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「慢性骨髄性白血病の治療法」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】

 公開日:2024/01/04
「慢性骨髄性白血病の治療法」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】

成人白血病の約20%を占めるとされる慢性骨髄性白血病(CML)ですが、どのような治療法があるのでしょうか。

毎年、10万人に1人が発症していますが、はっきりとした原因は明らかになっていません。

しかし近年の研究で、遺伝子が傷つくことによりがん細胞が発生するというのが分かってきています。

この記事では、慢性骨髄性白血病(CML)の治療法とあわせて症状・原因・検査方法を解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性骨髄性白血病とは?

慢性骨髄性白血病(CML)とは、細胞増殖のコントロールがきかず、体内で腫瘍化した細胞が制限なく増えてしまう病です。白血球の増加など通常の白血病と同様の変化がみられますが、フィラデルフィア染色体の有無・BCR-ABL融合遺伝子の有無により、慢性骨髄性白血病と区別されます。
ここからは慢性骨髄性白血病を発症する直接的な原因・発症してからの経過について解説します。

造血幹細胞に異常が起こる

慢性骨髄性白血病の直接的な原因は、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)に異常が起こることです。通常体内では「造血幹細胞」と呼ばれる組織で白血球・赤血球・血小板などの、血液を形作る細胞がコントロールされたうえで日々増殖を繰り返しています。
しかしこの造血幹細胞に異常が起こると、本来ストップをかけるべき腫瘍化した細胞にまで、増殖するよう命令が出されてしまいます。その結果、腫瘍化した細胞が制限なく増殖を繰り返し、白血球の異常な増加に繋がるのです。無秩序な増殖は未成熟な血球の発生にも繋がり、血液本来の機能も落ちてしまいます。
体重減少・全身の倦怠感など体全体にまで影響を及ぼすようになるでしょう。脾臓の腫れがみられるのも特徴で、腹部膨満感を覚えることもあります。

慢性期・移行期・急性期の3つの病期をたどる

慢性骨髄性白血病では発症後、慢性期・移行期・急性期の3つの病期をたどります。慢性期は造血幹細胞に異常が起こり始めた段階で、進行は遅いです。細胞の増加に余分なエネルギーを消費するため、体重減少・倦怠感などの症状がみられるようになります。しかしこれらの症状は軽度のため自覚される方は多くありません。
健康診断などで白血球の増加が確認されるなどのきっかけがなければ、ご自身で気づくのは難しいでしょう。この慢性期からさらに症状が進行すると、移行期・急性期と呼ばれる段階へ入ります。移行期からは徐々に進行が早くなり、急性期へと進むにつれ次第に白血病と同様の症状が強く現れるようになります。
移行期に入ってからは発熱・貧血など自覚症状がみられるほか、染色体・遺伝子にそれまでとは異なる異常も現れ始めるため、多くの方が何らかの異変を感じることでしょう。ただし、多くの場合慢性期の段階で慢性骨髄性白血病の発見にいたっています。日頃から定期的な健康診断を受けることが重要です。

慢性骨髄性白血病の治療法

造血幹細胞の異常により引き起こされる慢性骨髄性白血病ですが、その治療法はどのようなものなのでしょうか。現在主流となっている治療法には以下の2つがあります。

  • 分子標的薬 (チロシンキナーゼ阻害剤)
  • 造血幹細胞移植

ここからは上記2つの治療法について詳しく解説します。

分子標的薬 (チロシンキナーゼ阻害剤)

慢性骨髄性白血病の治療法の第一選択薬となるのが分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)です。この薬は誤って腫瘍化した細胞を増殖するよう命令を出しているタンパク質へ、特異的に作用することで、正常な状態へと戻すことを目的とした治療薬です。
チロシンキナーゼ阻害剤には第1~3世代まで計5種類が存在しますが、それぞれ特徴が異なるため患者さんに合わせた適切なものが使用されます。これらの薬の効果は非常に高く、慢性期から移行期・急性期へと進行するのを防ぐ効果が実証されています。服用後はむくみ・吐き気・下痢などの副作用をもたらすことが分かっていますが、ほとんどの場合は日常的な内服が可能な範囲です。
ただし、チロシンキナーゼ阻害剤は慢性期には高い効果を発揮しますが、移行期・急性期に入ってからは単体の服用だけでは効果が不十分とされています。移行期・急性期からは造血幹細胞移植も併用して治療が行われるでしょう。移植については次の項で解説します。

造血幹細胞移植

移行期・急性期からは造血幹細胞移植が治療の選択肢に入ってきます。造血幹細胞移植とはその名のとおり、造血幹細胞をドナーもしくは自身から事前採取したものを移植する治療法です。慢性骨髄性白血病の直接的な原因は造血幹細胞に異常が起こるためと先述しました。
よって異常をきたしている造血幹細胞を取り除き、正常な働きをする造血幹細胞を移植することで、本来の働きを取り戻すことを目的とする治療法になります。移植前には放射線治療・化学療法などを実施し、造血幹細胞の移植は点滴の投与により行います。移植された造血幹細胞が患者さんの骨髄に根付くと、そこから血球などが造られるようになるため、長期的にみて健康な体を取り戻せる可能性のある治療法だといえるでしょう。

慢性骨髄性白血病の症状

進行の遅い慢性期を経て、移行期・急性期へと進むと症状が強く現れるようになる慢性骨髄性白血病ですが、症状はどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは症状を慢性期と移行期・急性期に分けて詳しく解説します。

慢性期の症状

慢性期の症状として挙げられるのは以下の7つです。

  • 全身倦怠感
  • 体重減少
  • 腹部膨満感
  • 胃の不快感
  • 貧血
  • 出血(鼻血・歯茎など)
  • 発熱

ただし、これらの症状から病を自覚される方は少なく、健康診断などで偶発的に発見されることがほとんどです。

移行期・急性期の症状

移行期・急性期の症状として挙げられるのは以下の7つです。

  • 発熱
  • 貧血
  • あざ
  • 脾臓の腫れ
  • 免疫力の低下
  • 骨の痛み
  • 息切れ・動悸

移行期・急性期の症状は急性骨髄性白血病と同様のものですので、早急な入院治療を要します。高熱が続くなど普段とは違う様子がみられるはずですから、おかしいと感じたら速やかに病院を受診しましょう。

慢性骨髄性白血病の原因

慢性骨髄性白血病の直接的な原因は造血幹細胞に異常が起こることによるものとお伝えしました。しかしその根本的な原因は染色体に異常が起こるためと解明されています。
遺伝子情報が記されている染色体の9番目・22番目に異常が起こり切れてしまうと、フィラデルフィア染色体と呼ばれる短い染色体が造られます。慢性骨髄性白血病の患者さんにはこの特異的な染色体がみられることから、このフィラデルフィア染色体が慢性骨髄性白血病の原因といえるでしょう。なお、遺伝的な要因が絡むと「子どもに遺伝するのでは」と心配される方もいますが、慢性骨髄性白血病は遺伝の心配はありません。

慢性骨髄性白血病の検査法

健康診断などの血液検査の結果、白血球の増加が認められると血液・リンパのがんが疑われます。慢性骨髄性白血病の検査法は以下4つのフローを経るのが一般的です。

  • 血球検査・生化学検査
  • 分子遺伝学的検査
  • 骨髄検査
  • 画像検査

それぞれの治療法について以下で詳しく解説します。

血球検査・生化学検査

慢性骨髄性白血病の検査ではまず血球検査・生化学検査を行います。血液中の白血球のほか、赤血球・血小板の数値を調べることで、白血球が増加している原因がどこにあるのか詳しく調査するのです。
慢性骨髄性白血病では未成熟な血球が増殖することも明らかになっているため、芽球(がきゅう)が多く確認されると慢性骨髄性白血病が疑われ、より精密な検査へと進みます。

分子遺伝学的検査

血液中のBCR-ABL融合遺伝子の量を測定し、慢性骨髄性白血病に該当するか診断します。
染色体を検査することによりBCR-ABL融合遺伝子の検出が可能で、これが同定・一定の数値が検出されると慢性骨髄性白血病と診断する補助材料になります。

骨髄検査

骨髄検査は骨髄を採取し直接骨髄液の情報を調べる検査法です。腰骨の後ろに細い注射針を指し骨髄液を採取します。
顕微鏡検査により骨髄性白血病特有の血中成分比率を呈していないかを確認する重要な検査法です。

画像検査

全身状態の把握には画像検査を行います。レントゲン検査・心電図・エコー検査を行いリンパ節腫大の有無などを確認します。治療前のほか、治療開始後も定期的に行うことで治療による影響を確認するのです。

「慢性骨髄性白血病の治療法」についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の症状・原因・治療法などを紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病の治療法」についてよくある質問にお答えします。

慢性骨髄性白血病は必ず急性期に移行しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性骨髄性白血病は根治を目指すのは難しいですが、ほとんどの患者さんが慢性期の段階で病名が判明します。そのため薬で病気の進行をコントロールすることで、移行期・急性期への移行を緩やかにし、安定した生活を長く送れるでしょう。

治療を継続することで完治しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

完治は難しいですが、治療を継続することにより病期の進行を抑えることはできます。完治しないからと放置し移行期や急性期に移行すると治療が困難になります。

編集部まとめ

慢性骨髄性白血病は移行期・急性期に移行すると治療が困難になる病気ですが、慢性期のうちに治療を始めることで進行を抑えられます。

慢性期の段階で病気が判明する場合が多いので、記事内でもお伝えしたように定期的な健康診断が大事です。

「慢性骨髄性白血病」も含まれる骨髄増殖性腫瘍に分類される病気

「慢性骨髄性白血病」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 真性多血症
  • 本態性血小板血症
  • 原発性骨髄線維症
  • 慢性好中球性白血病
  • 慢性好酸球性白血病

慢性骨髄性白血病は造血幹細胞に異常をきたすことで発症する病です。健康診断で白血球の増加傾向がみられるなど血液の異常が認められたら早急に病院を受診しましょう。

「慢性骨髄性白血病」と関連する症状

「慢性骨髄性白血病」と関連する症状は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 全身倦怠感
  • 体重減少
  • 腹部膨満感
  • 胃の不快感
  • 貧血
  • 出血(鼻血・歯茎など)
  • あざ
  • 脾臓の腫れ
  • 免疫力の低下
  • 骨の痛み
  • 息切れ・動悸

慢性骨髄性白血病の初期段階である慢性期では自覚できる症状は多くありません。しかし治療薬の効果を充分得るためには、慢性期から治療を開始することが重要となります。
全身の倦怠感・貧血・体重の減少など目立った症状ではなくても、不調が長く続くようであれば放置せずに検査を受けることが大切です。

この記事の監修医師