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「直腸脱」の初期症状や原因はご存知ですか?再発についてなど医師が監修!

 更新日:2023/07/04
「直腸脱」の初期症状や原因はご存知ですか?再発についてなども医師が監修!

高齢になると便に関する各種障害がみられるようになります。直腸脱もその1つとして知られています。

直腸脱は腸が内側にめくれて肛門から出てくる症状です。排便時の「いきみ」がきっかけで起こります。

また、直腸脱は肛門の筋肉が緩むことで起こるとされており、高齢の女性に多いのも特徴です。

ただし若い世代でも直腸脱が確認されることがあります。それは長時間の排便やストレスなどを要因として起こることが一般的です。

このようにどの世代でも起こり得る直腸脱ですが、具体的な症状や要因について理解していない方が多いと思います。

この記事では直腸脱の症状・原因・入院期・再発・後遺症などについて解説します。類似する他の病気との違いも解説するので、最後までお読みいただけると幸いです。

直腸脱に関する正しい知識を身につけ、万が一のときに適切な対処ができるよう意識しましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

直腸脱の症状と原因

男性医師

直腸脱の症状を教えてください。

直腸脱には大きく分けて完全直腸脱と直腸重積の2つがあります。完全直腸脱とは、腸が腸の中に入り込み、肛門から出てしまう症状のことです。
一方で直腸重積は同じように腸が腸の中に入り込んでいるものの、肛門からは出ていない症状を指します。「重積」とは、腸が腸に入り込んでいる状態のことを指します。靴下を脱いだときに内側がめくれて重なり合う状態をイメージするとわかりやすいです。
なお、一般的に直腸脱といわれる場合、前者の完全直腸脱を指すことが多いです。

初期症状はありますか?

直腸脱の初期症状は、便を催すタイミングが小分けになる・下腹部に違和感を覚える・気づいたら下着が便で汚れているなどが挙げられます。これらが進行すると、排便時のいきみで直腸が肛門から出てくるようになります。
ただし初期症状の段階ではいきみをやめると自然に肛門の中へ腸が戻ることが多いのが特徴です。

直腸脱の原因を教えてください。

直腸脱の原因は肛門括約筋の緩みです。肛門括約筋は、肛門を締める働きがあります。筋肉であるため加齢とともに衰えるものです。肛門括約筋の緩みは、特に高齢の女性に多い傾向があります。
そのほか、排便時のいきみが原因として起こることもあります。長時間のトイレなどでいきみすぎると、肛門括約筋が緩んでいなくても直腸脱を起こす可能性があるのです。

脱肛とはどのように違うのでしょうか?

脱肛とは、肛門の内側にある痔が大きくなりすぎて、肛門の内側の皮膚を引きずりこんで肛門の外へ出てしまうことです。
一方で直腸脱で出てくるのは腸です。肛門から出てくるという点では似ていますが、腸は内臓の一部なので、人間にとって重要な器官だといえます。

直腸脱の治療と入院期間

点滴

直腸脱はどのように診断されますか?

直腸脱の診断方法は主に以下の3つです。

  • 視診:視診とは、目視による症状の確認です。診察時に直腸脱の症状を確認できれば容易に判断できます。診察時に症状が確認できない場合、自宅で症状が発生しているときの様子を撮影した写真を持参することでも代替できます。
  • 排便造影検査:実際にいきみやバリウムなどによって排便を再現し、その様子をX線で撮影する方法です。排便の過程を観察することで便に関連した障害の原因を突き止めることができます。
  • 大腸内視鏡検査:内視鏡を用いた検査です。腸内の様子が重積しているかどうかを観察することで直腸脱の診断が可能です。大腸内視鏡検査を受ける場合、前日の食事は消化の良いものを摂るようにしましょう。

治療方法を教えてください。

直腸脱の治療は主に経腹手術と経会陰(けいえいん)手術の2種類に分かれます。経腹手術は腹を切開して行う手術です。垂れ下がった腸を引っ張り上げて骨膜などに固定するのが目的となります。
一方で経会陰手術は肛門から針を挿入して行う手術方法で、一般的には経腹手術の負担に耐えられない高齢者に適した手術方法です。経会陰手術では肛門の外に出てしまった腸を縫い付けることで徐々に縮めていきます。その後は紐状の人工物を肛門に取り付け、衰えた肛門括約筋を補助します。

手術する場合の入院期間を教えてください。

入院期間は経腹手術と経会陰手術のどちらを選択するかで分かれます。また、患者の回復などにより個人差があるため一概には断定できません。
一般的には、経腹手術においては腹を切開するため経会陰手術よりも回復に時間を要し、入院期間が長くなるとされています。ただし近年、技術発達により切開範囲を狭めることが可能となっており、入院期間は10日程度で終了することもあります。

直腸脱を自分で戻すことはできますか?

直腸脱は初期の段階であれば自分で戻すことは可能です。初めはいきんだ際に脱出が起こることがありますが、いきむのをやめると自然に元に戻ります。
しかし症状が悪化すると手を使わなければ戻らない状態になっていき、最終的には10cmほど腸が露出してしまうほど悪化する可能性があります。その場合、自分で戻すことが厳しくなり、医療機関で適切な処置を施してもらわなければなりません。

直腸脱の後遺症と再発

カウンセリング

直腸脱の手術に後遺症はありますか?

直腸脱の手術では稀に後遺症がみられることがあります。再発による排便障害などです。また後遺症ではありませんが、経会陰手術の方法によると紐状の人工物を肛門につけて肛門括約筋を補助するため、患部に人工物が残ることとなります。

直腸脱は再発しますか?

先述したとおり、直腸脱は再発の可能性があります。特に経会陰手術は再発の可能性が比較的高いとされています。局所麻酔だけで手術ができることや入院期間が短いことがメリットですが、経腹手術と比較すると再発率が16〜30%と高めなのです。

直腸脱を放置するとどうなるのでしょうか?

既に解説したように、直腸脱は徐々に悪化していく病気です。そのため初期症状のなるべく早い段階で異変に気付き、治療を開始するのが理想です。
日常生活において違和感を覚えながらも直腸脱を放置してしまうと、上記で解説したような手術をせざるを得なくなります。手術は体への負担も懸念されるため、早期発見・早期治療が重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

直腸脱は腸が肛門の外に出てしまう病気であり、場合によっては自分で戻せず緊急搬送されてしまうほど危険です。主に高齢の女性に多いのが特徴ですが、実は0〜3歳までの乳幼児でも発症する可能性があります。
腸は内臓の一部であり、体の外に出ている状況は本来危険な状況です。直腸脱は肛門括約筋の衰えが原因となっているため、日頃からウォーキングなどの軽い運動をするだけでも骨盤周辺の筋肉が鍛えられ、予防に一定の効果があるとされています。
また、日常生活における些細な違和感などを見逃さず、気になることがあればすぐに医療機関を受診するのが推奨されます。日頃からの心がけで大切な体を守りましょう。

編集部まとめ

会話をする女性達
この記事では直腸脱について症状・原因・入院期間・再発・後遺症などについて解説しました。

直腸脱は腸が内側にめくれた状態で肛門の外に出てしまう病気です。主に肛門括約筋の衰えにより起こるほか、長時間の排便における「いきみ」などが原因で発症します。

直腸脱は初期段階においては軽微な失禁などの症状で現れますが、徐々に腸が肛門の外に出てくるようになり、最終的には自分で戻せないほど露出してしまいます。

このような状態になると手術が必要です。手術には経腹手術と経会陰手術の2種類があり、経会陰手術の方が比較的負担が少なく、入院期間も短期間で終わります。

ただし経会陰手術においては再発の可能性が高くなる傾向にあり、その結果として排便障害などの後遺症になることがデメリットです。

一方で経腹手術は全身麻酔で行うため体への負担は大きいですが、比較的再発リスクが低いので若い方には向いている手術方法だといえます。

この記事を通して直腸脱の概要・対処法などについて理解を深めていただけたでしょうか。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

この記事の監修医師