飲酒しない人も肝臓に注意! 新しいタイプの脂肪肝“NASH(ナッシュ)”とは

現在、脂肪肝の国内患者は、約1000万人いるといわれていますが、近年、飲酒歴がなく肝炎ウイルスもいない人にもNASH(ナッシュ)やNAFLD(ナッフルディー)と呼ばれる脂肪肝が増えているそうです。少なくとも成人100~200人に1人が罹患していると推定されるNASHとは。現状から原因、治療法、予防法について、肝臓専門医の市田先生、東海林先生にお伺いしました。

監修医師
市田 隆文(湘南東部総合病院 院長)

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富山生まれ。1975年に新潟大学医学部を卒業後、富山医科薬科大学(現・富山大学医学部)、新潟大学医学部第三内科に所属。その間に、ベルギー・ブリュッセル自由大学、米・ネイラーダナ癌研究所、同ピッツバーグ大学移植研究所に留学。1994年には、世界で初めて大人の生体肝移植を成功させた。その後、順天堂大学医学部附属静岡病院消化器内科教授を経て、2014年に湘南東部総合病院の院長に就任、現在に至る。日本脳死移植適応評価委員会委員長、ウイルス肝炎財団理事長などを兼務。新潟薬科大学の客員教授、日本内科学会認定内科医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本消化器病学会評議員ほか。

公益財団法人ウイルス肝炎研究財団
http://www.vhfj.or.jp/

監修医師
東海林 俊之

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新潟大学医学部卒業後、新潟大学医学部第三内科に入局。その後、関連病院や横浜旭中央総合病院などに勤務。2016年に三島駅前消化器・肝臓内科クリニックを開院。内科、消化器、肝臓内科、内視鏡を中心に、専門医療だけでなく地域医療に携わる。日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本内科学会総合内科専門医。

三島駅前消化器・肝臓内科クリニック
http://mishimaekimaeclinic.com/

編集部編集部

「新しいタイプの脂肪肝」と言われる、NAFLD(ナッフルディー)/NASH(ナッシュ)とはどんな病気なのでしょう?

市田先生

脂肪肝の一種で、アルコールと関係のない“非アルコール性”脂肪肝のことを「NAFLD(ナッフルディー)」と呼んでいます。脂肪肝というのは、肝細胞の中に中性脂肪がたまって肝臓自体が大きくなる疾患です。その中の約10%~20%が、進行性の肝炎の「NASH(ナッシュ)」で、進行すると肝硬変や肝がんになります。NAFLDの中でも約90%はほとんど進行しない単純性の脂肪肝で、「NAFL(ナッフル)」といいます。

編集部編集部

NAFLDの中でもNASHがとくに怖いんですね。

東海林先生

そうですね。NAFLDの中に進行性のNASHが含まれているんですが、NASHかどうかは、肝臓の組織の一部を採取する肝生検をしないと正確には診断できません。しかし、肝生検は基本的に入院が必要であり検査の負担もあるため、安易には施行できないところもあり、身体所見や血液検査、腹部エコーの検査などを総合的に判断して診断していくことが重要になります。

編集部編集部

NASHは最近増えているんでしょうか?

市田先生

増えていますよ。昔は脂肪肝の方自体が少なかったですから。食生活が豊かになって食べ過ぎや肥満が増えてきたことも関係していると思います。また、脂肪肝といえばアルコール性が一番の原因ですが、20年ぐらい前から、お酒を飲んでいないのに脂肪肝から肝硬変になって死に至る方が増え始め、NASHという疾患が知られるようになりました。

東海林先生

日本のNAFLDの患者数は1,000万人以上と言われています。その10~20%がNASHと考えられているので、約100~200万人がNASHに罹患していることになります。

NASHの原因はさまざま、ただし生活習慣病の影響力は大

編集部編集部

NASHにならないためには何に気をつければよいのでしょうか。

東海林先生

NASHは、病態のベースに肥満やメタボリック、糖尿病、脂質異常、高血圧などの生活習慣病があることが多いです。そのような方は、食事・運動療法による減量が重要です。体重の7%を減量すると改善することが期待されますので、まずは5kg程度の減量を第一目標にするとよいですね。さらに、生活習慣病を合併している方は、それらの治療を適切に行うことで、肝機能の改善が期待できます。また、ビタミンEは抗酸化作用があり、NASHによる肝機能障害に良いとされます。

編集部編集部

まずは脂肪肝にならないように気をつけることが大事なんですね。

東海林先生

そうですね。過食による肥満は脂肪肝の原因となりやすいので、甘いものやアルコールを控えめにして、トータルカロリーも低く抑えることが脂肪肝の予防につながります。また、定期的な運動も必要です。しかし、脂肪肝は症状がまったくないので、なかなか実践できない方が多いですね。まさに、“言うは易く行うは難し”です。脂肪肝そのものを解消する特効薬はまだないのが現状であり、悩ましいところです。

NASHで症状が現れたときは、生命の危機! 肝臓移植の必要性も

編集部編集部

もしNASHになった場合も症状はないのでしょうか?

市田先生

肝臓は沈黙の臓器といわれていますからね、よほど進行しないと症状はほとんどありません。肝硬変の末期まで進行すると、腹水がたまり、目や顔が黄色くなる黄疸や、吐血、下血、意識障害などの症状が出てきますが、そのときはもう肝臓移植が必要なほど悪化していることもあります。

編集部編集部

市田先生は、世界で最初の成人の生体間肝臓移植に成功したことでも知られていますが、肝硬変まで進行しても、肝臓移植をすればよくなるんでしょうか?

市田先生

はい、移植をすればよくなります。そのためには、肝臓を提供してくれるドナーが必要ですが、肝臓は元々再生能力が高く、たとえば外科手術で40%切り取っても、残った60%が大きくなって再生します。肝臓移植のときも、患者さんの肝臓をすべてとって、ドナーの肝臓の40%を移植したとします。すると、ドナーのほうは1年ぐらいで残った60%の肝臓が再生し、普通の生活ができるようになります。患者に移植した40%の肝臓も、2~3年たつと、ほぼ100%まで再生します。

編集部編集部

肝臓移植は増えているんでしょうか?

市田先生

いいえ、ピークは過ぎ、今は減少傾向にあります。多かった時期は、日本で年間500例ぐらいありましたが、現在は200例ぐらいです。以前はC型肝炎から肝硬変に移行する患者さんが多かったんですが、C型肝炎の治療が進んだことと、肝硬変になっても進行を抑えることができるようになったので、肝臓移植が必要になる方が減ったためです。ただ、NASHはまだ治療法がないので、今後もし患者さんが増えていくと肝臓移植がまた増えるかもしれません。実際、今アメリカではNASHによる肝臓移植が増えています。

編集部まとめ

「脂肪肝」といえば、お酒の飲みすぎでなる、という印象が強かったのですが、最近は、アルコールとは関係のないNAFLD(ナッフルディー)と呼ばれる脂肪肝が増えてきているそうです。ただそのうち約80%は進行しないため心配はないようですが、約10~20%はNASH(ナッシュ)と呼ばれる進行性の肝炎になり、放置しておくと肝硬変に移行する可能性があります。しかも症状がない分、診断が遅れることもあり、直接的な治療薬がないため、恐れられています。

健診で肝機能の異常や脂肪肝を指摘された場合は、早めに病院を受診するのが良いようです。原因は、食べ過ぎや肥満による生活習慣病が関係していることが多いとのこと。予防のためには、メタボリックシンドロームの段階から、食生活を見直し、運動習慣をつけるなど気をつけて脂肪肝にならないことがポイントのようです。

医院情報

湘南東部総合病院・湘南東部クリニック

湘南東部総合病院・湘南東部クリニック
所在地 〒253‐0083 茅ヶ崎市西久保500番地
アクセス 茅ヶ崎駅北口、茅ヶ崎中央病院よりシャトルバス有り
診療科目 総合診療科

三島駅前消化器・肝臓内科クリニック

三島駅前消化器・肝臓内科クリニック
所在地 〒411-0036 静岡県三島市一番町15-21マスダビル2F
アクセス JR東海/伊豆箱根鉄駿豆線「三島駅」南口徒歩1分
診療科目 肝臓内科 胃腸・消化器内科 内視鏡内科 一般内科