50周年を迎えて
内田さん
創立50周年誠におめでとうございます。先生方から50周年を迎えられてのメッセージをお伺いしていきたいと思います。最初に聖マリアンナ医科大学理事長、明石勝也先生。 2005年4月より現職に就き、学外においては、私立医科大学協会の委員として、消費税問題と医師の働き方改革に奔走していらっしゃいます。また、地域医療構想委員会のメンバーとして、神奈川県や川崎市と諸々の検討を重ねていらっしゃいます。2018年4月には、医療における人工知能AIやICTに特化した日本初の大学院講座を開始されました。2019年8月にはデジタルヘルス共創センターを新設するなど、医科大学による医療IT・AIの知的財産の活用を推進していらっしゃいます。 それでは明石理事長より一言、メッセージをお願いたします。
明石理事長
ようやく本学も50周年を迎えることになりました。これもひとえに支えてくださった皆様方のおかげと、心から感謝申し上げる次第でございます。本学の50年というのは、小さな子どもが50歳になり、ようやく大人になってきて、できることが少しずつ増えてきたという印象です。この間に多くの医療者、そして医師、看護師を養成してきたということが財産であると思っています。
内田さん
ありがとうございます。続きまして、聖マリアンナ医科大学学長、北川博昭先生。 2020年4月より現職に就任。幼少期にボストンで過ごされた経験と海外勤務経験から、語学力を生かして国際交流を推進されています。2020年2月には横浜港に入港したダイヤモンドプリンセス号での新型コロナウイルス感染クラスターが発生した当時、大学病院長として陣頭指揮にあたられました。コロナ禍における学生教育方法の構築にも尽力していらっしゃいます。 それでは、北川学長より一言、50周年についてよろしくお願いいたします。
北川学長
私は18歳から本学で学んでまいりました。私を含めた4725名の医師を育ててくれた本学に、大変感謝申し上げる次第でございます。また、小児外科医として、大学病院長として、その後は学長として、私を育ててくれた同窓の先生方、先輩の先生方、多くの本学教職員の皆様方に大変感謝申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。この先も見据えて大学の運営をしていきたいと思っています。
内田さん
ありがとうございます。続きまして、聖マリアンナ医科大学病院長、大坪毅人先生。 2020年4月より現職に就任。2021年より新型コロナウイルス感染症の後遺症に特化した感染症後外来を開設されました。現在のニーズに柔軟に対応し現場でご活躍されています。また出身地である石川県の「ふるさと石川の医療大使」として地域医療にも従事していらっしゃいます。それでは、大坪病院長より50周年に向けて一言お願いいたします。
大坪病院長
本学も50周年を迎え、これまでに4700名を超える卒業生を輩出しており、数多くの卒業生が日本中で活躍され、また関東圏内、特に東京都や神奈川県で開業しております。また、病院としましても30を超える診療科、またそれを繋ぐセンターを多く設置することで、地域の皆様のニーズに答える形を卒業生と共に構築できていることを、非常に嬉しく思います。ますます今後も発展させていきたいと思っています。
50年で実現できたこと、
できなかったこと
内田さん
ありがとうございます。それではまず、皆様にお伺いします。この50年間の中で実現できたこと、またできなかったことは何でしょうか? 明石理事長よりお願いします。
明石理事長
実現できたことは本当にたくさんあると思っています。地域に高次な医療を還元することは十分できてきているように思いますし、良い学生も医療者もたくさん育てることができてきたと思っています。 私たちができなかったこと、あるいはこれからやらねばならないことの一つは、私は国際貢献であると思っています。力も人もなかなか身に付きませんが、今は遠隔診療など様々な方法で海外を支援することができると思っています。また、私たちと同じような理念を持って運営をしている学校が日本中にたくさんあります。こういった学校間のアライアンスを組んで力を合わせていければ良いと思っています。
内田さん
ありがとうございます。北川学長はいかがでしょうか。
北川学長
私は病院や進学校舎の建設当初より、本学の歴史をつぶさに見てきました。この50年の間に、本学は、樹木が枝葉を伸ばすように、神奈川県内に附属病院やクリニックを増やしていき、地域医療に貢献してきました。また、そこで活躍できる医師たちを育てることもできたと思っています。 もう一つは卒業生の育成です。私も育てていただきましたし、本学に育てられた先生方と一緒に大学をリードしていくということもできたと思っています。 実現できなかったことについては、実現できるようにしていくことが大学の教育であると思っています。先ほどの国際貢献も含めて、やりたいことはたくさんありますので、それらをこれから先の私たちのテーマとして実現していきたいと思っています。
内田さん
大坪病院長はいかがでしょうか?
大坪病院長
大学病院は特定機能病院としての高度医療や地域の中核病院としての救急医療の提供、災害拠点病院としての有事の際の対応等について、大分できてきたと思っています。 また、これからやりたいこととしては、超高齢化社会に対応し、地域ぐるみで患者さんを治療していくための近隣医療機関とのシームレスな関係作りができればと思っています。
今後の聖マリアンナ医科大学に
必要なこと
内田さん
ありがとうございます。今後、聖マリアンナ医科大学が成長するためにはどんなことが必要になってくるのでしょうか。明石理事長からお願いします。
明石理事長
学校の教育や研究は、何かドラマティックな出来事があって急に良くなるということはありません。毎日毎日のことを丁寧にやる、今まで以上に丁寧に毎日の仕事をやることで、より良くなっていくものであると思っています。私はこれから、より丁寧に教育・研究・診療に努力していくべきであると思います。ただ、医療はこれからさらに大きく変わると思っています。特に大学病院は、市民の皆様との間に敷居があるように思いますので、これを感じさせない仕組みづくりをやっていきたいと思います。大学病院から、医療全体を少し変えていくぞという気持ちです。経済学用語に「レモンマーケット」という用語があります。これは消費者と生産者との間に大きな知識の差があるマーケットのことを意味します。医療は特にレモンマーケットであると言われがちなのですが、この差を埋めるため皆努力をしてきました。今は新しいテクノロジー、ITなどの技術を使って、このレモンマーケットをより解消できるように、機動力を発揮していきたいと思います。
内田さん
ありがとうございます。北川学長はいかがでしょうか。
北川学長
私たちが受けた教育は、多くのものを詰め込んで知識を増やすということでしたが、これからの教育は得た知識をどう使っていくかが大事であると思っています。学生自身が知識の引き出しを使えるようにしていきたいです。
内田さん
実際にそういった取り組み、教育を変えていくというのは現場でも取り入れているのでしょうか?
北川学長
私たちの時代には、医学知識が倍増するのに数年を要しておりましたが、今は遥かに短い期間で倍増しています。ですので、教育自体が詰め込み主義から、やはりIT化も含めてどんどん進化していると感じます。
内田さん
ありがとうございます。大坪病院長はいかがでしょうか。
大坪病院長
今後、病院が成長するためには、医療安全への継続的な取り組みや医療の質の継続的改善が必要であると思っています。教職員にはそれらを義務的に行うのではなく、自発的に行うようになってほしいと思っています。