【漫画付き】不妊の原因は女性だけではない!? 男性の不妊検査でわかることとは?


楠原 浩二(楠原ウィメンズクリニック 院長)
精液検査で男性不妊かを調べる


近年、男性の不妊検査を受診する人が増えているそうですね?

そうですね。これまでは「不妊」というと、女性に原因があると思われていたのですが、WHO(世界保健機関)の調べによると男性が原因の不妊が24%、女性が原因の不妊が41%、男女両方が原因の不妊が24%でした。つまり、男性が原因の場合が半分ほどあるのです。半分近くあれば、男性も不妊検査を受ける必要がありますよね。このような情報が広がり、男性の不妊検査が普及したと考えられます。

男性の不妊検査とはどういうものですか?

まず行う検査は「精液検査」です。具体的には、精液量、総精子数、精子濃度、総運動率、前進運動率、正常形態率などを調べます。それぞれに最低ラインの基準値があり、それを満たしていない項目があると不妊の原因の可能性があります。一つが達していなくても、他が正常であれば問題ない場合もありますし、バランスを見ながら判断していきます。

基準値について教えてください。

下記に表でまとめました。ご参考にしてください。
検査項目 | 下限基準値 |
精液量 | 1.5ml以上 |
総合精子数 | 3900万以上 |
精子濃度 | 1500万/ml以上 |
総運動率 | 40%以上 |
前進運動率 | 32%以上 |
正常形態率 | 4%以上 |

他にも行う検査はありますか?

精巣の触診や視診を行います。睾丸の表面にミミズ状の静脈が走っていると、精子の運動率に問題がある場合があります。他にも精子濃度が低い場合、ホルモン検査で原因部位を調べることもありますよ。

検査の際に注意することはありますか?

精液検査をする際は、2日以上、5日以内の禁欲期間であることが理想です。当クリニックの場合は、容器に入れた精子を持参してもらっています。採取してから1〜2時間以内に持ってきてもらうのが理想です。
人工授精か体外受精で妊娠を目指す


検査をした結果、不妊の原因としてどのようなものが多いのですか?

原因として最も多いのが、造精機能障害という精子の異常です。これが全体の8割を占めます。次に続くのが性機能障害(ED)、精子が管に詰まってでてこない閉塞性精路障害、あとはセックスレスも病気とは異なりますがよく相談を受けます。その他、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)もよくある不妊原因の一つですね。

男性に不妊の原因があった場合、治療は可能なのですか?

現段階では精子異常を治すための確実な治療や薬はありません。ビタミン剤や亜鉛、葉酸のようなサプリメントは精子形成に効果的と言われていますが、サプリメントはあくまで栄養補助になりますので、これで精子異常が完全に治るわけではありません。

ではどうしたらいいのですか?

男性に不妊の原因がある場合は、精子そのものを治療するよりも人工授精や体外受精を行います。効果が確実にあるかわからないサプリメントを試しながらでは、時間がかかります。相談に来る方の中には、年齢的に時間がない方もいます。運動のいい精子を採取して、受精する方法は有効です。
夫婦で協力して治療することが大切


男性不妊にも様々な原因があるのですね。

そうですね。最近は男性の意識も変わり始め、最初から夫婦で相談に来る人も多いですよ。また、先ほども話しましたが、セックスレスによる不妊のケースは意外と多いのです。夫婦で協力して、不妊を乗り越えていくことが大切です。

なるほど。妊活は夫婦二人三脚で治療を行なっていくことが重要なのですね。

結果的にどちらに原因があっても、検査は夫婦一緒に行ったほうが早く原因がわかります。人工授精や体外受精をするときは夫婦で協力することが必要なので、最初から一緒に参加する方がいいと思います。

男性の中にはまだ抵抗のある方もいると思いますので、もしメッセージがあればお願いします。

男性側に原因がなくても、男性の協力なくして治療は成り立ちません。「自分だけは大丈夫」と思わずに、悩んでいる女性を積極的にサポートしてあげてください。そして、何度も伝えていますが「不妊検査は夫婦一緒に」、これに尽きると思います。
編集部まとめ
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