FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. 脳疾患
  5. 「アルコール性認知症」になりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

「アルコール性認知症」になりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2024/09/03
「アルコール性認知症」になりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

アルコール性認知症とは?Medical DOC監修医がアルコール性認知症の症状や特徴・原因・なりやすい人の特徴・治療法・セルフチェック法・予防法などを解説します。

秋谷 進

監修医師
秋谷 進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

プロフィールをもっと見る
1999年、金沢医科大学卒業。金沢医科大学研修医を経て2001年国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)小児神経科、2004年6月獨協医科大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)小児科、2016年児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職(東京西徳洲会病院小児医療センター)。専門は小児神経学、児童精神科学。

「アルコール性認知症」とは?

アルコール性認知症は、文字通り、長期間にわたる過剰なアルコール摂取によって引き起こされる認知障害のこと。
アルコールというと、一時的に酔っ払うだけで、肝臓以外に影響は残らないのではと思いがちですが、そうではありません。
実際、国立がんセンターからの報告によると、5年間飲酒を繰り返していると認知症になるリスクは1.34倍から1.96倍にものぼるのです。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは大量飲酒による認知障害を「アルコール性認知症」として、注意喚起を促しています。

アルコール性認知症の代表的な症状や特徴

アルコール性認知症の代表的な症状は次の通りです。

記憶力の低下

アルコール性認知症の患者は、新しい情報を保持することが困難です。例えば、数分前に話された内容や出来事を忘れてしまうことが頻繁に起こります。
さらに長期間のアルコール摂取は、長期記憶にも影響を及ぼします。過去の出来事や重要な個人的な情報(例:誕生日や結婚記念日)を忘れてしまうことがあるのです。
また、記憶の障害により、患者は過去の出来事を誤って記憶したり、現実とは異なる出来事を信じることがあります。そのため、周囲とのコミュニケーションや人間関係に混乱が生じることがありますね。

判断力の欠如

アルコール性認知症の患者は、日常的な意思決定において混乱や迷いが生じやすくなります。例えば、買い物や金銭管理、簡単な家事など、通常であれば簡単にできる判断が困難になってくるでしょう。
また、衝動的な行動が増え、慎重な考慮なしに即時的な決定を下すことが多くなり、危険な状況や不適切な行動が増加してきます。
そして、アルコール依存により、社会的な生活が困難になってくるのです。

言語能力の低下

アルコール性認知症の方は、言葉を流暢に連続して発話することが難しくなります。言葉を探す時間が増え、会話の流れが途切れがちになります。
もちろんアルコール性認知症の患者は、単語を思い出すのにも苦労することが多く、特定の単語を使用する能力が低下します。
コミュニケーションをとるのも一苦労なので、社会性がますます乏しくなっていきます。

アルコール性認知症の主な原因

アルコール性認知症の主な原因は、長期間にわたる過剰なアルコール摂取による脳の損傷や栄養不足と言われています。

脳の萎縮が起こる

長期間の過剰なアルコール摂取は、脳の神経細胞を直接的に損傷します。アルコールは神経毒性を持ち、特に前頭葉と側頭葉に影響を与え、脳自体も萎縮してくるのです。
このようにアルコールは神経にも直接ダメージを与えていきます。

栄養不足にもなる

アルコール依存症の人々はしばしば栄養失調状態になることがあります。
特に有名なのがビタミンB1(チアミン)の欠乏です。アルコールによるチアミン欠乏は、「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」として知られる重度の記憶障害を引き起こすことがありますね。

神経伝達物質にも影響がある

脳が萎縮するだけでなく、神経伝達物質にも影響がでてきます。
特にグルタミン酸やGABA(ガンマアミノ酪酸)の機能が低下し、神経間の情報伝達が正常に行われないとも言われていますね。
そのため、神経伝達物質が少なくなると脳活自体が低下し、認知機能や記憶力が低下するのです。

アルコール性認知症になりやすい人の特徴

では、アルコール性認知症になりやすい人の特徴はどんな人なのでしょうか?主に次の方は気を付けるべきであると言えます。

普段のアルコール消費量が多い方

当然ですが、普段からアルコールの消費量が多い方は、脳のダメージも蓄積して、認知症になりやすいことがわかっています。
国立がん研究センターからの報告によると、週75g未満の飲酒量の方の認知症リスクを1とすると、週75〜150g以下の方、つまりちょっとお酒の量が多い人の認知症リスクは1.34倍になります。しかしそれ以上に週450g以上の大量飲酒になる方は認知症リスクは1.96倍にも跳ね上がるのです。
したがって、認知症が心配な方で飲酒が好きな方は、せめて普段の飲酒の量をちょっと減らすことから始めるとよいでしょう。

基礎疾患がある方

2022年の台湾の研究によると、高血圧や糖尿病、慢性腎臓病といった基礎疾患を持っている方の方がそうでない方よりも飲酒による認知機能の影響を受けやすいことがいわれています。
例えば、高血圧のグループでは、多変量ロジスティック回帰の結果、大量飲酒者は少量飲酒者と比較して6.08倍の認知機能障害のリスクと関係があることが言われていますね。
慢性腎臓病や高血圧、糖尿病の方は、動脈硬化や脳の低灌流を引き起こし、脳への酸素供給を低下させて神経損傷につながる可能性があることがいわれています。そのため、アルコールでさらに神経にダメージが加わると容易に認知症につながりやすいというわけです。
したがって、もともと基礎疾患がある方は特にアルコールの消費量に注意が必要ということになります。

アルコール性認知症の治療法

断酒

最も重要な治療法はアルコールの完全な断酒です。
断酒によって、さらなる脳の損傷を防ぎ、症状の進行を遅らせることができます。断酒は専門の医療機関でのサポートを受けながら行うことが推奨されますね。
また、アルコール依存症の方は、ジスルフィラム・シアナミド・アカンプロサートなどといった、抗酒薬や断酒を維持するための薬が使用されます。

栄養療法

アルコール性認知症の場合は、しばしばビタミンB1が不足するために症状が出てくるケースがあります。そのため、ビタミンB1(チアミン)の補充が特に重要です。
その他、バランスの取れた食事を心がけることで、全体的な健康状態を改善していくことも大切になってきます。

リハビリテーション

認知機能の改善を目的としたリハビリテーションも効果的。
特に、認知行動療法や作業療法、記憶訓練プログラムなどを通じて、アルコールによる弊害を十分にすることで再発を防ぎます。
そのため、アルコール性認知症を疑ったら、神経内科や精神科をまず受診することをオススメします。

受診・予防の目安となる「アルコール性認知症」のセルフチェック法

アルコール性認知症は早期発見と適切な治療が大切。まずは、セルフチェックをしてみましょう。以下の質問に答えてください。
日常生活で、最近の出来事や会話の内容を忘れることが多くなった。

  • 同じ質問を何度も繰り返す。
  • 約束や予定を忘れることが増えた。
  • 金銭管理が困難になり、支払いの遅延や過剰な出費が増えている。
  • 物事の順序を立てて計画するのが難しくなった。
  • 会話の流れが途切れがちになり、相手の話を理解するのが難しい。
  • 一つの作業に集中できなくなり、注意散漫になることが多い。
  • 複数のことを同時に行うのが難しくなる。
  • 長時間の読書やテレビ視聴が困難になる。
  • 急に攻撃的になったり、無気力になったりする。

次の10個のうち、4個以上あてはまる場合で、アルコールの消費量が激しい場合はアルコール性認知症を疑います。該当される方は脳神経内科や精神神経科に受診するようにしましょう。

アルコール性認知症の予防法

なるべくアルコールの量を減らしていく

アルコール性認知症がアルコールから来ている以上、普段のアルコールの量を減らしていくのはとても大切。アルコール依存をへらし、脳のダメージを最小限にすることにもつながります。

栄養バランスを改善する

アルコールの消費量が激しいと、ビタミンB1をはじめとして、全体的な栄養不足に陥りやすくなります。まずは、ビタミンB1(チアミン)を豊富に含む食品(全粒穀物、豚肉、豆類、ナッツなど)を積極的に摂取するようにしましょう。
抗酸化物質やオメガ-3脂肪酸を含むような、野菜やナッツ類なども効果的です。

定期的な運動

定期的な運動は、心血管系の健康を改善し、脳への血流を増加させることで認知機能を維持します。また、運動はストレスを軽減し、全体的な健康状態を向上させますね。
特に、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を週に150分以上行うようにしてみましょう。

「アルコール性認知症」についてよくある質問

ここまでアルコール性認知症について紹介しました。ここでは「アルコール性認知症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

アルコール性認知症は完治するのでしょうか?

秋谷 進秋谷 進 医師

アルコール性認知症は完全に治ることは難しいですが、早期に発見し、適切な治療を行うことで症状の進行を遅らせたり、一部の認知機能を回復させることが可能です。
最も重要なことはアルコールの完全な断酒です。断酒により脳のさらなる損傷を防ぎ、リハビリテーションや適切な栄養補給、精神的サポートを受けることで、生活の質を改善することができるでしょう。

アルコール性認知症を発症すると物忘れのような症状が現れますか?

秋谷 進秋谷 進 医師

はい、アルコール性認知症では物忘れのような症状がよく現れます。
特に短期記憶が影響を受け、新しい情報を覚えることが難しくなります。
例えば、最近の出来事や会話の内容を忘れてしまうことが増えるでしょう。また、長期記憶にも影響が及び、重要な出来事や約束を忘れることがあります。

編集部まとめ

長期間にわたる過剰なアルコール摂取によって引き起こされるアルコール認知症は、早期発見と適切な治療が大切です。これを自分自身や家族の中でだけで解決するのは非常に困難です。脳神経内科や精神神経科を早めに受診して相談するようにしましょう。

「アルコール性認知症」と関連する病気

「アルコール性認知症」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

精神科・心療内科の病気

長期間にわたる過剰なアルコール摂取によってアルコール依存があって認知症症状があるとアルコール性認知症が疑われますが、類似の症状が見られる病気には上記のような病気などが考えられます。

「アルコール性認知症」と関連する症状

「アルコール性認知症」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 数分前の会話内容や出来事を忘れてしまう
  • お金の管理ができない
  • 判断に時間がかかる
  • 言葉数が減る
  • 気分の変動が大きい

これらの症状に加えて、アルコールの消費量が多い場合はアルコール性認知症が疑われますので、早めの医療機関への受診をお勧めします。

この記事の監修医師