「恥骨結合炎」について医師が解説!出産後や運動のしすぎには要注意!
恥骨結合炎とは恥骨間円板という部分を酷使することにより炎症が起きてしまう病気です。主に恥骨結合部に痛みを感じることが多い病気といえます。
かつては婦人科や泌尿器科での手術後の合併症として発症することが多かったのですが、近頃では運動のしすぎによる発症が多くなってきています。
スポーツなど運動が原因となる一方でその他の原因によって発症してしまうこともあり、一概に運動だけが原因とはいえない病気です。
恥骨部や歩行時の痛みが気になる方は恥骨結合炎についていっしょに考えてみましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
恥骨結合炎の症状と原因
恥骨結合炎とはどのような病気ですか?
主にサッカー・ラグビー・アメリカンフットボール・ホッケー・中距離また長距離ランナーといった活動性の高いスポーツ選手によくみられる病気であり再発率も高いといえるものでもあります。一度恥骨結合炎にかかった場合は再発防止のために注意深く活動を再開する必要があるでしょう。
また婦人科や泌尿器科で受けた手術後の合併症として発症する場合も多い病気です。
恥骨結合炎の症状について教えてください。
また化膿性恥骨結合炎という稀な恥骨結合炎では、一般的な恥骨結合炎での炎症に加え患部に膿瘍形成がみられます。自覚症状としては下腹部の痛みや鼠蹊部のリンパ節の膨れといったものがあるでしょう。
このような化膿性恥骨結合炎では腹部の痛みを感じることがあるため、虫垂炎や臓器の炎症による痛みと誤診されるケースもあります。
恥骨結合炎の考えられる原因とはなんですか?
スポーツでもランニングやキックなど、足を使った反復的な運動が特に原因として挙げられるでしょう。ランニングやキックのような反復的な運動の繰り返しによって恥骨結合部や恥骨間円板に負担がかかると炎症を起こす確率が高くなります。
またスポーツに関する原因以外のものとして、女性の場合では日常的な生活習慣や出産、他の病気の影響によって恥骨結合炎を発症することがあります。
恥骨結合炎の治療について
恥骨結合炎の治療方法について教えてください。
痛みが軽減されてきたら太ももの内側、内転筋群にマッサージ・ストレッチ・電気治療などを施して柔軟性を高めることになるでしょう。治療については場合によって薬物療法や外科的療法を施すこともあります。
これらの治療に加え、運動によるリハビリテーションとして体幹トレーニングや股関節周囲筋の筋トレを行うことがあります。また痛みの軽減した程度を確認しながら有酸素運動や3割ほどのジョギングから行うリハビリテーションを始めることもあるでしょう。
恥骨結合炎の治療期間はどのくらいですか?
発症してから治療に要する期間は個人差があるでしょうが、おおよそ1〜2ヶ月程度になることが多いでしょう。なお治療が終わったとしても前述のように再発の恐れがある病気なので、スポーツの活動を開始するまでは3週間程度の制限を必要とします。
治療が終わってからもリハビリテーションとして体幹トレーニングや有酸素運動、軽めのジョギングなどを行い、スポーツでの復帰に備えるようにしてください。
恥骨結合炎は何科に行けばいいですか?
稀に発症の可能性がある化膿性恥骨結合炎の場合、腹部に痛みを伴うことがあるので消化器科で診察を受けてしまうことがあるかもしれません。消化器科で診察した場合、臓器の炎症性疾患と誤診される可能性があります。腹部の痛みのほかに鼠蹊部の痛みやリンパ節の腫れはないか、できれば確認しておくことも必要かもしれません。
なお化膿性の恥骨結合炎も整形外科で診察を受けることにより、適切な診察と治療が施されます。また女性の恥骨結合炎の場合も整形外科で診察を受けましょう。
恥骨結合部の痛みゆえに他の病気の恐れもありますが、婦人科で診察を受け恥骨結合炎と診断された場合は医師と相談して整形外科の診察を受けるのもよいでしょう。
恥骨結合炎は完治しますか?
もし再発もせず完全に克服を目指すのであれば、恥骨結合炎にならないための予防を行う必要があるでしょう。予防については後に述べますので、そちらを参考にしてみてください。
恥骨結合炎の発症について
恥骨結合炎はどのような人に多いですか?
また出産を経験した女性のうち、育児でお子さんを抱っこするというような恥骨部分に負担がかかる人にも恥骨結合炎になりやすい傾向があるといえます。またスポーツ選手でない人にもいえることですが、姿勢が悪いと恥骨に負担がかかり恥骨結合炎になる可能性があるでしょう。
恥骨結合炎の予防はできますか?
その第一としてあげるのは普段の姿勢を見直すことです。恥骨は上半身の荷重がかかりやすい部位です。前傾姿勢をとっていたり左右どちらかに傾いた姿勢をとっていたりすると、荷重が一部にかかってしまい痛みを引き起こす原因になる可能性があります。そこで恥骨に負担をかけない姿勢を心がけるようにすると恥骨結合炎を防ぐことにつながるでしょう。
どの様な姿勢を取ればよいかというと、背筋を伸ばし腰部はやや後屈させるという姿勢です。この際、体が左右のどちらかに傾くことがないように意識しましょう。また座位の時に足を組むと恥骨に負担をかけるため、足組みはなるべく控えてください。
特に女性に注意していただきたいのが、肥満に気をつけることとなります。女性の恥骨の位置は男性と比較して体重の影響を受けやすいためです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
普段から偏った姿勢を取らないよう心がけ、恥骨結合炎を発症・再発させないよう気をつけて暮らしたいものです。スポーツ選手は下肢に無理な負担をかけず、予防運動などを取り入れてトレーニングしてください。
編集部まとめ
アスリートや女性に多く発症する恥骨結合炎は、体に負担がかかった場合に発症してしまう可能性が高くなります。
それを踏まえると過度のトレーニングや無理な姿勢を取らないように普段から注意したいものですが、トレーニングや物事に集中している時はつい忘れがちになってしまいます。
正しい姿勢を忘れてしまっても、痛みというものは忘れ難い記憶として残ります。もし恥骨部分や股関節などに痛みを感じたら整形外科で診察することは怠らないようにしましょう。