不妊症って予防できるの? 若いうちから意識したほうがいいことはありますか?
「子どもを産みたい」という希望がある場合、どういった点に気をつけるべきでしょうか。また、将来の妊娠を見据えて、年齢の若いうちから取り組むべき不妊症対策も気になるところです。「つくばARTクリニック」の吉田先生が、日常に潜む注意点について解説します。
監修医師:
吉田 丈児(つくばARTクリニック 院長)
慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学産婦人科非常勤講師、東京歯科大学市川総合病院リプロダクションセンター長・教授を経て、茨城県つくば市に位置する「つくばARTクリニック」院長に就任。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクター。日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本受精着床学会、日本女性医学学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。
妊娠の予定がなくても、心がけておきたいこと
編集部
将来の妊娠に備えて、女性が日頃から注意しておいたほうがいいことはありますか?
吉田先生
妊娠しにくくなる要因として、不適切な体重管理、喫煙、過度な飲酒、過度なカフェイン摂取やクラミジア感染症、加齢などが挙げられます。このような要因を避けることが、不妊症の予防につながるでしょう。
編集部
妊娠を意識した段階で取り組むものと、それ以前から心がけたいものに分かれそうですね。
吉田先生
体重管理は急にできませんから、長期的な観点が求められるでしょう。適正体重の指標としては、一般的に「BMI」が用いられます。BMIの計算式は「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」です。このBMIの数値が「35以上」で妊娠するまでの時間が2倍になり、逆にBMIが「19未満」でも妊娠するまでの時間は4倍になるといわれています。低体重は月経不順や無月経にもつながり、流産率が上昇します。
編集部
クラミジア感染症も、日頃から気をつけておきたい項目ですよね?
吉田先生
クラミジア感染症は、主に性交渉でうつります。炎症を起こした結果、卵管周囲の癒着や閉塞などが起きると、卵子を子宮に届けられなくなります。ほか、子宮外妊娠の原因にもなりえます。なお、ピルではクラミジア感染症を防げませんので、その点ご注意ください。
編集部
出産年齢は、仕事や人生観とも関わってきますよね?
吉田先生
性的な差別と受け取られかねない項目ですが、年齢が不妊症の最大のリスクファクターであることは事実です。卵子の老化ほか、子宮筋腫といった婦人科の疾患や内科疾患などの合併率も高くなります。体外受精・胚移植の臨床データを見ると、妊娠率は37歳ごろから低下速度が急になり、42歳ごろからさらに加速していきます。
不妊症のリスクを左右する項目
編集部
続いて、妊娠を意識した段階での注意点をお願いします。
吉田先生
妊娠は、必ずしも計画的に進められるとは限らないので、日頃から意識しておきたい注意点でもあります。その上で、以下のような項目には、明確なエビデンスが示されています。
編集部
喫煙という項目がありましたね。やはり、諸悪の根源なのでしょうか?
吉田先生
ハッキリ言って、いいことはなにもないでしょう。喫煙は、不妊症になる相対危険度を1.6倍にするといわれています。また、妊娠してからでも、低出生体重児や胎盤早期剥離などの原因になります。
編集部
お酒とカフェインに関しては、「過度」という条件付きですね?
吉田先生
過度な飲酒も、不妊症になる相対危険度を1.6倍にするとのデータがあります。ただし、どのレベルが過度なのかは人によるでしょう。他方、1日あたりのカフェイン上限摂取量には目安が出ていて、250mg以上だと、妊娠しやすさを45%減少させるといわれています。
若いうちに医院でできること
編集部
ところで、医院でできる不妊症の予防法はありますか?
吉田先生
当院では、「ブライダルチェック」をおこなっています。対象は、具体的に妊娠を考えている方はもちろん、具体的な予定がない方も含まれます。ブライダルチェックでは、主に血液検査の結果から、風疹の予防接種など、妊娠前におこなったほうがよいことをアドバイスしています。妊婦さんが風疹にかかると、胎児に先天性障がいを残しやすいとされているからです。
編集部
あと、やはり気になるのは加齢です。若いときの卵子を凍結して保存できると聞いたことがあります。
吉田先生
「社会的卵子凍結」などと呼ばれる方法ですが、日本産科婦人科学会では推奨していませんし、当院でもおこなっていません。理由としては、倫理的な問題がクリアできていないことに加え、若いときの卵子が「必ず出産に至る」とは限らないからです。むしろ、「年を取ってからでも容易に妊娠できる」などの誤解が生じ、不妊症の患者さんを増やしかねない方法だと考えます。
編集部
やはり、正しい情報を得られると考え方が変わりますね。
吉田先生
その意味で、婦人科の「かかりつけ医」をもっておくことも、正しい不妊症の予防法に含まれるでしょう。ただし、ご相談内容によっては病気でないため、自費診療になることもあります。日頃の心がけなどは、この記事を参考にしてみてください。
編集部まとめ
吉田先生からさまざまな示唆が得られたものの、「これらを守っていれば、絶対に妊娠できる」という趣旨のアドバイスではありません。他方で、後から悔やんでも、決して時間は元に戻りません。ですから、「考える材料」として受け止め、自分自身と将来を見つめるきっかけにしてみてください。
医院情報
所在地 | 〒305-0032 茨城県つくば市竹園1-6-1 つくば三井ビル4階 |
アクセス | つくばエクスプレス「つくば駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 婦人科、泌尿器科 |