リハビリには4段階あるって本当? 最後の終末期だけ何が違うの?

公開日:2021/06/11
リハビリには4段階あるって本当?最後の終末期だけ何が違うの?

病気やケガの治療と合わせて行うリハビリには、時期や回復具合ごとに段階があることをご存じでしょうか。また、これらの段階はどのように分けられ、どのような内容になっているのでしょうか。リハビリの段階や最後の終末期について「理学療法士」の吉川さんに詳しく伺いました。

吉川信人

監修理学療法士
吉川 信人(理学療法士)

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関西医療学園専門学校理学療法学科卒業。卒業後、京都の病院に就職。病院でのリハビリテーションを行う傍ら、女子サッカーチームのチーフトレーナーとしても活動。その後、ホッケー女子日本代表とホッケー男子日本代表のトレーナーとして海外遠征の帯同を歴任。現在は理学療法士やトレーナーとしての経験を活かして医療ライターとして活動中。

リハビリには4つの段階がある

リハビリには4つの段階がある

編集部編集部

リハビリにもいくつか段階があると聞きました。

吉川信人吉川さん

リハビリには急性期、回復期、維持期(生活期)、終末期という4つの段階があります。急性期から維持期までは、一般的な病気やケガの患者さんが対象ですが、終末期だけは対象になる患者さんが異なるのでまったく別の段階として考える必要があります。

編集部編集部

これらの段階はどのように分けられているのでしょうか?

吉川信人吉川さん

急性期から維持期(生活期)までは、病気やケガを発症してからの時期によって分けられています。おおよそ発症から2~3週間を急性期、3か月程度までを回復期、それ以上を維持期(生活期)と呼んでいます。

編集部編集部

それぞれの段階でリハビリの内容は変わりますか?

吉川信人吉川さん

段階だけでなく、捻挫や骨折などのケガなのか、脳卒中などの病気なのかによってもリハビリの内容は異なります。ただ、どちらも発症してすぐの急性期は、身体の中に炎症反応による浮腫(ふしゅ)という「むくみ」が起きます。この浮腫が起きている間に無理して動かすと炎症の範囲を広げてしまいます。このため浮腫が落ち着くまでは、疾患部やケガをしている部分を動かさず、安静にしていることが大切です。しかし、何もしないのは逆に良くないので、ケガをしていない部分を動かして筋肉が落ちてしまうのを防いだり、疾患部に負担をかけないように理学療法士が身体を動かしたりする簡単な体操は行います。

編集部編集部

回復期はどのようなリハビリを行うのでしょうか?

吉川信人吉川さん

    

回復期は炎症反応が落ち着き、身体が改善しやすい時期です。そのため、ストレッチや筋力トレーニング、体操、日常生活に戻るための動作の練習などを積極的に行なっていきます。この段階はとても大切なので、脳卒中のリハビリであれば回復期リハビリテーション病院(病棟)という回復期に特化した施設で集中的に行うこともあります。

編集部編集部

維持期(生活期)についても教えてください。

吉川信人吉川さん

 

維持期(生活期)は発症してから3か月以上が経ち、発症する前の日常生活に戻りつつある時期なので、症状や状態が少しずつ固定されてきます。また、生活の中での弱点が分かるようになってくる時期なので、筋肉や体力が落ちないように維持するためのリハビリ以外にも、生活の中で実際に困っていることを具体的にトレーニングしていきます。

編集部編集部

維持期(生活期)になったら改善しないのでしょうか?

吉川信人吉川さん

維持期になると症状が改善しないということはありません。各段階はあくまで一般論であって、人によって身体の状態は違いますので、維持期でも適切な治療やリハビリを続けることで改善する可能性はあります。とくに急性期や回復期に十分なリハビリを受けることができなかった場合などは、身体が改善のための余力を残している可能性が高いでしょう。

難病の人に行う終末期のリハビリ

難病の人に行う終末期のリハビリ

編集部編集部

先ほど、終末期は別で考える必要があるとのことでしたが?

吉川信人吉川さん

終末期は
患者さんが人生の最後を、その人らしく生きるためのリハビリを行う段階になります。
具体的には、末期がんや難病を抱え、現在の医療では完治の難しい方が対象です。緩和ケアとも呼ばれていて、年齢や病気の進行によって自立した生活ができず、残りの人生が限られている方が、最後まで人間らしくあることができるように医療、看護、介護とともに行うリハビリとされています。

編集部編集部

終末期にリハビリって必要なのでしょうか? どんな目的がありますか?

吉川信人吉川さん

中には「看取りを迎える時期に必要ないのでは?」と考える方もいますが、穏やかな最後を迎えるためにできることは色々あります。その目的の大切な一つは、痛みを抑えることです。例えば、身体が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気の患者さんは、筋肉が小さくなり、関節を動かせなくなると痛みが出てしまうため、ストレッチで関節を動かしたり、姿勢を整えてあげたりすることによって痛みを和らげることができます。痛みが和らげば前向きな気持ちで日常生活を過ごせるので、リハビリは重要な役割を担っているのです。

編集部編集部

その他のリハビリと何が違うのでしょうか?

吉川信人吉川さん

急性期~維持期(生活期)は病気やケガを治すためにリハビリを行いますが、終末期は「最後まで人間らしくある」ことを実現するために行います。終末期になると身体の状態が悪くなり座っていられないため、チューブから食事を摂る方もいます。食事で味を感じることは、人間の生活においてとても大切なことです。そのため、食事を摂れるように座る練習をしたり、食べ物を飲み込む嚥下訓練をしたりして、可能な限り一人で食事ができるようにしていきます。その他、自立してトイレができるようにするなど、生活の質を落とさないように進めていきます。

リハビリは各段階に合わせて適切に

リハビリは各段階に合わせて適切に

編集部編集部

それぞれの段階を理解しておく必要はありますか?

吉川信人吉川さん

終末期だけは少し特殊ですが、その他の段階は簡単に知っておいた方がいいと思います。例えば、ケガの急性期で浮腫が治っていないのに痛みを抱えたまま無理に運動をすると、かえって悪化させたり、長引かせたりする可能性があります。また、既に回復期に入っているのに、痛みを理由に安静にしてしまうと、治るまでに必要以上の時間がかかってしまうこともあります。中には身体がおかしいと感じてから1年以上も経ってから病院に来る方もいますが、維持期(生活期)に入ってしまうと治りが遅くなるため、やはり治療は早めに始めることをおすすめします。このようなことを防ぐという意味でも、患者さん自身がそれぞれの段階を知っておくことは大切です。

編集部編集部

自分で段階を判断して運動や体操をしても大丈夫でしょうか?

吉川信人吉川さん

段階を知っておくことは大切ですが、自己判断はせず、まずは専門医に診てもらいましょう。例えば、ケガをして2~3週間安静にしていたとしても、患部の腫れが引いていなければ、さらに安静が必要な場合もあります。各段階の診断は患部や全身の状態、症状などの医学的所見によって異なるため、適切な専門医に診断をしてもらってから運動を開始した方がいいでしょう。

編集部編集部

適切な診断と段階に合わせたリハビリが重要だということですね?

吉川信人吉川さん

そうですね。理学療法士や作業療法士は、医師と話し合いながら病気やケガの各段階に応じたリハビリを提案します。急性期に必要なのは患部の安静だけではありません。ケガの場合、安静以外にも腫れを抑えるためにアイシングをしたり、患部以外の場所を動かしたりすることで血流を促すこともします。ケガや病気を早く治すためにできることはたくさんありますので、専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。

編集部まとめ

リハビリは、病気やケガの時期や回復具合によって「急性期、回復期、維持期(生活期)」の3段階と完治が難しい難病の方への「終末期」に分けられていて、各段階に応じてリハビリの内容が異なることがわかりました。症状や状態に合わせた段階の適切な判断は難しいので自己判断はせず、まずは専門医に診断してもらいましょう。診断をしっかりしたうえで、その人の段階に合った適切なリハビリをすることが大切です。