子どもの矯正治療、歯並びがよくなる以外にどんなメリットがある?

公開日:2021/03/15

歯並びの悪さは、むし歯などの発症率や見た目のコンプレックスに関わってきます。早いうちから整えたほうが、得られることは大きいでしょう。しかし、「長谷川みらい歯科・矯正歯科」の長谷川先生は、「歯列だけならいつでも整えられる」と言います。それよりも大切なのが、「舌と顎の関係」と「呼吸」に着目した矯正治療とのこと。舌の力と呼吸が決める歯の“みらい”について、詳しい話を伺いました。

長谷川雄一

監修医師
長谷川 雄一(長谷川みらい歯科・矯正歯科 院長)

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明海大学歯学部卒業。明海大学PDI埼玉歯科診療所、河津歯科医院勤務を経た2016年、栃木県宇都宮市に「長谷川みらい歯科・矯正歯科」開院。日本顎咬合学会噛み合わせ認定医・関東・甲信越支部理事、明海大学・朝日大学歯学部歯科総合医、明海大学歯学部臨床講師。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本睡眠歯科学会、日本スポーツ歯科医学会の各会員。

子ども本来の発育が妨げられている現状

問診

編集部編集部

歯列の乱れって、子どものうちに治したほうがいいですよね?

長谷川先生長谷川先生

私の考える小児矯正は「顎を適切に育てる」イメージですので、年齢的な上限があります。お子さんといっても、顎の成長が止まりかける高校生以上の方には、症例により、一般的な「大人矯正」をご提案しています。

編集部編集部

顎の発育不順が、歯列の乱れを起こすということですか?

長谷川先生長谷川先生

そう考えていいと思います。一般的に顎の成長というと「幅の広さ」のように思われますが、私は「発育方向」も大切だと考えています。例えば下向きに育ってしまうと、前歯の突出や、歯列そのものが下がって上の歯ぐきを目立たせる「ガミースマイル」になりがちです。

編集部編集部

ヘッドギアのような大がかりなものを、顎に取り付けるのでしょうか?

長谷川先生長谷川先生

いいえ。発育方向のかじ取り役となるのは「舌の動き」です。鼻呼吸で口を閉じ、“舌全体が上顎にくっついた状態”になっていれば問題ありません。逆に口呼吸で、“舌が下顎にくっついた状態”だと、顎が下方向へ成長していってしまいます。

編集部編集部

歯列矯正というより、舌の機能トレーニングのような印象ですね。

長谷川先生長谷川先生

このような考え方に基づいた治療を、「筋機能矯正」と呼ぶことがあります。当院ではマイオブレースという治療方法を選択しています。基本をなすのはクセや機能改善ですから、大人になればなるほど、治すことが難しくなってきます。他方、歯列の乱れを治すだけなら、いつでもできるでしょう。

編集部編集部

子どもの歯並びが悪くなくても、マイオブレース矯正を受ける意味はありますか?

長谷川先生長谷川先生

「将来的に歯並びが悪くなる可能性を摘む」こと、つまり予防目的として効果的だと思います。また、口呼吸の改善といった、歯並び以外の恩恵も得られます。大人になってからの矯正治療を否定するつもりはありませんが、歯の形だけきれいな「お口ポカン」になりかねないということです。

開いた口がふさがらない「万病の入口」

問診

編集部編集部

注目すべきは、歯よりも舌ということですか?

長谷川先生長谷川先生

舌のほか、正しい飲み込み方や口周りの筋肉の使い方も含めてですね。総じて、お口の機能が顎の形と歯列を形づくると考えています。マイオブレース矯正を取り入れていないドクターのなかにも、「お口の機能」に着目されている先生はいらっしゃいます。例えば、MFT(口腔筋機能療法)という考え方などです。

編集部編集部

「難しい話は嫌だ、形だけきれいならそれでいい」という場合は?

長谷川先生長谷川先生

審美目的の歯列矯正ということになるのでしょう。ただし、口呼吸による身体的なリスクは依然、解決されていません。そのままだと、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」のような脳機能低下を招く可能性もあります。また、口呼吸では呼吸器が十分に発育せず、お子さんでも睡眠時無呼吸症候群などになりかねません。簡単に言うと、脳が酸欠を起こしてしまうのです。

編集部編集部

口呼吸の弊害は、よく耳にします。

長谷川先生長谷川先生

アレルギーも関係しているでしょう。原因となる物質をそのまま吸い込みますから、被ばく量が多くなる道理です。感染症の原因菌やウイルスも同様で、鼻呼吸の場合、鼻がフィルターの役割を果たしますし、加湿もしてくれるんですよね。菌やウイルスは、乾燥した環境を好みます。むし歯や歯周病も、原因をたどれば菌が大きく関与していますからね。歯並びが悪くても死には直結しないのかもしれませんが、呼吸が全身の健康に大きな影響を及ぼす事は誰でも理解できる事だと思います。

編集部編集部

なんだか、口呼吸が万病の元のように思えてきました。

長谷川先生長谷川先生

「お口の機能はドミノ倒しの先端にあたる」と言っても、過言ではないでしょう。お口の機能が不適切で倒れてしまうと、歯や身体、脳の健康まで倒しかねません。他方で自立できていれば、その後の連鎖反応が防げます。

審美目的の矯正治療は、真の原因を解決していない

カウンセリング

編集部編集部

マイオブレース矯正って、どうやっておこなうのですか?

長谷川先生長谷川先生

専用のマウスピースを、日中の1~2時間と就寝中に装着していただきます。また、癖を直すための3分程度のアクティビティも1日2回やっていただきます。マウスピースといっても、歯を動かす装置ではありません。マウスピースとアクティビティーによって鼻呼吸を習得し、舌の正しい位置、噛み方や飲み込み方、唇や頬による余計な加圧の排除などが、自然に体得できる仕組みになっており、その結果良好な顔の発育と歯列を獲得できるのです。

編集部編集部

マイオブレース矯正の費用は、どれくらいかかるのでしょう?

長谷川先生長谷川先生

個人差はあるものの、自費でおおむね、35万円から60万円前後でしょうか。マウスピース装着のほか、「アクティビティ」と呼ばれる“運動”を欠かさないことが、ゴールへの近道になります。また、段階的に複雑な「アクティビティ」へステップアップしていくので、お子さん、保護者、医師間の共同体制が求められます。平均的なところで「2年間」くらいは頑張っていただく事になります。

編集部編集部

先生は、一般的なワイヤー治療も扱っているのでしょうか?

長谷川先生長谷川先生

小児ではやめています。小児矯正でいえば、マイオブレース一本です。したがって、第一期治療や第二期治療という区切りもありません。ワイヤー治療へ行かないために、マイオブレース治療をしましょうという発想ですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

長谷川先生長谷川先生

医療で大切なのは「原因を診る」ことだと実感しています。しかし、矯正治療となると、“ときに”結果だけが優先されているような印象です。この機に、「歯科矯正の目的は歯並びに限らない」ということを知っていただければ幸いです。

編集部まとめ

子どものうちに矯正治療を受けておけば、口腔疾患はもとより、全身疾患や脳機能低下も防げる可能性がありそうです。ただし、歯の形だけきれいな「お口ポカン」という例えがあるように、外見だけ整えても実を伴わないのでしょう。世界的な周知が広まってきたマイオブレース矯正。説明だけでも受けてみてはいかがでしょうか。

医院情報

長谷川みらい歯科・矯正歯科

長谷川みらい歯科・矯正歯科
所在地 〒329-1105 栃木県宇都宮市中岡本町3710-94
アクセス 宇都宮駅より車で16分
診療科目 一般歯科、矯正歯科