであると言えるでしょう。
脳や精神面への影響
テストステロンは、身体だけでなく、脳や精神面にも影響を及ぼします。特に、胎児から生後6ヶ月の間に分泌されるテストステロンは、大脳の性差に影響を与えるとされています。これが後に、男性特有の攻撃性や短気、怒りっぽさなどの精神的特性につながる可能性があります。
テストステロンは「物事のとらえ方」や「思考パターン」、「決断力」など、いわゆる「男らしい考え方」にも影響を与えるといわれています。例えば、テストステロンが高い人は、一般的には「粗っぽくてデリカシーが無いけれど、明るく前向きでたくましい」といった性格傾向があるとされています。
また、テストステロンは「生きる活力」や「生気」、「気持ちの張り」など、人間のバイタリティを高める働きもあります。これは男女問わず、前向きに生きるために重要なホルモンと言えるでしょう。
男性の更年期障害の対策法
ここまでは男性の更年期障害について詳しく解説してきました。ここからは男性の更年期障害の対策についてお話しします。
食べ物
男性の更年期障害は、テストステロンの減少が主な原因であり、食事が重要な対策の1つです。
特に、良質なタンパク質を多く含む食材(例:卵、肉類、魚)や、亜鉛を多く含む食材(例:牡蠣、ワカメ)が役立つとされています。また、ニンニクやニラなどの野菜もテストステロンの分泌を促進する可能性があります。これらの食材をバランスよく摂ることで、更年期障害の症状を和らげることが期待できます。
さらに、過度な肥満や不健康な生活習慣もテストステロンの減少を招くため、全体的な生活習慣の見直しも必要です。
運動
運動はテストステロンの分泌促進が期待でき、特に筋肉トレーニングはこのホルモンの分泌をさらに促進するとされています。運動不足はテストステロンの分泌量を減少させ、肥満の原因にもなり得ます。肥満は血行を悪化させ、テストステロンの分泌をさらに低下させるリスクがあります。
運動を習慣化することで、肥満を防ぎ、質の良い睡眠を促し、結果的に男性ホルモンの分泌を促せます。ただし、運動は「適度」がキーワードです。過度な運動は逆にストレスを生む可能性があり、ホルモンバランスを崩す恐れがあります。
総合的に見て、運動は男性の更年期障害の予防と改善に非常に役立つとされる手段であり、日常生活に取り入れる価値が高いです。運動プランをしっかりと立て、無理なく続けることが大切です。
お酒の飲み過ぎ
アルコールの過度な摂取は、男性ホルモンの生成に必要な栄養素の消費を促し、結果としてテストステロンの生成が妨げられる可能性があります。特に、ビジネスの場などでの飲酒が多い方は注意が必要です。適度な酒量を守ることで、男性更年期障害の予防につながります。
また、アルコールは肝臓に負担をかけ、その他の健康問題を引き起こす可能性もあります。肝臓はテストステロンを生成する上で重要な役割を果たすため、肝臓の健康を維持することも男性更年期障害の予防に役立ちます。
総じて、お酒の飲み過ぎは男性更年期障害の予防と改善において避けるべき行動の1つです。
禁煙
禁煙は男性の更年期障害の対策の1つです。タバコの煙に含まれる活性酸素は、体内で細胞や栄養を破壊し、男性ホルモンの分泌を低下させる可能性があります。特に、年齢を重ねると、活性酸素に対抗する体内の酵素の生産量も減少するため、その影響をより受けやすくなります。
更年期障害はホルモンバランスの乱れからくるものであり、テストステロンという男性ホルモンが中心的な役割を果たします。このホルモンの分泌が減少すると、様々な身体的・精神的な症状が現れる可能性があります。禁煙によって、活性酸素の影響を減らし、テストステロンの正常な分泌を促せるでしょう。
禁煙は単なる健康促進の手段ではなく、更年期障害の予防・改善にも寄与する重要なステップです。もしタバコを吸っている場合は、更年期障害のリスクを減らすためにも、禁煙を真剣に考えましょう。
質の高い睡眠
質の高い睡眠は、テストステロンの分泌を促進し、更年期障害の症状を和らげる可能性があります。睡眠不足や質の低い睡眠は、テストステロンの減少につながるため、十分な睡眠時間とその質を確保することが重要です。特に、アルコールの過度な摂取や寝る前のスマートフォンの操作は、睡眠の質を低下させる要因となるため、これらは避けるようにしましょう。
更年期障害の予防と治療において、質の高い睡眠は良い手段となるのです。心地よい睡眠環境を整え、リラックスして眠ることで、更年期障害の症状を和らげ、より健康な毎日を送れるでしょう。
競い合いで承認欲求を満たす
男性の更年期障害に対する1つの対策として「競い合いで承認欲求を満たす」というアプローチがあります。この考え方は、社会的な競争や他人からの評価を通じて、テストステロンの分泌を促進し、心身の健康を維持するというものです。
しかし、この方法が全ての人に適しているわけではありません。競争によってストレスが増加する人もいれば、評価されることでプレッシャーを感じる人もいます。そのため、このアプローチは個々の性格や状況によって調整が必要です。
例えば、競争よりも協力的な活動で承認欲求を満たす方法も考えられます。重要なのは、自分自身を理解し、自分に合った方法で更年期障害の対策を講じることです。
まとめ
ここまで男性の更年期障害についてお伝えしてきました。男性の更年期障害の要点をまとめると以下の通りです。
・男性の更年期障害の症状は、筋力低下や筋肉痛、疲労感などの身体的な症状や、不安やいらいらなどの精神的な症状、性欲の低下や勃起不全などの性機能障害が発生する場合もある
・男性の更年期障害の主な原因は、男性ホルモン(テストステロン)が減少することである
・男性の更年期障害の対策は、食生活に気を付けることやお酒を控えること、運動すること、禁煙すること、質の高い睡眠を取ること、競い合いで承認欲求を満たすことなどが挙げられる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献