インプラント周囲炎から普通の歯は歯周病になる?

公開日:2020/12/26  更新日:2020/12/25

こんにちは、埼玉県さいたま市中央区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長の中西伸介と申します。
インプラント治療は歯を喪失した場合の非常に有効な治療法の一つです。しかしながらきちんと歯周病の治療を行なった後に行わないとインプラントも歯周病となります(インプラント周囲炎)。今回は逆にインプラント周囲炎が原因で歯周病が進行することがあるかについてお話ししていこうと思います。

中西 伸介

執筆歯科医師
中西 伸介(日本歯周病学会専門医)

プロフィールをもっと見る
《保有資格》日本歯周病学会認定歯周病専門医、臨床歯周病学会歯周病認定医等。
《自己紹介》ナカニシデンタルクリニック院長の中西です。近年、歯周病と全身疾患との関連性もわかってきています。歯周病や虫歯は一度なってしまうとそのあといくら頑張って磨いても治ることがないのが実情です。そこでどうせ治らないとあきらめないで一日でも早めの治療をしましょう。

インプラント周囲炎とは?

まずインプラント周囲炎とはインプラントにおける歯周病のことを言います。
インプラントはきちんと治療した場合、インプラント体と歯槽骨が直接強固に付着するオッセオインテグレーションが形成されます。そこに細菌感染過重負担(咬み合わせや歯ぎしりなどの物理的な負担)がかかったりするとオッセオインテグレーションが破壊されインプラント周囲の歯槽骨が溶けてしまい、周りの歯肉の発赤や触れた際の出血、また周囲の歯周ポケットから膿が出たりします。さらに進行するとインプラント周囲の歯肉が下がってしまい、場合によってはインプラントの動揺や脱落が生じます。
またインプラント周囲組織に生じる炎症性病変にはインプラント周囲粘膜炎インプラント周囲炎に分かれています。

普通の歯周病との違いは?

インプラントは口腔内に埋入されるのと同時に口腔内の細菌感染にさらされます。インプラントと歯肉上皮の接着機構は天然歯と大きく変わりませんが、上皮とインプラントの接着機構は上皮不着の深部でのみで形成されています。このため細菌等外来因子が組織内に移行しやすくなっています。つまり自分の歯と比べて感染に対する抵抗力が弱いのです。また天然歯には歯根周囲に歯根膜と呼ばれる靭帯が存在するためクッションの役割を果たし生理的な範囲内で揺れますが、インプラントは直接歯槽骨と結合するため全く揺れません。
歯周病インプラント周囲炎も主な原因は細菌ですが細菌叢は類似しており、歯周病原因菌とされているA.a菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans), P.g菌(Porphyromonas gingivalis), P.i菌(Prevotella intermedia), T.d菌(Treponema denticola)などが高い比率で含まれています。これらの細菌が自分の歯の歯周病部位からインプラント周囲溝に伝播、感染することがこれまでに報告されています。
また細菌感染により失敗したインプラント周囲からは同一口腔内から検出された細菌と類似したものが検出されています。これらの報告によりインプラント治療はしっかりとした歯周病治療を行なった後に行うことが必須とされています。

インプラント周囲炎の治療は?

インプラント周囲炎の原因には外傷性のもの(噛み合わせの力や方向、歯ぎしりなど)と細菌感染性のものに分かれます。
前述の通り歯周組織とインプラント周囲組織の機能と構造にはいくつかの違いがありますので感染の除去咬合関係の修正が行われることになります。
まず該当するインプラント周囲だけではなく残存する歯の歯周病のチェック及び治療を行います。
プラークコントロールの徹底機械的な清掃殺菌療法抗菌療法などがあり重症度に応じて対応します。重症度が高くなれば手術をする外科的処置を行いますがどの時期であってもインプラント体表面の微細構造に付着した細菌バイオフィルムを徹底的に除去することが重要となります。清掃には特殊な器具を用いたりレーザー等を使用することもあります。
インプラント周囲炎が初期の場合は機械的清掃を行います。中等度の場合は清掃に加えて抗菌的清掃として薬剤等を用います。さらに進行した場合は外科的切除療法や再生療法、保存が難しい場合にはインプラント除去を行います。

インプラント周囲炎から普通の歯は歯周病になるか?

これまで記載したことから歯周病がきちんと治療されていないとインプラント周囲炎のリスクが高まることをお話ししてきましたが逆のケースはどうでしょうか?様々な報告がありますがインプラント周囲炎が存在すると歯周病になるケースはまだ明確には報告されていません。しかしながらインプラント周囲炎による周囲組織の破壊や原因である細菌が歯周病原因菌と類似していることから少なくとも局所、つまりインプラント周囲炎の隣接している歯周組織への影響はあると考えられます。インプラント周囲の歯槽骨が高度に吸収し、隣の歯に及ぶ場合は歯の揺れであったり歯周病の症状を生じるケースがあります。やはりインプラント周囲炎の場合は早期の治療が必要となってきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
インプラント周囲炎自体が口腔内全体の歯周病の原因になるとまでは現在では言えませんが治療に関しては必ず必要になってきます。インプラント周囲炎でも初期の病変であるインプラント粘膜周囲炎ではしっかりとした治療を行えば歯肉が下がったり周囲組織の変化なく治療が進められますので早期発見さ浮き治療が重要となってきます。ぜひ歯周病専門医でのしっかりした診断及び治療、予防をおすすめします。